階級を知る
ロビーで自己紹介をしていたユートたちのもとへ、事務処理などを終えたカルディクとシルがやってきて試験お疲れ様とねぎらいの言葉をかけてくれた。
『魔法』をいくつも放ったこともあるが、体力測定や模擬戦闘、シルとの面談など体力、精神、魔力とさまざまな側面でテストを行ったため、くたくたであろう。
「皆様の登録作業が終わりましたので、晴れて便利屋組合の一員でございます。これからよろしくお願いします。」
「さて、これから戦闘許可証を渡していく。無くさないように。」
リティア、リィラには2枚。
ユート、シィタには1枚。
それぞれに黒色のタグが手渡された。
「ひとまずは駆け出しの黒色だ。依頼を受ける際は、基本的には赤色以上の人と組んでから受付に行くように」
戦闘許可証は戦闘職の証明である。
また、タグのようになっており、階級により色分けされている。
便利屋組合に限らず、戦闘を伴う騎士や私兵といった戦闘職には、個人の強さや信頼度を表す指標とされている。タグの色は次のような共通認識がなされている。
黒:駆け出し
赤:初級
茶:中級
緑:上級
青:英雄
白:伝説
依頼を熟し実力と信頼度が十分とされた時に、持っているタグと同じ色のタグが授与される。タグを持っていれば持っているほど判断・評価の基準が高くなり、同じ色が4枚集まればひとつ上の色と引き換えできる仕組みとなっている。
赤1枚には黒4枚分の価値があり、茶1枚には赤4枚分の価値があるというわけだ。
そして、人類の最高到達点は青色といわれている。
戦場を一騎当千で駆ける。魔力を帯びた獣の群れから人々を守る。
そういった武勲を重ねて青色のタグが授与される。
青色階級は勲章であり、その存在は自他国関わらずに認められ一般国民にも伝播している。
では、白色はどのような存在か。
青色が1つの軍に匹敵する一騎当千なのであれば、白色は1つの国を滅ぼすほどの一騎当万である。
また、超常現象を操る存在を撃退しうる者としての責任も生まれる。
つまり、竜殺し、悪魔祓い、神堕とし…といった称号を求められるため、「青色を集める」=「白色になれる」ではないのだ。
そもそも青色を得るも大変なのだが…。
「ってことは『憧れの白色』って、この町に何かあるの?」
「ああ、その伝説は実在しているんだ!生きている伝説が
「うぅ、顔近いっす」
「…あっ、ごめ、興奮しすぎた…」
憧れに興奮したあまりリィラが身を乗り出して鼻を突き合わせるほど接近してしまった。お互いに冷静になり、今度は反発するかのように距離がとられる。
勝気な勇ましいリィラ、普段は稽古やら近所付き合いやらで幅広い世代と分け隔てなく接しており社交性の高さはある。が、同世代の異性との交友は弟くらいとしかないと経験が浅く、初恋やら何やらの青春エネルギーは『憧れ』に注いでいる。(肉親を交友といっていいがわからないが…)
また、ユートもボーイッシュな彼女の接近に驚いた以上に、目ぱっちりしてんなぁとか、まつげなっがとか、お肌きれいだけどケアしてんのかぁとか少女の乙女を感じ取り照れてしまった。
ユートもまた、彼の記憶の限りでは同世代の異性との交友は……。
「……マルチア、なんかユートから甘酸っぱいニオイするぞ。」
「でゅふっ。リティアちゃん。これが青春の香りというやつですよ。」
初々しいやりとりを大好物と言わんばかりに、によによと眺めているマルチア。
そういえば、とユートが受け取ったタグを見つめる。
「ユートさんは『魔法』の才能はあるようですが黒1枚なんですね。」
「あはは…、武術はからっきしだったしね。」
内心、転生チートでいきなり高ランク!を思い描いていたユートは少なからずダメージを負っていた。
彼の脳内には主人公が特別な力を持っていたりかわいい女の子たちを侍らせていたり、夢とロマンといろいろな欲求を詰めてある異世界ファンタジーの作品が多く存在する。
そういった記憶があるせいか、確かにこの世界での『魔法』の適性は目を見張るものではあるがそれだけで満足できていない様子であった。
そんなユートの様子を向上心があるように見て取れたカルディク。
教えがいがありそうだと感心しながら、ガイダンスの意も込めて方針をみなに話す。
「北部やさらに遠方から来た君たちがこの土地に慣れるまでの間は、まとまって動いてもらおうと思う。形式としてはマルチアさんは外部協力としてこの4人に加わる、でよかったかな」
「えぇ。みなさま、こちらこそよろしくお願いいたします。」
「便利屋にいる間は指導できるが、細かな町中の案内やそのほかの補足はリティアに頼みたい」
「……リティア、承知した」
「さて、さっそく明日にはなるが…。午前中は訓練、午後は依頼を受けたり準備で町に買い出しにいったりと、しばらくはそのように過ごしてもらう。では、今日はこれで解散だ」
「みなさま、お気をつけてお帰りください。」
そういって、一仕事を終えたカルディクとシルはユートたちの元から離れていく。
日が落ちて夕飯時、明日の予定も聞いたし後は解散するだけ。ただ、このまま終わるのはなんか名残惜しいと5人の雰囲気が語ってた。
「ユ、ユート。この後、一緒に夕飯でもどうだい?」
「そ、そうだね。お腹も空いてきたし、2人もいいよね」
「ぐふぅ。…んんっ、えぇ。大丈夫ですよ」
「ひぃ…」
「……マルチア、なんか怖い」
初々しいやり取りがまた見れて恍惚していたが、話を振られて真面目な表情にすぐもどるマルチア。
ただ、恍惚な表情を見ていたシィタは怯え、リティアドン引きしていた。
どうやら、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます