第10話
まさか、
「久々に来たわ~。変わってないね~」
ほのぼのと話す光麗先輩。何をしに来たのかわからない俺は、警戒していた。
二美子さんのことだろうな……
何となく察していた。
それを見透かすように、相手はスルリと本題にはいった。
「休戦を要求しに来た」
「え」
少し違う方向から攻めてきたぞ…。
「休戦て……」
「もちろん、二美ちゃんのことだよ」
こういうところが嫌なんだよ……。二美さんの事だろうけど、いろいろとごっちゃになった言い方だけど!
「二美子さんの彼氏ですけど、俺」
「知ってる。僕、それでも好きなんだよね。知ってるだろ?」
もちろん……とっても迷惑してますから…
「
笑顔で言うことかよ。
「僕は必要ないことは言わないんだよね」
「……てことは」
この告白が必要ってことか?
「裕太先輩、有給とった」
「え」
「この間のご褒美の有給休暇な。だから1週間」
「二美子さんの事と関係があるんですか?」
「あるでしょ、他に理由ある?」
まあね……
「でも、何も言ってくれないし、だから休戦。少なくとも僕はこの間の件からお前の事は認めてる」
「はい?」
いろいろわからないことのオンパレード。
「尚惟って、諦め悪いだろ?意外にしつこいってことがわかったわ。童顔で虫も殺さない顔してるけど、3人の中でお前を敵に回すのは嫌だわ、まじで…」
……敵対心持ってるでしょうが、
「情報共有して、何が起こってるかを整理しないと何も出来ないだろ?二美ちゃんに何かあったとしても」
まあ、それは確かにそうだ。けど、情報共有先がどうして光麗さんとなんだ?
「どう?」
不服ではある……。でも、
「……分かりました」
仕方ない、
て言うか、争ってなどいなかったのだけど、正式に光麗先輩が本気だって言う気持ちを、彼氏の俺が受け取ったっていう、変な構図が出来上がっただけな気がするが……。
複雑さが否めないが、まあ、しかたない。
「じゃあ、言い出した僕からな。
「え、尊さんも?」
「僕が裕太先輩の話をしに行った時は何も言ってくれないまま、もうその時には休みとってたんだよな~」
え、何で尊さんもなんだ?
「偶然じゃなくて?」
「ああ……僕も考えたけど、あれは違うな。裕太先輩が僕に話さないのには理由がある、とか、俺の心配はいい、とか、関係してるでしょ?って発言ばかりだから」
話さない理由…
「で、覚悟決めた顔でどっか行こうとしてた尚惟、何かあるんだろ?」
何だよ、どっから見てたんだよ。
こういう抜けてるように見せて、抜けてないとこがほんと嫌いだ。
「二美子さんに会ってない」
「連絡は?」
「電話にでないんです。最初は短いセンテンスだったけど話せた。けど、3日ぐらい前から出てくれない。メッセージが来るだけ…」
「裕太先輩はやっぱり二美ちゃんのことで休みをとったんだな」
「……そうでしょうね。俺が電話したら……」
「え!先輩に電話したの?!」
ビックリした……。
「しましたよ」
「出た?」
「は、はい」
「…んだよ!」
「はい……?」
「で、なんて?」
なにむくれてるかな……。
「何かあったのか聞くと、あったっぽいのに、来るなって」
「あったと思うんだな、尚惟は」
「はい」
裕太さんの動揺した態度、二美子さんに絶対何かあった。何よりも、二美子さんが俺に全く会わなくなるなんてあり得ない。あんなに俺との時間を大事に過ごしてくれていた二美子さんが。
落ち着け、俺……。
深呼吸する。
あのまま家に突撃したところで、なにも分からなかっただろう。幸か不幸か、光麗先輩が声かけてくれて良かったかもしれない。
「なあ、尚惟は二美ちゃんが電話にでないってどういうことだと考える?」
「んー、話せない状態になってるとか?」
「先輩がそばにいて話しづらい……、いや、電話には出るわな。じゃあ……先輩と一緒ではない?」
「可能性としてはないわけじゃないですよね。尊さんが動いてるから事件性も考えられるし、俺たちを巻き込みたくないとか……けど……、二美子さんに近付けたくないような感じがしたというか……」
「それはいつものことじゃんか」
まあ、そうなんだけど……
二美子さんに会えなくなったってことの方が裕太さんが動いてるより早くて……、
何だか、彼女が隠してるような、
「まさか……話せないって、文字通り話せない?」
「え、二美ちゃんの状態が悪いってことか……?」
「ショウ!」
別の方向から俺の名前を呼びながら走って来た男。
「
「ショウ、お前、この人知ってるか?!」
突然の事に考えがまとまらない。
輝礼が携帯で撮ったであろう映像を見せる。
「え、知らないけど。誰?」
「俺も知らねえよ!
どういうこと?
「でも、こいつ……え、何で光麗さんがいるの?! 」
ああもうややこしい!
「いいから!この人が何!」
「あ?ああ、こいつ、二美子さん探してたんだって!」
「は?いつ!」
「今!」
「行こう!」
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