第25話

今日は快気祝いをするから、早く帰って来ると朝早くに出た2人。大事な話もあるからと……。

洗濯物を干しながら、先に干されているタケルさんの洗濯物を見て、ため息が出る。

全然、一緒に洗うのに。嫌なのかな?こだわりがある?朝、何時に起きてるんだろう?尊さん…。

尊さんが本当にここへ越してきて1週間?10日くらいかな……?

まあ、ほとんど仕事でいないので、3人が揃うこともないんだけど、必ずどちらかが家にいてくれて、ひとりで過ごす夜が、なくなっていた。

私は、安心して過ごしているのだけど、声は……出ない。

「…………っ…」

出そうとすれば、出そうな気もするのだけど……。2人が仕事に行くと、いつも声を出す練習をする。2日目ぐらいから、声ってどうやって出してたのだろう、と分からなくなってしまった。

こんなままじゃ、頑張ってくれてる裕太兄にも尊さんにも会わせる顔がない。

洗濯物が終わり、掃除機をかける。朝のこのルーティーンは好きだ。何も考えなくて済む。ただ洗濯物を干して、掃除をする。そうしてると少し気がはれる。今の自分に向き合わなくてよくて、少しほっとする。


ピンポーン


珍しくインターホンがなる。

玄関まで行き、除き穴を見ると宅配便の人がいた。何か届くときは必ず裕太兄から話があるのだけど……聞き逃したかな……?チェーンをつけたまま戸を開ける。

「あの~ここって○○さんのお宅で間違いないですか?」


え、違う……それは二つ向こうの家だ。


と、声が出れば言えるけど……

とにかく、首を横にふって違うことをアピール。

「え、違うんですか……住所近いんだけどな……。」

どうしよう……伝えようが……

一度戸を閉めて玄関に置いてあったメモ帳を手に戸を開ける。

帰ろうとしていた配達員がもう一度振り返った。

私はメモに“右隣、二つ向こう”と書き、見せた。

「え……ああ、そうなんですね。最近担当になったばっかで、分からなくて。ありがとうございます」

いえいえ、こちらこそうまく伝えられなくて。と言えないので、首を横にふってお辞儀をする。

玄関の戸を開けて入ろうとする。

「あの……!」

声をかけられてもう一度振り返る。

「わざわざ出てきてもらって、ありがとう」

ペコリと今度は相手が頭を下げた。


いえいえ。


私もにっこり笑って会釈した。

スムーズにはいかないけど、出きることだってある。そう、尊さんも教えてくれたじゃない。ああ~、私ってすぐに落ち込む……、これじゃだめだ。

玄関に戻ると奮起する。

今日は大好きなグラタンを私が作る!マカロニとチーズがとろとろのグラタン。

冷蔵庫を見てみると、牛乳が少ないな…うーん、マカロニもないか。チーズはあるわけないっと。

よし!買い物に行きます!

勝手にいくと怒る人たちがたくさんいるので、Helpをあげて…尚惟ショウイ輝礼アキラ壽生ジュキのグループチャットに呼び掛けてみる。


二美子【忙しいところごめん、誰か買い物に一緒に行ってくれませんか?】


30分しても返事がなかったら、みんな忙しいってことだから、その時はひとりで行こうと決める。待っている間、トイレを掃除しようと移動しようとしたとき、ピコンとスマホがなる。


ウソ…


見ると輝礼だった。


輝礼【1限目終わったら行けるから】


早い返答にちょっと戸惑う。


二美子【分かった。大学まで行くね】


ピコン


輝礼【いや。家にいて。俺がいく】

返信を見つめながら、固まる。

なんだか…甘やかされております…。


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