第12話 4人でのカラオケ?②(中瀬由依視点)

(なんかノリでついてきちゃったけど)


先ほどまで、七瀬先輩の隣を陣取っていた私(中瀬由依)は後ろから来た美緒に場所を取られて、そのままになった。



もう、美緒、私いなくてもいいのでない?と思いながらも駅前のカラオケボックスに向かう。


「ええい。暑苦しいわ。離れろ。2人とも」


杏花と美緒を引き離そうとする七瀬先輩。側からみたら両手に花なのに。七瀬先輩は気づかないのだろう。


「美緒が離れたら、私は離れる」


「いいえ、杏花が離れたら離れるわ」


お互い一歩も引かない攻防戦。やっと、カラオケボックスについたのであった。


「4人でお願い致します。2時間でいいか、お前ら?」


「「「うん」」」


なんだか、本当にびっくりするようなシンクロだったけど。いざみんなでカラオケに来たら、借りてきた猫状態になったんだろうと思った。


おおきめの個室に案内された。

カラオケボックスの中に全員が入り込むと、また問題が起こった。


「3人がけのソファーと個別の椅子、どこに座る?」


この場合、必然的に七瀬先輩の両隣を美緒と藤見が座るのだろうと思っていた。


「ここはじゃんけんで行きましょう。勝の隣は公平な勝負で決めたいの。ねっ、中瀬さん?」


「うっうん?」


今、私も、七瀬先輩をめぐる争いに参加するような感じだったけど...


「じゃあ最初はグー、じゃんけんぽい」


私と美緒がパーを出し、藤見さんだけグーだった。


「クー悔しい。でも約束だから、勝の隣は美緒と中瀬さんね」


美緒は小さく、グッジョブと私にやってきたが話の成り行きに従っただけで、特に何もしていない。


そして、私と七瀬先輩と美緒がソファーに座り、対面に不貞腐れた藤見さんが座った。


「えっと、タブレットで食べ物っと」


藤見さんは注文用タブレットで、ホットフードを見ている。


 一方、美緒は緊張してるのか足をもじもじしながら、七瀬先輩の顔をチラチラと見ていた。


えーい焦ったい。


「七瀬先輩、美緒が話あるんですって」


私が合いの手を入れてあげる。最初に謝った方が、彼女にとっても好都合だろう。


「勝、勝にぃ、朝はごめんなさい」


美緒はやっと、言えたように頭を下げた。


「なんだ。そんなこと。美緒と俺の仲だろ。気にすんなよ」


「学校では勝、それ以外では勝にぃと呼んでもいい?」


「いいぞ」


七瀬先輩は、美緒の頭を撫でる。


美緒は満更でもなさそうに至福のひとときを味わってるように見えた。


「ちょっと、勝?美緒だけずるい」


七瀬先輩の方に頭を指し出していると。


部屋に2人の店員がポテト、ピザ、グラタン、サラダ、アイスまでもが運び込まれてきた。


「おいおい、頼みすぎだ!!」


七瀬先輩は、藤見さんの頭にチョップをお見舞いした。


「痛ってぇー。だってお祝いなんだから、楽しまないと。それで何を歌いますか?先輩。先輩歌わないなら、私、歌いますね」


すぐに曲を端末で送信し、最近の流行りのVチューバーの曲を歌い出す。


私は藤見さんのアイドル級のルックスと歌唱力、曲に合わせた踊りをまざまざと見せられて驚いてしまった。


(えっこの子、何者?アイドルなの?)


あっという間に終わってしまった曲に拍手をおくった。


「私も負けられないわ」


美緒が立ち上がる、彼女は切ないラブソングにしたようだった。美緒は昔から、歌は絶品なのだ。


「おい、成瀬?」


私は美緒の歌に気を取られていると、七瀬先輩がタブレットを差し出してきた。


「鈴木雅◯さんの曲、歌うんだろう。選んでくれ」


どうやら、七瀬先輩は私と歌うことを本気にしてくれたらしい。


「えっと、あれは方便というか、なんというか」


「俺と歌いたくないのか」


私がうまく誤魔化そうとする中、真剣な七瀬先輩の顔が近づいてくる。


近い近い近いって.....


「違う違うそうじゃなくて....」


「ああ、その曲俺も好きだわ」


「『違う、そうじゃない」を送信と」


鈴木雅◯さんの『違う、そうじゃない』をリクエストしてしまった。あまりデュエット要素ないよ。名曲だけど......


「ああ、疲れたー。次は勝にぃか、由依、どっち?」


頭に?マークをつけた美緒が来る。


この際しょうがない。美緒には悪いが、一曲歌えば、七瀬先輩も納得してくれるだろう。


わたしと七瀬先輩はたち上がる。


「「えっ、本当に2人で歌うの」」


美緒と藤見さんはびっくりしたように声を揃えた。


「それじゃあ、いくぜ、成瀬。『違う、そうじゃない』」


私は七瀬の声に合わせる。思ったよりも、楽しく歌い合えてしまった。


「はー良かった。成瀬」


「ありがとう七瀬先輩?」


七瀬先輩は、不思議そうな顔をすると


「成瀬も俺のこと、勝でいいよ。俺も由依ちゃんと言うから」


「なんで私だけ、ちゃん呼び?由依でいいよ」


「じゃあ、由依よろしくな」


七瀬先輩は爽やかな笑顔を浮かべた。あの美緒が惚れるのも納得の人だと私は思った。


「ここ寒いな。俺、お手洗い行ってくるから。お前ら歌っててくれ」


七瀬先輩は途中退席をした。


歌の時から黙っていた2人は急に私の方を見てくる。

(やはり、2人の視線が冷たい)


「由依ちゃんって、結構やり手だね。侮れない」


なぜか、藤見さんからライバル認定されてしまう。


「ゆーーい?あなた、勝にぃは私のもんだからねぇ」


美緒にも釘を刺される。


「私は勝にそういう感情抱いてないよ」


慌てて否定するが、彼女たちの疑念は晴れることなかった。


(それにしても、七瀬先輩と歌を歌ったのは思った以上に楽しかったのは紛れもない事実だと思った)


















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