第8話 ホテルの夜

 ディズニーシーのお酒が飲めるレストランで、食事をしてお酒を飲んで、ほろ酔いな感じで、ホテルにチェックインした。

ホテルのロビーにも、クリスマスツリーが飾られれていて、とてもキレイだった。


オフィシャルホテル、そこら辺のホテルよりも高い価格の割に、部屋は狭かった。

シングルベッドが2つのツインルーム。


「シャワー先にどうぞ」

と、石中君に言われた。


「うん、ありがとう」


私は、髪も長いし、普段のお風呂は長風呂だ。

だけど、髪を洗って乾かすのも時間がかかるから、とりあえず、汗を流す程度にシャワーを浴びるだけにした。


ガウンを着てシャワー室から出た。


じゃ、入ってくるねと、石中君がシャワー室へ行った。


さて……


一応コンドームを、すぐに出せる状態にしておこう。

私がリードしてのセックスって、初めてじゃない?

緊張する。

上手くできるかな~?


石中君もカラスの行水くらいの時間で、シャワーを浴びて出てきた。

腰にバスタオルを巻いているだけの状態。


そのまま、ベッドに腰かけている私のところへ来て、横に座った。


「美優、抱いてもいい?」

「あ、うん。

石中君、ゴムって持ってる?」

「うん、大丈夫。 ちゃんとつけるよ」

「私が初カノだってことは…… 初めてだったりする?」

「えっ?経験が?」

「うん」

「あ、彼女はいなかったけど、経験はあるよ」

「何回?」

「えっ?何回??」



ちょっとした沈黙が流れた。


私、何を聞いてんだ?

彼女はいなかったけど、飲みに行ってのワンナイトラブとか、学生時代に風俗店で一発とか、そんなんだって、今どきあるよね。


「ごめん!変なこと聞いて!気にしないで!!」

私は慌ててそう言った。


「あ、いや、就職してさ、うちの会社、入社1年目は全員 東京で研修なの。

1年間、東京の寮生活でね。

東京で暮らしてた1年間は、セフレがいたよ。

2人。

だから、何回か?ってゆうのは、わからないけど、性病とか気になるの?」


セフレ?


石中君の口から、そんな言葉が出ると思ってなかった……

しかも、それがなにか??問題でも??と、言うような口ぶりで。

話がのみ込めなかった。


セフレの2人は、2歳年上のシングルマザーと、5個上のセックスレスの既婚者だそうだ。

だから、恋愛関係ではなくて、ただ単にカラダの関係のセフレだった、と。

1年間の研修期間が終わり、後腐れなくお別れしてきたのだと。


そこに嘘はないのだろう。


じゃ、いいかな?

みたいなことを言われて、ぼんやりと頷いた。


私のガウンを脱がせると、私の髪を撫でながら、背中に手を回して、手慣れたように片手でブラジャーのホックをはずした。


あ、ほんとじゃん!

本当なんだ!!

慣れてる。

この人は、何回も経験してる。


“”真面目で純粋な人“”


私が思っていた印象が崩れていった。


そもそも、私は、石中君を責める資格もない。


私の方こそ、池田さんに捨てられて、誰でもいいから彼氏をつくろうなんて、不純な気持ちで石中君と会ったのだから。


なのに、

なんだか、

裏切られたような気がした。


ドキドキや、トキメキがなくても、真面目で誠実な人との平凡で平穏な結婚生活



私は、やっぱり男の人を見る目がない。

石中君が、悪いわけでもない。

私を騙していたわけでもない。


だけど、

彼に抱かれながら、思った。


この人も、違うな…………と。




             ➖➖おわり➖➖

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彼の初カノ 彼方希弓 @kiyumikanata

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