第27話

今日は、二美子ニミコに本当のことを告白する日だ。裕太ユウタと話して決めたのだが……。やはり緊張するな…。いつかは話してちゃんとしないととは思っていたが、いざとなると二美子の反応が気になる。何にしろ、今の状態で話すことにショックはないのだろうか?梨緖リオ先生は大丈夫と言ってくれたが、まだ不安だ。

記憶が呼び戻されるということは…あるんじゃなかろうか?それがいいことなのかどうか、判断が鈍る。知ることは大事だと思う。だけど、忘れるにはそれなりの理由があった。ミコにとって忘れたいほど辛かったからなのだろうから……。

朝、行ってきますと言える距離にいることが幸せで、これを失いたくない自分もいる。自分可愛さも大いにあるのだ。

帰り支度をして、部屋を出る。すれ違う同僚に軽く挨拶をして署を出ようとしたとき、背後から声がかかる。

「先輩!」

振り返り、ちょっと笑ってしまう。

光麗ミツリ……最近、距離が近い……」

「そうですか?こんなもんしょ」

ミコの件以来、光麗が声かけてくる回数が格段に増えた。

「お前の先輩は裕太だろ」

「裕太さんの親友は、僕の先輩です」

「お前ねえ……」

「裕太さんのとこに一緒に住んでるんですか?」


おっと……


「誰情報?」

「後輩です」

「うーん……尚惟ショウイか」

「何でわかるんすか……怖いわ」

「1/3だろが」

「裕太さんに頼まれたんすか?」

食いぎみに来る光麗に、立ち止まる。

「ほんとはなにが聞きたいんだ?」

「……ライバルなんですか?」


はあ……?


「裕太先輩スルーで二美ちゃんに近づくとか、めっちゃまずいです。どうして裕太さんが、あの先輩がオッケーしたのか謎です!」


はあ……裕太ー……


お前、後輩にどー思われてるんだよ。

「尚惟が筆頭で、ここを気を付ければと思ってたんですけど、タケル先輩が参戦してくると…ちょっと…」

「ちょっと…?」

「悠長にかまえてられないって言うか…」

モゴモゴといい淀む光麗。裕太が釘指す気持ちもわかるわ……。

「はあ、俺と裕太は友人だ。友人の妹が困ってたら力貸すだろ」

「引っ越してまで?」

「力の貸し方は人それぞれ。俺はそういうこともするってだけだ」

「それって裕太さんが頼んできたんですか?」

「光麗……おまえ」

「僕、結構、本気で心配してるんですけど」

歩きながら話しているのだけれど…署からは随分遠ざかっていた。

こんなとこまでついてきやがって……。そんな真面目な顔してこっち見るなって。

「何を隠してるんですか?それは二美ちゃんのために隠してるんですか?」

「……光麗」

痛いとこつくな…。

「大丈夫、おまえが心配するようなことはないよ」

手をヒラヒラさせて、横断歩道を渡る。納得したのかどうかはわからないが、もう光麗はついては来なかった。

光麗が心配してるのは、俺が恋のライバルになるかどうかってことだろう。その心配はない。けれど…当然悪い虫は近付けるつもりは毛頭ない。


…………これじゃ裕太と変わらないか。

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