執心
@himajintarou
第1話 噂
世の中には「執心」という言葉がある。インターネットで意味を調べると、まず一つ目の意味に「ある物事に心を引かれて、それにこだわること。」とある。二つ目に「異性などに深く思いをかけることをひやかしの意をこめていう語。」とある。皆さんはこの言葉から何を連想するだろうか。私はこの言葉を聞くと今からお話しするエピソードが常に頭に思い浮かぶ。
私が中学二年生へと進級し一ヶ月ほどが経過した頃、私は友人である栗村と柏田とともにある話題で盛り上がっていた。ある二人の男女の恋愛の行方と、謎のSNSのグループについてであった。正直他人の恋愛などどうでもよかったのだが、話のネタになるような面白いことがなかったこともあり話題にしていた。最初は「執心」の意味にもある通り少し冷やかしの意を込めたり、小馬鹿にしたりして話ていた。ただ半年が過ぎ一年以上が経過したころ、この話が大事になり始めいつの間にかその話が話題の中心になっていた。
中学二年生の生活にもなじみ始めたころ私は栗村から変な噂を聞いた。同じのクラスの波原と桑岸が相思相愛ではないかという噂であった。私は波原とも桑岸とも関りがあったため、噂を聞く前から波原が桑岸のことを好いているのではないかとうすうす感じていた。ただ、桑岸も波原のことを好いているというのは初耳であった。しかしその時は特にその噂を気に留めなかった。その日の放課後、吹奏楽部の活動に参加するため音楽室へ行くと同じパートの桑岸が一足先に準備を行っていた。自分も準備をし始めると突然桑岸から
「熊野って波原君と仲いいよね?」
と聞かれた。正直私の親と波原の親が親しいため一緒に遊びに行ったりしているだけであって、波原を特段に親しいとは思っていなかった。そのため、
「いいえ。」
と返してもよかったのだが、なぜそのようなことを桑岸が問うのか気になったため、
「それなりには。」
と返答した。すると不敵な笑みを浮かべ
「彼ってどういう人なの?」
とゆっくりと聞いてきた。何故そのようなことを聞くのかと問うと、校外学習で同じ班になったから知っておきたいというのだ。しかし、校外学習はまだかなり先の話だったため桑岸が嘘をついていることが分かった。だが、ここで不自然に答えず人間関係が崩れても仕方がないので
「変わったものを好むやつだよ。」
と返した。桑岸は一層笑みを浮かべて
「ありがとう」
と言うとどこかへ行ってしまった。私は少し恐怖を覚え、そのあとの部活動に参加せずに帰宅することにした。帰宅途中ふと昼に栗村が言っていた噂が頭をよぎった。部活での桑岸とのことから私はその話が噂ではなく事実だと確信した。
翌日、栗村に昨日の部活のことを話すとすぐに興味を持ち、昼休みに栗村の友人の柏田を誘いその話で盛り上がった。その日の放課後部活動でまた桑岸から質問を受けた。昨日より一層不敵な笑みを浮かべながら波原と親しい人について聞いてきた。
仕方がないので波原にとって小学校のころからの友人である小山田 修二、陣内 恭太、森梨 光、浅田 伊織、倉浜 寛太、計五人の名前を挙げた。すると満足したように笑い、またどこかへ行ってしまった。浅田 伊織の名前が挙がった時に少し笑った気がしたが、それ以上に何のために聞き出したのかが気になったため、浅田 伊織のことは気に留めなかった。
翌日の部活では桑岸からの質問はなかったが気がかりなことを言われた。
「昨日君が教えてくれた波原君と仲がいい人たちと、SNSで『波原グループ』を作って今度一緒に遊んだりしようと思うのだけれど参加しない?」
私への謎の誘いであった。私は即答で断りそのまま音楽室を後にした。帰り道、私は「波原グループ」についてで頭がいっぱいになった。なぜなら不可解な点が大きく二つあったからである。一つ目は波原がSNSをやっていないのにもかかわらず何故か「波原グループ」というものができたからである。二つ目はもし、桑岸が波原のことを好いているとするならば、なぜわざわざ好いていることがバレそうな手段で波原の性格や波原と仲がいい人を聞き出したのかである。この日から少し経った後に知ったことだが桑岸は私以外にも数名から波原のことについて聞き出そうとしていたらしい。
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