第22話
寝てるとこにいるって……ちょっと僕でも緊張する。許可もらってても後ろめたく思ってしまう。まあ、許可は病院からで恐ろしいシスコンの先輩ではないんですけど……。病室で、静かな寝息をたててるのは二美ちゃんである。
様子見の入院から3日経った。今日は退院できるってことで、迎えに来たのだが……
「待ちくたびれたのか……」
寝てるのはソファの方で、もう退院の準備は出来ていた。裕太先輩は話を聞きに先生のところへ、僕は先に病室へ。
裕太さんの有休は明日で終わり。僕は午後から休みだ。
結局、詳しく聞いたわけではないが、裕太先輩と二美ちゃんが向き合っている過去は、簡単に踏み込んではいけないんだな~ってことはよーーーーく分かった。
裕太先輩のお父さんだっていうあの人は、それから見かけることはなく、二美ちゃんにあの時のことを話した感じもない。
これはさすがに部屋を出た方がいいよな……。狙ってる子が無防備って…。
僕だって、理性はあるよ、病院だし…。
いやいや……いくらなんでも……
と言いつつ、ベットの方へ行き、腰を掛ける。先輩に見透かされてる気がする……。
ぼくが手を出さないって分かってるんだろうなあの人。
なんか癪だ……。
ん?
視線の端になにかが動く。
「あ……」
二美子の目が開いている。
「起きた?二美ちゃん」
ん?様子が……
ベットからはなれて、ソファに近付く。
「二美ちゃん…?」
つーっと涙が頬を伝う。
「二美ちゃん……」
ポケットからハンカチを出し、膝を折って涙をふく。
「悲しい夢でも見たの?」
視線が合う。瞳から次から次へと涙がこぼれ落ちる。顔もくしゃりと歪み、声こそ出ていないが、なき続けている。胸が締め付けられる……。見ているこっちが苦しい。声なき悲しみが深さをより濃くしていて…
「二美ちゃん、そんなに泣いたら干からびてしまうよ……」
頭を撫でて、隣に座る。
「もうすぐ裕太先輩も来るよ。家に帰ろう?」
小さく頷く彼女は、こんなに責めを負っているけれど、いったい何をしたというのだろう?僕は、なにも知らないけれど、知ってしまったら……知ったら……どうだろう?
僕は冷静でいられる?
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