第12話

なんだ?あのおっさん……


植え込みのあるベンチに腰を下ろして、うろうろしているおっさんを確認。

俺は今、病院にいた。でも、中ではなく、外の広場だ。ここは敷地が広く、病院正面の玄関から駐車場までの間に植え込みがある。きれいな花も植えられていて、清潔感もあり、心地よい。今日のように晴れている日には入院患者も散歩をする。中庭もいいが、ここもよい。二美子さんが入院しているときに話しながらここを散歩した。敷地内にはコンビニもあり、重宝する。

今日は、二美子さん絡みではなく、自分の眼科受診のために来たのだ。その時に、二美子さん写真を手に、うろうろしているおじさんがいたのだ。たまたまぶつかって、相手の手から落ちた写真を拾ったら、そこには二美子さんが写っていた。

「すみません」

そう言ってぶつかった相手は写真を取って立ち去った。が、そのままにできるわけないじゃないか!

輝礼アキラに写メを送って、知ってる人か聞いてみた。本当は本人に聞くのがいいのだろうが、二美子さん、今、どういう状況かわからないし、裕太さんに電話するも出ないし。

様子を見ているが、病院へ入るでもなく、入り口でうろうろしている。

あれは…動きが不審者だ。

さて…輝礼たちが来るまでどうするかな…。コンビニで買ったコーヒーを飲み終わり、ゴミ箱に捨てに行く。

「あれ?壽生ジュキくん…だったよね」

「え?」

声のしたほうを向くと女の人がいた。

「あ、二美さんの主治医」

「そう。梨緖リオね。よく覚えてたわね。白衣も着てないのに」

「先生こそ、患者でもないのに」

「ああ~、特徴的な人間関係じゃない、二美子さんって」

「え?」

「お兄さんとか……」

「ああー、確かに、」

特徴的か……物は言いようだな。

「関係性ってたいせつじゃない?特に影響力がありそうな近さの場合はインプットしやすいの」

……はあ、なるほど。

「あのさ、あれから二美子さん、元気かな?」

「え?あれからって……診察したって聞いてたんですけど」

「ああ、退院後初めての受診には来たよ。で、その後1週間ぐらいしてからだったかな?循環器内科の方に受診してるはずなんだけど……」

「そうなんですか?そこまでは知らないですけど……」

「そっか。その日来なくて担当の先生が訪ねてきたのよね」



「二美さん、来てないんですか?」

「うん、まあ、薬はあると思うけど、そろそろ1度受診してもらいたいみたいで……って壽生くん?!」

スマホの『尚惟ショウイ』をタップする。走り出したのと同時に。

「言っときます!」

これって、一旦、裕太さんに言った方がいい。

『もしもし、壽生、もうすぐ着…………』

「尚惟!裕太さんとこ行こう!」

『え、あのおっさんのことは?』

「写メあるし、後ででいいよ。今さっき梨緖先生に会った。心臓の方の受診してないって、二美さん」

『え……?』

「なんだろう、わかんないけど、その日かそれまでに何かあったんだよ!」

『その日って……いつ?』

「俺たちが試験してた頃だよ!だとしたらずいぶん時間が経ってる!裕太さんとこ行こう!」

あのおっさん関係あるかもだけど、先に会わないと、何だか俺が不安で死にそうだ!

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