2.才能は二作目で真価が問われる
が、先に書いておこう。恐らく自分は作品を楽しむだろう。それは間違いない。しかし、一方で、特定の作品が与えてくる衝撃を出してくるかと言われると「それはないだろう」と見ている。自分の出す評価についてよく知っている人に向けた説明をするのであれば「SSSランク」は出ないだろう。という予想になる。
これにはきちんとした理由がある。王雀孫の作品。そのシナリオは割と「読者の死角を意図的に作り出し、そこから攻撃を仕掛ける」スタイルなのだ。別に攻撃的な文章というわけではない。読み手と書き手が戦っているようなイメージだ。
他の創作では、必死に読者の死角から攻撃を仕掛けようと試みる。しかし、いかに死角だろうと思う位置で動き回っても、自分からすれば見えてしまう。そうなってしまうと予定調和なことが起きる作品にしかなりえない。それらを読み合い以外のフェーズで楽しませる作品にしている場合もあるが、それはまあ、置いておこう。
王雀孫は、少なくとも「おれつば」を見た限りでは「死角を作り出す」というイメージだ。これならば相手の視野角は関係ない。意図的に死角となる位置を作成し、核心部分はその死角から出てくる。そんなイメージだ。もちろん、作風を見るには最低二作品は必要だという意見はあるだろう。しかし、こればっかりは仕方ない。そもそも彼が単独で執筆している作品が少なすぎるのだから。
したがって、今回の「それ散る」はある意味、ライターの真価が見える二作目だ。時系列的にはこちらが一作目なので、「おれつば」の方が精緻な可能性はあるが、その核となる力量はそう変わらない。上述の通り、自分の分析が正しければ王雀孫は「死角を作り出す」ところに妙があるはずで、この手法は「バレてしまうと弱い」のは間違いないはずなのだ。
とまあ色々書いてきたが、個人的にはかなり期待をしているし、自分のこういった推測や仮説をあざ笑うような手でこちらをあっと言わせてほしいのだ。繰り返すが、自分が今でも新作や新刊を楽しみにする数少ないライターであり、天才と言っても過言ではないはずの人間だ。きっとあっと驚かせ、散々高説を垂れた自分にきちんと恥をかかせてくれるものだと思っている。
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