第13話

居間のソファで、カフェオレを飲んでいる。タケルさんが作ってくれたカフェオレ。ミルクたっぷりのやつ。ほとんどホットミルクなんだけど、ほんわかコーヒーの味もして、私は好き。

おいしいって、言いたいけど

「…………」

「いいよ、分かってる。上手いだろ?」

こくりと頷く。

裕太兄は買い出しに行った。どうやら私を一人にしておけなくて、尊さんを呼んだらしかった。

「心臓は?痛むのか?」

首を横にふる。今は大丈夫。そんなにいつも痛いわけではない。

尊さんは少し様子を見ていたが、スマホを出して、なにやら打ち始めた。

「ミコちゃん、スマホ持ってる?」

え?スマホ?

首をたてにふる。

「今、手元にある?」

え、あるけど……。カフェオレの入ったマグをテーブルにおいて、ポケットからスマホを出す。

「ん、スマホ見て」

ん?

すると、ピコン、と音がして、メールが入ってきた。


尊【今日の晩飯はなんだろうな】


尊さんの顔を見ると、にっこり笑った。

「俺も食べていっていいのかな?」

私は、ちょっと戸惑いもしたが、スマホに文字を打ち込んだ。


二美子【食べていってください】


「うん、ありがとう」


そうだよね……。そうよ、伝えようと思えばなんだって手段はあるじゃないの。

こうなってしまったのはもう、変えられないんだもの。変えられない…………。

いや、変わるかもしれないから!だから、それまではできることをする。

二美子【ありがとうございます】

「え?何が?俺は何もしてないよ」

優しい笑顔にほっこりする。胸に、心にしみる。何だか、尊さんの笑顔は安心する。無条件の安心感というか……。

「ねえ、ミコちゃん」

ん?

「俺もここに住んでいいかな?」

え?え、えっと……。

二美子【兄になんか言われた?】

「うーん、まあそれもあるけど、おれ自身がそうしたいというか……、だめ?」

だめ……? って、そんなに優しい声でかわいく言われると……。

二美子【もう、私、大丈夫ですよ】

「俺が心配で大丈夫じゃない」

二美子【迷惑かけたくない】

「迷惑じゃない。てか、かけてもらっていい」


ええ……?


「いいんだ。そうしたいんだ」

尊さん?何だかいつもと違う感じがする。

「裕太はそうしてほしいって言ってるから、兄貴問題は解決だろ?」

そんなに優しく微笑まないでほしい。警察署でも女性に人気だって知ってるんですよ私…。仕事もできて気が利くって裕太兄も言ってた。

「ミコちゃんが嫌ならやめるよ」

え、ずるい……

二美子【嫌なわけないでしょ】

「お、良かった」

ほんとずるい……。けど、思わず笑顔になってしまった。

「ミコちゃん、笑顔だよ、今」


え……


尊さんに言われて、ふと気づく。

笑える……んだ、私。手が自然に顔をさわる。口元を触る。頬を触る。

「笑っていたよ、俺が保証する」


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