第7話

【ちょっと、忙しくて、ごめんね】


携帯の残る、二美子さんからのメッセージを見つめる。

二美子さんが事件後、初めての診察日。たまたま連絡をした俺は、病院の帰り道に公園を通ることを知っていた。というか、二美子さんが入院しているときにお見舞いへいった帰り、ここの雰囲気は二美子さんが好きだろうなと思っていたから、すぐにどこにいるのかわかっただけなのだが。

急いで駆けつけた俺は、彼女を見て、別に長く会ってなかったわけでもないのに泣きそうになった。なんだが危険信号が点灯していたんだ。殺伐としたものだが、不安がモヤのようにフワッとかかっていた。

裕太さんに言われたわけでもなく、二美子さんの所在が気になった。今思えば、これが俗に言う“虫の知らせ”というやつではなかったか…。

あの日会ったのを最後に、二美子さんと会えていない。ひとつは試験があったので。ふたつには二美子さんが会ってくれない……。

最初はおかしいとは思わなかった。試験が終わって、久しぶりに3人で二美子さんのとこへ行こうと話した。けれど、連絡をすると「体調が悪いから」という返事がきた。心臓の事を考えて、無理はいけないねとなった。

それから3日ほどして壽生ジュキが連絡をした。この頃から電話にでなくなった。返事はメッセージメールで返って来る。


【ごめんね、体調が悪くて】


電話に出られないほど?

俺から電話を入れる。やはり出ない。


【ちょっと、忙しくて、ごめんね】


やはり返事はメッセージメール。

輝礼が電話する。出ない。


【熱があるっぽい、ごめんね】


メッセージメールでの返事。


いよいよ、おかしいとなったのは裕太さんの返答だった。俺は、二美子さんに何かあったのかを聞くために裕太さんに電話した。

「おう」

「裕太さん、二美子さんに何かあったんですか? 連絡がつかないんです」

「まあ、ちょっとな……」

「え、なんで連絡してくれないんですか!今から行きます!」

「来るな」

「……え?」

「来るな。たぶん……、二美子は来てほしくないって思ってる。あとの二人にも言っとけ」

切られた電話の終了音は、俺の中で今も響いてる。


来てほしくない……?


は!上等じゃないか……!

誰が言ったんだ、来てほしくないって。

思うってなんだ、なめるなよ!

いくらお兄さんだからって横暴じゃないか!何があったか言えよな!


ここで吠えていても埒があかない。

今日は、これから家に向かうつもりでいた。1限の講義が終わり、出席カードを提出する。教室を出て門まで続く構内の中央通りに出ると、講義終わりで多くの学生が溢れていた。

尚惟ショウイ

名前を呼ばれ、声のした方向に振り返ると、そこには光麗ミツリがいた。

「光麗先輩…」

「よう、待ってた」

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