魔術特性と属性

 そして、時刻は現在五時半。

 夕飯も外で済ませようというアーサーの提案で、外食が決定した俺達は今、寮近くのレストランにいた。

 メニューはフレンチから中華、さらには日本食まで幅広い。聞けば行きつけの店だそうで。しかし、一つ物申したいのは、これは断じて寿司ではないというものが寿司として売られているところだろうか。

 だがまあ、ほかの物は美味しい。館で食べた料理まではいかないが、いかにも大衆向けの味ということで舌によくなじむ。

 そして、そんな夕食の席で話題に上がったのはこのこと。

「宮代って、魔術特性、なんで空欄なの?」

 最初にそういったのはオリヴィアだった。

「なんでって。俺も分からないよ。てか魔術特性って何?」

「だってさ、先生」

 そう言ってオリヴィアは隣に座るアーサーに話を振る。

「魔術特性か。面倒な話を除くと、その人物が使いやすい原理のことだよ。魔術核マジックコアを持っていれば、学生証のその欄が『属性』になっているはずだ」

「うん。私もそれは知ってる。それで、どうして宮代の特性が空欄なの?」

「そうか。オリヴィアは覚えていないかもしれないが、原理は基本、申告制だ。だから宮代君の学生証には原理が書かれていない。でもまあ、その欄はその学生証の中でもあまり重要じゃない。大事なのは、君がいったいどこに所属している誰かということ。それさえ書かれていれば、他はあまり重要視されない」

 なるほど、とアーサーに返事をして、俺は新しくオリヴィアに話を振る。

「オリヴィアの魔術特性はなんなの?」

「え、私? 私は『反射』よ。鏡とか、水面とか、そういうところに映るやつ」

「先生は?」

 そう言ってアーサーを見ると、嬉しそうな顔をしている。

「宮代君も先生と呼んでくれるのか」

 食べる手が止まっている。

 先生と呼ばれることがそんなにも嬉しいのか。

「いやぁ、すまない。私の魔術特性だね。私のは属性だけど、『振動』だ」

「反射と振動……」

 それがいったい魔術という未知の体系の中でどのような力を有するのか、と思案を巡らせる。そんな俺の様子を、自分の原理について悩んでいると捉えたのか、アーサーは穏やかな笑みを浮かべた。

「まあ宮代君も、授業を受けていく内に分かるよ。焦らなくても大丈夫さ」

 そしてこの話題はここで切れる。

 その後、くだらない今までの失敗談を話したりしながら俺達の夕食は終わっていったのだった。





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