痴漢冤罪

 Kさんが勤務する女子高は進学校で、規則がとても厳しく。


 その中の一つに生徒のスマホ持ち込み禁止。発見しだい没収というものがあったそうです。


 ただ今の若い女の子。それも女子高生にスマホ禁止。持込み禁止。といっても規則遵守はなかなか難しく。


 女生徒たちは隠してスマホを学校に持ち込み、それをKさんたち教師が取り締まる、いたちごっこが続いていたそうです。


 ある朝。出勤のため埼京線(痴漢が多い事で有名な沿線)に乗ったKさん。


 『今日も混んでるなぁ』と思っていると、少し離れた所にKさんの勤務する女子高の制服が見えたそうです。


 生徒指導主任であるKさんは、満員電車の中でも溢れる教師魂が出てしまい、その女生徒の事を注視していたそうです。


 その女生徒は、カバンからスマホを取り出すと普通に使い始め。


 それを見たKさんは『現行犯。スマホ没収』と思ったそうです。


 満員電車の中。少しずつ女生徒の立つ位置に移動し、やっとの事で女生徒の後ろに辿り着くと、小さな声で「スマホ使用禁止」と女生徒に囁いたそうです。


 振り返りKさんの顔を見て青ざめる女生徒。


 「帰りに返すから、電源を切ってスマホを渡しなさい」と囁くKさん。


 女生徒はKさんの言う事をきかず。スマホをカバンに入れると「見逃してください」と小さな声で言ってきたそうです。


 「規則は規則。帰りに必ず返すから一旦私にスマホを預けなさい」とKさんが女生徒のカバンに手を伸ばした次の瞬間。


 「やだっヤメテ」と悲痛な叫びをあげる女生徒。


 ざわつく車内。


 『あれ、これやばくないか』と思っていると。


 屈強なガタイのサラリーマンが、Kさんの腕を強く掴み「あんた次の駅で降りろよ」と言って来たそうです。


 早く弁解せねばと思ったKさんは「違います、私はこの子が通う高校の教師でっ」


 話の途中で腕を強く締め上げられその痛みで、言葉に詰まるKさん。


 「自分の学校の生徒に手を出すとか、本当のクズだなお前」と勝手な解釈のもと。正義を執行する屈強なガタイのサラリーマン。


 車内の人たちは、朝カラスが啄ばみ。撒き散らされたゴミ捨て場の生ゴミを見るような目でKさんの事を見つめ……。


 一斉にスマホでの撮影会がはじまり……。


 SNSで全世界に向けての拡散がはじまり……。


 世界の終わりを告げるラッパの音が、Kさんには確かに聞こえたそうです。


 これはヤバイと思ったKさんは、女生徒に「ねぇお願い。何とか言ってお願い」と懇願する。


 女生徒は、自分のせいで事態が大きくなってしまった事に怯え。泣きながら震えていたそうです。


 女生徒の涙を見て「お前、もうそれ以上しゃべるな」と更に正義を執行する。屈強なガタイのサラリーマン。


 次の駅で、女生徒。Kさん。屈強なガタイのサラリーマン。の三人で下車。


 誤解が解け。無事解放されるまでに、1時間以上かかったそうです。


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