第11話 カラオケでの4人① (福井美緒視点)
「お帰りー勝ー!」
「ちょっと待った〜」
抱きつこうとする杏花を全力で阻止する私。
「何、美緒、邪魔なんだけど!」
「杏花、抱きつくなんて....ダメ」
「じゃあ、一緒に勝に抱きつけばいいんじゃない?」
杏花はナイスアイデアみたいに言ってるけど。呆れてものも言えない...
すると、勝にぃは、素っ頓狂な声をあげる。
「お前ら、より仲良くなってねぇーか?」
「えっ私たちは、いつも仲良しだよね〜」
杏花は私に抱きついてきた。
「うっ、くるしぃっ」
杏花の豊満なバストに押し潰される私。杏花の場合、身長よりも胸に栄養がいったのだろう。
「ほら、こんなに喜んでる」
「喜んでないわ」
杏花の胸を押し除けて、やっと空気が吸える。
「私と美緒は戦友と書いて『ともだち』というだよ」
「戦友?」
勝にぃは、訝しむ顔でこちらを見つめる。この鈍感だから、
「私たちはコイ....ゴニョゴニョ」
私はすんでのところで、口を押さえたので、勝にぃの耳には届いていないはず。
勝にぃは、不思議そうな顔をしながら
「まぁ、仲良しにはこしたことがないが...」
と答えた。
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「そんで、カラオケは俺と美緒と藤見だけだよな?」
勝にぃの問いかけに、そっぽを向く杏花。
「藤見じゃなくてー、杏花って呼んでくれないと誰だかわかりませーん」
私が下の名前で呼ばれていることで不服なんだろう。
「わかった。わかった。杏花」
「もう一回呼んで」
「ああ、杏花?」
「もう勝ー」
杏花は勝にぃの腕に自分の胸を押しつけてくる。離れんか、胸め。
「まっ勝?私は友達連れていきたいんだけど」
「ともだち?」
勝にぃが疑問の声をあげる。
私はどさくさに紛れて帰ろうとする由依をロックオンする。
「由依ちゃーん、カラオケ行こー」
私は不適な笑みを浮かべて、由依の行動を止めた。
由依はスマホを取り出し、ラインで「あんた1人で頑張んなさいよ」といっている。
私もスマホを取り出し、ラインで「由依ちゃん、助けてくれるっていったよね?」で返した。
それでも由依はラインで「めんどくさそうだから...」と返そうとしていたが、私はお構いなしに、
「由依ちゃんもいきたいって!」
私は満面の笑みで勝にぃにそう伝えた。
ラインの(「こらー」)の怒ったスタンプが来ていた。
由依ちゃんはこちらにきて声無き声で訴えてくる。
(諦めて、あなたの親友、恋愛初心者だから、あなたのフォローが必要なのよ)
そう、目配せで、あきらめてというと観念したように、由依は頭をガックリした。
「なんか行きたくなさそうだけど?」
勝にぃが言う。
「いいえ。行きたいわ。鈴木雅◯さんのラブソングの曲を歌いたいわ」
由依ちゃんは何故か熱い視線で勝にぃを見る。
ちょっと、勝にぃ、勘違いしちゃうでしょ...
「ああ、鈴木雅◯さんいいよな。一緒にデュエットできる曲歌おうぜ」
何故か、勝にぃは、乗ってきた。由依ちゃんは私の制服を引っ張って教室の端で耳打ちする。
「なんかいい人ね。七瀬先輩って...」
「ちょっと由依ちゃん!?」
由依ちゃんを静止しようとするが、勝にぃのところに戻った。
「「それじゃあレッツゴー」」
杏花と由依ちゃんは勝にぃの手を取って、教室を出て行った。
「おい、私も忘れんなー」
私はすぐに3人を追いかけた。
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