第31話 不思議さん②《福井美緒視点》
クラスルームが終わり、放課後になった。
「それじゃあ、勝、また、明日ねー」
快活な挨拶をすると一目散に部活にいってしまう杏花。あんたは、勝にぃに問い詰めなくて、それでいいのか?と思いながら、杏花の後ろ姿を見ていた。
「今日も疲れたー」
勝にぃの間伸びする声を出している。
(クーっ。私の気も知らないで)
私の視線があっても気づかない勝にぃ。ほんと、根掘りはほり、聞きたい。すると勝にぃが後ろを振り返った。
「美緒なんで、難しい顔してるんだよ?」
「別に〜。一緒に帰ろう勝にぃ」
私はカバンの用意をして、席を立つ。
「ああ帰るか」
そう声をかけて、校舎の下駄箱まで来た。
すると、目の前には例のあの人がいたのだ。
「七瀬サン。こんにちは」
「うっ」
勝にぃは少し嫌そうな顔をしている。なんでだろう。ここなしか、避けてるようにも見える。
「なんだ?吉川」
先ほどの吉川さんが立っていた。吉川さんは私がみても、綺麗系の女の子だ。それにしても、スタイルが良すぎる。なんていうか、嫉妬してしまう。
「
妖艶な笑みを浮かべる吉川さん。
「親睦...ああ、同じ学級委員になったからか」
「そうです、あっでも、先約がありましたか?」
私の方を見る吉川さん。なんというか、いたたまれない。
「ああ、まあな」
勝にぃはたんたんと、下駄箱に靴を入れて、靴を履き替える。
「もしかして、そちらの福井美緒さんは彼女さんですか?」
キョトンとした顔で私に聞く。
「わっ私と勝にぃぃぃは、そっそんなんじゃないです」
両手で全力で振る私。思いがけないボディフローを食らったような感じだ。
「まあ、美緒は幼なじみみたいなもんだ」
「それじゃあ、ご一緒させてもらってもよろしいですか」
私に了承をとってくる吉川さん。
(なんか、こたわりづらいじゃん)
「勝にぃ?」
私は少しばかり、心細そうに勝にぃの袖を引っ張ってしまう。なんでだろう。条件反射だ...
「ああ、今日は美緒と帰ろうと思っていたから、またな」
「それじゃ、しょうがないですね。また、明日、七瀬サン、福井さん」
小さく手を振り、校舎の中に消えていく吉川さん。私は少し罪悪感を抱きながらも、ちょっとだけ、幸福感を得た。
「
「用があるんじゃない?それじゃあ行こう」
今度は勝にぃの手を持って、先導した。
----------------
「さっきはありがと...」
勝にぃの下から少しだけちょこっと見ながら言う。
「なんのことだ?」
「••••••なんでもありませーん」
勝にぃには、この想い、届かないんだろうな。
「勝はなんで学級委員になったの?」
「ああ宮瀬先生に頼まれてな」
頬をぽりぽりとかきながら、少し照れ臭く話す勝にぃ。
「ふーーん」
「なんだよ。似合わないとでも言うきか?」
勝にぃは少し不機嫌になりながら言う。
「そんなことありませんよー。勝にぃなんでもできちゃうから。少し厄介ごととかに巻き込まれちゃうんじゃないかと心配になっただけ」
「•••••••」
勝にぃの顔を見ると少しだけ暗い表情になったように見えた。
でも、ほんの一瞬だった。
「そんなことないさ」
さっきよりも元気よく、勝にぃが答える。
でも、勝にぃも私も知らない未来へと歩み出したのはこの時だったことを今の私は知るよしもなかった。
学校を休んでいた俺がなぜか、好かれまくっている件について o-k-k-o @yamadasatoru
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。学校を休んでいた俺がなぜか、好かれまくっている件についての最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます