第2話 朝活配信。朝食を食べながらゆったり雑談
六時。スマホのアラームで目が覚める。長年染みついた習慣は怖い。この時刻になると自然に覚醒し、アラームを止める。
「もうこんな時間に起きる必要もないのにね」
よいしょと身体を起こす。
「いや、でも配信には好都合か」
配信。その言葉をつぶやくだけでダウナーモードだった身体が一気に覚醒する。
昨日の初配信は最高だった。皆と一緒にゲームして、『マレ熊 茶子』も可愛いと言ってもらえた。
「さぁ、今日はなにしよう?」
う~んと考え込んですぐさま閃いた。
「Vtuberといえば、朝活! それじゃさっそく、準備、準備~♪」
【朝活】みんなおはよ~。朝ごはんですよ【喰らえ】
「おはようございます! 皆朝ごはん食べた? まだの人は一緒に食べましょう!」
シベチャチャ:おはよ~
クッチャマ:昨日の新人か、おはよ~
「シベチャチャさん、クッチャマさん、おはようございます。お二人とも昨日の配信でコメントしてくれた方ですね。今後ともごひいきに!」
シベチャチャ:よろしく
クッチャマ:昨日の配信ゆるい感じでよかった
「今日は朝活に挑戦です! とりあえず作ってきましたぁ……はい、ジャン!」
ディスプレイに素人くさい写メが映る。
「今日のわたしの朝ごはんはチーズトーストーー! この写真のヤツわたしの手作りです!」
写真に写ってたのは、周囲がぼかされたチーズトースト。四つ切の厚い食パンに、これでもかとピザ用チーズがかけられている。
軽くついた焦げ目からじゅうじゅうと音が聞こえてきそうだ。チーズの上からは黒コショウがかけられている。
シベチャチャ:これは美味いやつ
クッチャマ:もう美味しい
コメント:チーズの量やばー
「じゃあいただきます!」
ザクゥ!
マイクから軽快な
シベチャチャ:うまそう
クッチャマ:飯テロですか?
「おいしーー♡ チーズは正義!」
クッチャマ:カロリーは正義!
「みんなは朝ごはん何食べた?」
シベチャチャ:俺朝ごはん食べない派
クッチャマ:オレもチーズトーストにしようかな
コメント:納豆ご飯~
コメント:適当に菓子パン
「朝食べない人って結構いるよねー。私起きた瞬間もう食べられる状態だから不思議。お腹はすかないの?」
シベチャチャ:一応すくけどめんどくさいが勝つ
コメント:なんか朝起きてからすぐ活動できるかどうかって体質によるらしいよ
「じゃあ私は朝ごはん体質なのか……実際お腹すいて目覚めることとかあるわ」
クッチャマ:チーズトースト作ってきた。ハチミツかけたったわw
「え、ハチミツ? チーズにハチミツ?」
クッチャマ:知らんのか、かけてみろ・・・飛ぶぞ
シベチャチャ:チーズにハチミツ美味いよな、最初は俺も疑ったけど
コメント:オレもすきだわ
「え、まってまって、かけてくる!」
ゴソゴソと音がして画面のケモミミ少女がガクッと固まる。離席したのだろう。少しして画面の少女が再び動き始めた。忙しない動きで、焦りが伝わってくるようだった。
「かけてきた! じゃあ……食べます……」
ハムッ。
さっきより遠慮がちにトーストにかぶりついた音。ジャクジャクジャク・・・。
静かな
「うまっ美味ーい! なにこれあまくてしょっぱくって、ムグムグ」
シベチャチャ:落ち着いて食べろ
コメント:食レポよろ
「甘さとしょっぱさがフュージョンして、口の中が宝石箱や~~~!」
クッチャマ:マレ熊 茶子 食レポ×
「いや、でも本当においしい! 教えてくれたクッチャマさん、ありがとう!
では、ごちそうさまでしたー」
シベチャチャ:ごちそうさまでした
クッチャマ:ごちそうさまでした
コメント:ごちそうさまでしたーなんか給食思い出すw
「えーと、今日は朝ごはん食べながらちょっと雑談しようと思って。みんな何か会話デッキある?」
シベチャチャ:そういうのは配信者が用意しとけ
クッチャマ:あ、でもオレ前回の配信で言ってた前世の話くわしくしりたい
コメント:え、この子前世とか公開してるの?
一般にVtuber相手に前世という言葉が使われるとき、それは「中の人」が以前どういう活動をしていたかを意味する。本人は自分の以前の活動を口に出すことはないが、ネットには「Vtuber名 前世」という検索結果が山ほど転がっている。
「あ~わたしの前世が魔女裁判にかけられた女ってやつ?」
シベチャチャ:本来の意味の前世って話ね
コメント:何その前世。占いにでも行ったの?
「いや、前世占いとかあるらしいけど、行ったことはないよ。なんかさーわたし、火がめっちゃ怖いんだよね。花火持てないの。ライターもギリ無理」
シベチャチャ:いや、火はみんな怖いだろ
クッチャマ:火怖いだけで魔女裁判ならオレら全員魔女裁判で死んでるわw
「クッチャマさんのいうとおり、ここにいる皆魔女裁判の犠牲者かもよ~相当数殺されたしね。あと、根拠はもう一つあって、学校で魔女裁判について習ったとき、すごい怖くて。その日、マレ熊茶子は思い出した……理不尽な理由で殺される恐怖を……」
シベチャチャ:とにかく、魔女裁判うんぬんはマレ熊の中では事実ってわけね
クッチャマ:主人公の妄想でしたオチなんて、サイテーー!!
「あ、なんか色々しゃべってたら言いたいこと思い出した。あのね、今後の配信予定なんだけど」
シベチャチャ:お、中身のありそうな話題
「わたしゲームが好きなんだけど、最近あんまできてなかったから、今は思い切りゲームしたいです! なのでゲーム配信が主になってくると思います。で、やりたくなったら合間にこんなふうに雑談配信しようかな~と」
シベチャチャ:いいね
クッチャマ:ok
コメント:どんなゲームするの?
コメント:FPSとかやる?
「あ~わたしFPSやったことなくて。基本ゲーム下手なんで、あんまそっち方面は挑戦しないと思う。でもやりたいゲームはたくさんあるよ!フリゲのホラーとか、最近流行ってるパズルゲーもいいな。昔やった恐竜ゲーム、いちからはじめるのもいいかも」
シベチャチャ:恐竜のゲーム俺もすきだわ
クッチャマ:フリゲって謎のクオリティのやつ多いよな
コメント:その流行りのパズルゲーやってるけど全然点数伸びん
その後はコメントを拾いながらゲーム談義して、2時間ほどで配信終了となった。
この配信は終了しました。
20回視聴・5分前に配信済み
「しゃべって口が疲れた~なんか甘いものでも飲もう……あ、はちみつ紅茶ある」
お茶を入れてホッと一息。はちみつで先ほどの配信で教えてもらったことを思い出す。
「チーズにハチミツか。知らなかった」
(雑談配信楽しかったな。ゲームの話で盛り上がるなんていつぶりだろう)
また、こんなふうに楽しくおしゃべりできる配信がしたい。
「次はどんな配信にしようかな」
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