第29話 学級委員② (七瀬勝視点)
「すいません。宮瀬先生?」
「おぉ、七瀬、どうした?」
現代文の授業が終わった後に、俺は宮瀬先生の元に行く。
「あのこの前のお話のことで...」
「ああ、学級委員のことか。今日のホームルームの時間に話そうと思っていたんだ。どうだ?受けてくれるか?」
宮瀬先生は先ほどまでの雰囲気と違い、なんか、生気を感じるような受け答えだ。
「俺でよければ、やらしてください」
「そうか。そうか。やってくれるか」
俺の肩をバシバシと叩きながら、宮瀬先生は笑っている。本当にどうしたのだろう。
「えぇまぁ」
相手の勢いにおされて、控えめになってしまう。
「まぁ、七瀬がやりたいと言ってもクラスで決めるものだから、必ずしも、七瀬が学級委員になれるか。わからんけどな。ははは」
「先生....!」
俺の勇気を返してくれと思う。
「冗談、冗談」
「これでクラスの懸念点が解消できるな」
意味深いことを言ってくる先生だ。
「懸念点?」
先生はまずったと思いながら、口をおさえた。
「そうだな。この際、教えておく。クラスに一席だけ空席があるだろう?」
「そうですね。いつもというか。入学式も、今日もいませんね」
先生は考え込むように、頭を抱える。なんだろう、結構、ナイーブな話に巻き込まれていないか?
「ああ、
「えっ、何かご病気とかやむおえない事情でこれないんだなと思ってました」
「はぁー」
思わず、ため息が出てしまう先生。そんなに厄介なやつなんだろうか。ちょっとめんどくさそうに思えてきた。
「それで七瀬に頼みたい。どうにかして、久米を学校に引っ張り出してきてほしい」
「えっ、それは学級委員の仕事なんですか?」
やっと、宮瀬先生の根端がわかったような気がした。俺を学級委員にしたいのは、久米という生徒を学校に来させたいみたいだ。
「えっと、それなら学級委員はやめ•••••」
「ほー。七瀬はそれでいいんだな。それで?」
「何が言いたいんです?先生」
宮瀬先生は少し俺に背中を見せながら、言ってくる。
「そういえば、クラスのライン。七瀬、お前、よく思われてないみたいだな?」
「うっ」
なんで宮瀬先生がそれを知っているんだろうか。しかもまだまだ、新学年が始まって2日目なのに。俺だって今日の朝に知ったことなのに。
「まぁ、しょうがないか。生徒間のやり取りには、口を出したくないからな」
俺は疑いの目を先生に向ける。
「先生、含みのある言い方ですね?」
宮瀬先生はその言葉に反応せず、窓の外の方を見ていた。
何なんだ。この人....
「それだと、俺の状況なんとかできるみたいじゃないですか?」
「どうにかできるかもな。私なら」
「へーずいぶんと自信があるんですね」
「まあな」
本当にそんなことできるのだろうかと思った。
「しょうがないですね。やりますよ」
「それじゃあ、よろしくな」
そう答えると、宮瀬先生は去っていってしまった。
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