閑話

僕が中学生のとき。塾の先生から聞いた怖い話

 中学3年の夏休み、高校受験に向けて、僕は毎日塾に通っていた。


 「じゃあテストの結果ば、返すぞ」少し前に受けた、小テストの結果を先生がみんなに配る。


 18時~20時までの授業、時計の針は19時30分を指していた。


 誰かが「先生、今日は暑かし、なんか怖い話ばしてよ」と言い出した。


 それを皮切りに、みんなが「聞きたか、聞きたか」と騒ぎ出した。


 先生は少し考えてから「サボって雑談したことば、お父さんやお母さんに言ったらいかんぞ」と笑いながら念押し。


「この話は、怖い人には死ぬほど怖い話だけん、止めるなら今ぞ~」と言った。


「全然、平気だけん、話してよ」「私も、平気」「僕も、怖くなかよ」とみんなが自分は大丈夫アピールをする。


 それを聞いた先生は「よし分かった、電気ば暗くするぞ」といい教室の電気を消し、豆球だけの明りにした。



 …………



 東京から熊本に引っ越してきた4人家族、お父さん、お母さん、僕、妹。


 東京で住んでいた狭い社宅と違い、熊本の家は一軒家でとても広かった。


 お父さんがみんなを呼んで、1階をお父さんとお母さん。

 2階を僕と妹に割り当ててくれた。


 妹と一緒じゃない、自分だけの部屋がとても嬉しかった。

 

 この家はトイレが1階にしかなかった。


 妹は夜トイレに行くのが怖いと言って、すぐにお父さんとお母さんの部屋に逃げ込んだ。


 僕はお兄ちゃんなので、我慢して2階で一人寝ることにした。


 寝苦しい夏の夜、僕は変な時間に目が覚めてしまった。


 目を瞑って寝ようとするが、トイレに行きたくて眠れない。


 意を決してトイレに行くことにする。


 ギシギシと軋む階段をおりて、廊下の突き当り。


 やっと着いた……トイレの扉を開けると小学生くらいの男の子が俯いて座っている。


 僕はその子に声をかける「誰ですか?」


 その子はゆっくりと顔を上げて、ニヤリと笑った。


 その子は、僕そっくりな顔をしていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る