魔女の森
中心街は都会の街並み
「キミってサ。魂とか信じるカナ?」
「」
深い深い森の中、いくつかの影が伸びていた。
息も絶え絶え、目の焦点も合っていないような男に問いかけるは、白髪で肌も真っ白の小柄な少女。
「触れる
「」
返事はない。少女も別に回答を求めているわけでもなく、ただただその時に思ったことを口に出しているだけのようだ。
「でも、その理論で実際に使えてルシ、なんとなくあるんだろうナァ。まぁ、何が言いたいかというとサ。死んだらカラダは地に還リ魔力になって、タマシイは天に溶けルって通説も間違ってないんだろうナァ」
「」
少女は手を組み祈りを捧げたのち、反応の無い男に向かって術符を掲げた。
「だから安心しテ、天に溶けテ地に還りなヨ。―【闇ヨ】【包ミ込メ】【久遠マデ】」
倒れている男を陰が飲み込んでいく。
しばらくして、かろうじてしがみついていた生は跡形も無くなってしまった。
2枚の茶色タグを残して…。
「いやぁ、いくら
「嬉々として戦闘を楽しむ奴の言うことか?なんだ?突っ込み待ちか?」
「ハハッ。早く次をくれヨ」
おどけながら少女は残された茶色タグを拾い上げる。背後にいる長身長髪の男に次の仕事を催促しながら、タグ1枚を男に渡す少女。勤勉なのか男性の評価するように戦闘狂なのかは誰も知らない。
男は闇に溶け込み存在感を薄くしていたが、次の仕事内容が書かれているであろう書類を手渡しに少女へ近づいた。
「次は、『魔女』を我らにご招待だ」
「いいネ!人攫いダ!」
「いや、言い方」
身長差とテンションに高低差のある凸凹コンビである彼らは拾ったタグを身に着けた。
「サァ!今日かラ
「証明書、ちゃんと加工しておけよ?」
ニカッと笑った口からギザ歯を覗かせる少女。
男がコートを翻した一瞬で、2本の影は闇夜に消えていった。
―――
――
―
「ふぅ…腹減ったぁ…」
時間帯はお昼ごろ、便利屋組合のロビーの一角。
午前中の訓練を終えたユート達が一息ついている。
「……みんな、この後はリティアが町を案内する」
「お?ありがと。昨日も言った通りうちらはこっちに来たばっかりだから助かるよ」
ふんすっ!といった擬音が聞こえてきそうに胸を張るリティア。素直にお礼を伝えているリィラ。
採用試験のコンビネーションでは息ぴったりだった2人。そんな2人がまとっている雰囲気は気心知れた仲にも見れる。
「ぐふっ。昨日はお食事デェトでぇ、今日はお買い物デェトですねぇ、ぐふふっ」
「ひぃ」
それに比べて、人々に癒しと安らぎを与える
どうしてこうなった。強烈なマルチアの一面にノックアウトしそうになるが、ユートはなんとか意識を保ち話を続ける。
「それじゃ午後からはみんなで、町に出てご飯食べて道具屋をいろいろ巡ろうか」
「はい、私もお供しますね」
話しかけると戻るんだよなぁ。と頭を押さえるユートであった。
なんやかんや一行は無事町へ繰り出していた。
東西南北それぞれの地区が一国並みと言うのは伊達ではなかった。西部の中心部は行き交う人も波のようであったし、生活用品店から武器屋までさまざまな店舗が無数と錯覚するほど並んでいた。
さらに、道が整備され路面電車のようなものが走っているし、建物も思っていたより高いし、さすがに高層ビルは無かったがコンクリートジャングルを知っているユートですら、あの都会の風味を感じていた。行き交う人々に圧倒されそうだ。
「ほえぇ…。思ってたより人が多いな」
「中心部は北部も同じような感じだよ。あとは、ここらより道具屋とか武器屋が多いイメージかな」
「へぇ、北部もにぎわってんだね。道具屋が多いってドワーフとかいるの?」
出身を自慢げに語るリィラ。北部は鉱山を抱えており鉱石加工やものづくりといった産業が盛んである。また、山脈や森に砦を築き、豊富な自然の守りと質のいい武具がそろっている。それが周辺国にも周知であり、リテリアよりも北にある国がリテリア攻めを立案した際は、北部を迂回して進軍することが前提となるだろう。まぁ、西部と東部にも白色タグがいるのだが…。
「どわーふ?はわからないけど
「ほほぅ。ぜひとも行って専用武器とか作ってもらいたいな」
「こ、今度一緒に行くかい?ひいきにしているところがあるんだ」
「お?いいね、行こうよ!」
さらっとお出かけの約束が交わされた。
後ろで会話を聞いていた聖職者がニチャアとし始めた。その雰囲気を感じ取ったシィタは、マルチアから目を逸らして極力視界に入れない努力を始めていた。
ふと先頭を歩いていたリィラが足を止める。食事処についたようだ。
「……みんな、ここがリティアおすすめ」
「へぇ、並んでいる。人気店だね」
「……、それほどでも」
自分のことのように照れるリティア。そうとう、この店が気に入っているようだ。そのまま列に並ぶが、漂ってくる匂いもいいものでお腹がまだかまだかと鳴り始める。
食欲を最大限に増幅し、いざ入ってみると質素・簡素な内装であった。あまり団体客を想定していないのかカウンター席がメインでボックス席もあまり広くない。5人で座ると少し窮屈な気もする。
森に住む森人の案内だから野菜や木の実をメインとした健康食のイメージをみなが持っていたが、店内に漂う油とネギのような香りが異様な雰囲気をかもしている。並んでいる時にもうすうすとは感じていた。
「……みんな、ここはすごい店。肉の乗った麺料理の店。普通に頼んでも盛りがいい。注文の時に野菜増しするといっぱい野菜が食べられる。それがたったの100リテラ。森人にとって奇跡の店」
おすすめは全増しだよ?と女神と見間違うほどのかわいい笑顔でそう締めたリティア。フィルター越しでなくとも彼女の周りにキラキラが見えそうであった。
意外と大食漢なんだ。こんな笑顔できるんだ。森人も脂っこいの食べるんだ。ランチってだいたい50リテラくらいじゃないのか。いろいろな突っ込みが頭の中で踊り狂っていたが、ユートの口やっとこ出てきた言葉は…。
「…二郎系かよ」
どうやら、森人の少女はがっつり系がおすすめらしい。
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