第16話
16。
「
「ほっとけよ、言わないでいいこと言っちまった……。反省してくるって」
「何言ってるんだよ、お前が言わなきゃ、俺が言ってた」
「……お?」
「世の中、言わなきゃわかんないことの方が多いよ。言うか言わないかだけで、大体は言わないと伝わらないって」
壽生の言葉に振り返る。
「アキラの言ったこと、よくわかる。俺も思った。たぶん、
「壽生……」
はあ……、でもやっぱり俺はガキだ。飛び出してきちまうあたり、中坊だな、中身が。
壽生に肩をポンっとたたかれ、それで力が抜けた気がした。
「ともあれ、二美さんの状況が分かったんだから、これからどうするかだな……」
こういうところ、壽生のすごいところだ。次のことを考えられる、切り替える力っていうのだろうか。いつも敵わねえと思わされる。
「とにかく、簡単に声が出なくなるなんて実際ないんだ。何かはあった。それがわかった方がいいのかどうかだな」
「梨緒先生に診てもらうこと、これ以上生活を脅かされないこと、ってとこか…」
実際、声が出なくなるような病気にかかってる可能性も低いがないわけではないしな。ちゃんと診断してもらった方がいだろうけど……もしも、その原因となることが、例えばこの間にように、二美子さんが恐ろしいと感じるようなことであるなら、俺は望まない。
「さて、戻るか?それとももうちょっと頭冷やすか?」
壽生に促され、ちょっと恥ずかしい。
「ごめんな、壽生」
「だから、悪くないって。いつもアキラの言葉には真意がある、と、俺は思う!」
こっぱずかしくて、頭をかく。
視線をあげたとき、俺の眼の端にある人物が写った。
「壽生!」
「あっ……?え……っ?!」
俺は壽生の腕を引っ張ると、近くにあった木陰に身を隠す。
「写真の男……!」
2人でもう一度見直す。公園の中をひとりで歩いている男。
「あっ……あいつ、病院の……!」
え……?病院って……
「壽生、病院って」
「あの写メ撮ったのって、二美子さんの通院してる病院の玄関口だよ」
「そうなん……?」
「だから余計に気になったんだよ」
ちょっと待てよ……
「気のせいならいいけど、まさか、自宅に近づいてないか……?」
一瞬、嫌な沈黙。
「「尊さんに連絡!」」
俺と壽生はこれ以上二美子さんを傷つける要因を増やしたくない、その一言につきた。
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