第20話 水族館の私たち③-3 (七瀬麗香視点)

おにぃと私と美緒さん、里奈さんでイルカショーを見ることになる。最前列の席はイルカの水飛沫で濡れてしまうため、三列目の席座る。


美人姉妹おたんこなすは、最前列に座りたいと言っていた。たぶん、何も考えなしだと思うけど。

美人姉妹おたんこなすの服は透ける心配はないけど、水がかかった時にラッキースケベになりやすい。おにぃにはラッキースケベは刺激が強いと思う。


「楽しみだな。麗香?イルカさんだぞー」


「うん。イルカさんこんなに近くで見られれるなんて嬉しい」


私は隣に座るおにぃに最大限の笑顔で答えた。


「そうだ。飲み物でも買ってくるか?みんな、何がいい?」


おにぃが声をかけた。


「オレンジジュース」


子どもみたいな回答がベストだろう。


「ウーロン茶」


美緒さんが答える。


「アイスコーヒーですね。勝兄さん、1人だけじゃ大変だから私も行きますよ」


里奈さんは、気を遣ってくれたらしく、おにぃの手伝いみたいだ。私ももう少し大きければ、行くのだけど。行っても役に立ちそうにない。


「ありがとう助かるわ」


2人して売店に向かった。



イルカショーが始まる時間になってしまう。


「勝にぃ遅いね」


「うん、そうですね」


取り残された、美緒さんと私。イルカショーの会場も人が大勢来ていた。


「うーーん。これから探しに行くのもあれだかし。せっかく楽しみにしてた麗香ちゃんにも悪いから。よければ2人で見る?」


「えっ」


私としてはイルカショーはどうでもよくて。おにぃが全てだけど。純粋な美緒さんの優しさも無碍にできないのは事実であった。


「はい、そうします」


「勝にぃも、イルカショー見ていれば帰ってくると思うよ」


美緒さんは、私を元気づけようと、声をかけてくれる。思い返せば、小さい頃からこの人は優しかったと朧げながら覚えている。私が病院で肩を落としているといつも励ましてくれたのは美緒さんだったのも事実なのだ。



『それではイルカショー始まりまーす』


『こちらはバンドウイルカの武蔵でーす』


『皆さんに挨拶ー』


バンドウイルカの武蔵は、元気よく高くジャンプをして答える。


思ったよりも高く飛ぶものだから、水飛沫がこちらまで来てしまった。


「わー。ほんとすごいね。あんなにジャンプするなんて。私も初めて見たよ」


「はい、すごいです!」


先ほどまで無関心だった私もほんの少しだけ興奮していた。


『それでは武蔵の大技、空中二回転しまーす。できたら、大きく拍手をお願いしまーす』


飼育員のお姉さんが、大きく手を振ると、目の前の透明な水槽まで来て、助走をする。思いっきり、深く潜って、大きく飛び上がって、回転した。



「うわーーー。すごいよすごいよ。麗香ちゃん」


「あんなにジャンプできるんですね!!!」


美緒が私に思いっきり抱きついてきて、見て見てという。私も興奮しているのか、美緒さんの手を掴んでいた。


「でも、こっちも足元びしょびしょだよ、まさか三列まで来るとわね。あははは」


「最前列だったら、やばかったですね」


『次に紹介するのは、最年長のモカちゃんでーす。モカちゃんと武蔵は仲良しなので、2人でジャンプしてもらいまーす。皆さんも手拍子、お願いします-!』


私と美緒さんと会場の全員で手拍子をする。水面に出てきて、武蔵とモカは「キュルー」と声をかけてくれる。


『それでは1、2、3ハイ』


武蔵とモカは大技を決める。


「イルカショー麗香に言われなかったら見逃してたかも...ありがとね。麗香ちゃん!!」


急に美緒さんが私にいうものだから、私も恥ずかしくなる。水族館、誘ってくれたのは美緒さんたちの方なのに。本当に優しくていい人だと思った。


「私も美緒さんと来れて良かったです」


 結局、最後まで私と美緒さんでこのイルカショーを存分に楽しんでいた。









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る