第17話 水族館での私たち② (福井美緒視点)

「うっ、全然、眠れなかった」


私は壁掛け時計を見ると、まだ朝の6:30である。昨日というか。今日の2時まで起きていた。


実質睡眠時間は4時間半。勝にぃとの水族館、実質デートみたい。でも、こんな寝不足で水族館を回れるだろうか。


私は、下のリビングに降りる。するとお母さんが、朝ごはんの下ごしらえをしている。


「あら、おはよ」


「おはよー。今日の朝ごはん何ー?」


「シャケね」


「久しぶりのお魚だー」


私はお母さんとの会話をしつつ、冷蔵庫の牛乳を取り出して、コップに注ぐ。


「美緒、今日は勝くんとデートに行くんだって?」


「ブハッ、ゲホゲホゲホ」


私は口に含んだ牛乳を吐き出してしまった。


「汚いわねー。あんたわー」


「何で。知ってるのよ?」


私は布巾でテーブルを拭く。なぜか、同様してる私。


「あなた、勝くんの事、小さい頃から追いかけてたものね」


「お追いかけてなんてないし...」


「まぁあんたは恋愛でも奥手だからね。頑張んなさいよ。あんないい子誰かに取られちゃうわよ」


お母さんは私を諭すように話してくる。里奈め。覚えてなさいよー。


「はいはい、わかったよ。お母さん」


やはり、お母さんは痛いところを突くものだ。


「おはよー。あれ?おねぇちゃん。テーブル拭いてどうしたの?」


不思議そうに見てくる里奈の頭をチョップで叩く。


「イッター」


「あんたは本当に口が軽いんだから」


「ははは」


愚妹が、頭をさすりながら、リビングに座る。私の恋愛に協力してくれるかもと思ったけど。ただ単純に面白そうだからという感じで、首を突っ込んだのかもしれない。


私たちはお母さんが用意してくれた朝食をそれぞれの席に配る。


「おはよう」


「あっお父さん!今度のテニスの試合見にきてね!」


里奈はお父さん子だ。


「ああ、覚えているよ」


寡黙なお父さんこと、福井久志ふくいひさしは市役所の職員だ。いつも、どっしりとしていて、抜け目がない。


「そう言えば、美緒は今日、七瀬くんに会うらしいな」


「ごへごへごへ」


私は食べていたご飯を喉につかえてしまった。


「汚いわねー。美緒は」


お母さんは近くにあったティッシュを私にくれる。くっ愚妹め。お父さんにもバラしていたなんて。


「美緒。くれぐれも、七瀬くんと仲良くな」


意味深に声をかけるお父さん。お父さんはいつも、私たち姉妹のことについては無頓着ではないが、干渉してこない。私はこうに言われるのが、少し驚きと戸惑いを覚えてしまう。


「うん。わかった」


私は返事だけをしたのであった。



朝食をすませた私は部屋に戻り、昨日選んでおいた肩が見えるグリーンのキャミワンピースを合わせる。それに薄手の白のカーディガンを着ればいい。


愚妹の言うようなエチエチすぎるのは私にはまだ縁遠い。


「おねぇ、聞いてる?おねぇ?」


ドアの入り口に立っていた里奈が声をかけてくる。


「勝兄さん。麗香ちゃん連れて行きたいんだって」


「いいんじゃない?麗香ちゃん、可愛いし。私は大歓迎だよ」


私は、グリーンのキャミワンピを着て、白いカーディガンで合わせる。


「はぁー。そういうことじゃないんだけどさー。まあ私がいざとなれば、面倒見ればいいか」


里奈は大きなため息をつき、私のコーデを見る。


「おねぇちゃん、待ってて」


里奈は胸元が大きく開いたダークのシャツと短めのグレーのショートパンツを持ってきた。


「このくらい露出しないとダメだよ。おねぇちゃん」


「いやさすがにー。これは。色々と見えてるし...」


私は夏でもこんな格好はしないと言う自信があるくらいの露出度だった。


「ほら着替えて着替えて」


私はリカちゃん人形のように、有無も言わさずに、着替えさせられる。里奈は中学生にしてはもう私と同じくらいの背丈なので服のサイズは申し分ない。


「やはりちょっと、肌が見え過ぎじゃない?」


「それじゃあ、このニットのカーディガン着て」


里奈から渡された服はこれまた、薄手のカーディガンだった。


「水族館、それで行くように!わかった?おねぇちゃん?」


「うん」


里奈は部屋を出て行ってしまう。私はこれまで着たい服を着てきたけど。里奈の方が流行などに聡いから、このコーデが正解なんだけど。


わたしにとっては、すごい恥ずかしかった。








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