第17話
17。
「裕太!」
電話をかけて来たのは裕太だった。
買い物から帰る途中で
家から少し離れたところにある商店街だ。ここにはフリースペースがあって、小休止が出来るようにベンチとテーブルが置かれている。買い物をした人たちが、ちょっとここで井戸端会をして時間を楽しむのだ。夕方になると学生たちが賑わっている場所だ。
「やっぱり、
「光麗……忠告しただろ?」
「聞かないって知ってるでしょ?」
まあ、それはそうだ……
「二美子は?」
「ああ、落ち着いてる。あの子は賢い子だから、時間さえあれば自分である程度の答えを出すさ。今は
「ある意味それも心配だが……」
「……お前はちょっとやりすぎだ。ミコちゃんだって大人だぞ」
「わかってるよ…」
全く…裕太は本当に優秀なんだけど、妹のことになると急に偏った見解を繰り広げる。
「で…?光麗はどうしてここにいるんだ?」
「俺も有休取りました。2日だけですけど……。不本意ですが、エースが2人も抜けているので、上が許してくれませんでした」
だろうな。
同じタイミングで取れないだろうと思って、そこはねじ込んだんだ。上が把握する前に正規の取得方でとった。
「で、ミコちゃんに聞かせられない話ってなんだ?」
ここに光麗がいるって情報は裕太から聞いてなかったが…
「光麗、さっきの見せて」
「あ、はい」
裕太に促されると、光麗は自分のスマホを出して画面をこちらに見せた。のぞくとそこにはある人物の姿が……
「これって……」
「やっぱ…そうだよな」
「記憶が古くてなんとも言えないけど、たぶん、そうだと思う。光麗、これってどこで撮ったんだ?」
「ああ、これ俺が撮ったんじゃないんです。
壽生から?
「なんでまた…」
「それが、二美ちゃん探してるおっさんがいるって……って!」
裕太にはたかれた……。
「それを早く言え!」
「光麗、壽生に連絡してどこで撮ったか聞い…………」
タイミングよく俺のスマホがなる。
《輝礼》
タイミング的にさっきはすみませんってことではなさそうだ……。
「ちょっと待て、光麗」
その電話に出る。
「はい、尊。どうした
『尊さん、二美子さんを探してたおっさんがいるって話、聞きました?』
「ああ、今、光麗に聞いた」
『え……光麗さんとって、今どこですか?』
「外にいる。裕太もいるけど」
『え……二美子さんは?』
「尚惟が家にいてくれてるぞ。どうした?」
『すぐに戻ってください!今俺たちはそのおっさんを見かけたんです。壽生が見かけたのって二美子さんが通院してる病院です。今いるのは、裕太さんの家の近くです。きっと二美さんに会おうとしてます。こいつ誰っすか?!』
輝礼の天性の勘がこれはよくないと危険信号でも出してるんだろうな。2つの事実だけでミコに不穏な存在だと判断するとは……。早計だが、必要な判断だ。
「そのまま見失うなよ、電話、切るな」
裕太とアイコンタクト。
「ミコを探してるってことは……」
「
「あるわけないだろ。母さんもそんなこと言ってなかった」
「こっちにもねえよ……なんなんだ?」
探していたのが事実なら、何の用だろうか。あまりいい気持ちはしないな…。
「光麗、お前、来いっ」
裕太、買い物をしたモノを俺に渡す。
「偶然来たわけじゃないな」
「ミコに接触してるかもな」
「俺が親父んとこ行くわ……」
「……大丈夫か?」
「バカにすんな、これでもいろいろ背負ってんだ」
「だな。任せる、俺はミコんとこ行ってそのまま病院行く」
「了解」
すぐに裕太が光麗を引っ張って走り出す。
「場所どこか聞け、ミツ」
俺は光麗にスマホを渡し、光麗のスマホを俺が受けとる。
とにかく急いでミコを病院まで連れて行こう。あいつと会う前に、安全なところへ、まず連れていかなくては。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます