第2話 そしてそこに嘘告白を注入!
スクールカーストは何で決まるのか?それにはきっと多くの複雑な要因が絡んでいるのだろう。だけど一つだけ言えることがある。そのスクールカーストとは一部の特権階級のみが楽しい青春を送ることが出来るようにするための悍ましいシステムであり、そこから逸脱するものを容赦なく罰するということである。そしてカーストは多くの人間にとっては自分では決められないものなのである。だから時にカーストが低いものにはとんでもない災難が降りかかってくる。
「酒々井くん。ずっと好きでした。付き合ってください」
みんなが教室にいる昼休みなのに、すごく棒な台詞で俺に告白している女子が目の前にいる。名前は宇佐美
「あの…。返事貰えるかな…?」
宇佐美は恐る恐ると言った感じで俺の顔色を伺っている。その顔だけで、噂の類が全部嘘だと悟ってしまった。同時にこの告白も嘘だとわかった。いわゆる嘘告白。大抵の場合、カーストの低い男子がターゲットとなる残酷なイベント。告白を受ければ、有頂天になったタイミングで嘘だとバラされて黒歴史になり、その場で断れば、「女の子が勇気出して告白したのにサイテー!」の一声で残りの学校生活が闇に閉ざされるのだ。詰んでるなぁ僕。僕はこの学校においてはカーストがめちゃくちゃ低い。いつも僕にDVしてくる揚羽が裏で手を回して僕をカースト最低に追い込んでいるのだ。あの女、特級DV師特有の外面の良さゆえに学校では人気者だ。この嘘告白自体は彼女の仕込みではないが、彼女の行動が招いたくそみたいなイベントだ。本当に嫌になる。ここで断って即死するか、あとで晒されてじわじわ死ぬか二つに一つだ。
「俺も宇佐美さんのことが好きでした。よろしくお願いします」
とりあえずじわじわ死ぬ方を選ぶことにした僕だった。こうして偽カノジョ(嘘告白)が僕にできた。俺の返事を聞いた宇佐美は気の毒そうに苦笑いを浮かべている。これこの子も被害者っぽいな。よく見ればクラスの一軍女子たちが教室の窓際の後ろの方でクスクス笑ってる。ところでなんで陽キャって教室の後ろかつ窓際に集まるんだろう?ネズミやゴキブリも端っこ好きだし。きっと同類なんだろうな。はぁ。負け惜しみはいいとしても、めんどくさいことになってしまったなぁ…。
放課後になって、僕が生徒会室に行こうとしたら一軍女子たちに呼び止められた。
「カノジョ放っておいてどこ行くのー?放っておいたら可哀そうだよぅ!あはは!」
これが初心な男子だったら、宇佐美と楽し気に外にルンルンと遊びに行けるんだろうけど、僕は気が気でない。嘘告白とはいえカノジョが出来てしまった。揚羽が間違いなくキレる。いつも四六時中僕へのDVを考えることばかりに人生を浪費している揚羽のことだからもうこの嘘告白のことは把握しているだろう。すぐに弁解に行かないとまずい。だけど宇佐美を放っておくと、それはそれでカースト的に詰む。くそめんどくさい。
「あーそうだねー。うん。カノジョなんて出来たの初めてだから、緊張しちゃってさぁ。あはは」
俺は適当に言い訳をする。すると一軍女子がなんかニヤリと笑って。
「へぇ。酒々井って初めてなんだ。ならよかったね!リリナは恋愛経験豊富だから超リードしてくれるよ!ぎゃはは!」
それ聞いてやる気になる男子はきっといないだろう。宇佐美はどことなく沈んだように見える。あービッチの噂の出所は他の女子の嫉妬のようだ。顔とスタイルがいいのに気弱な女子はよくビッチのレッテルを張られがちだ。女子同士の足の引っ張り合いはなかなかおっかないものだ。なんか宇佐美が可哀そうに思えてきた。嘘告白だからきっと俺が例えばスキンシップとかしようとしたら、本当は罰ゲーム!とか言い出したり、あるいは写真撮られたりするんだろうけど、この子も被害者なんだよな。
「とりあえず一緒に帰ろうか」
「う、うん」
俺は宇佐美を連れてとりあえず下校することにしたのである。
下校して駅まで行き電車に乗った。すると宇佐美が言った。
「あたし、吉祥寺に行きたい。タピオカの美味しい店が出来たんだって」
吉祥寺はこのまま乗っていればすぐにつく。どうやら吉祥寺でお仲間が待機していて、僕の無様な写真を撮るのだろう。その手にはのらない。てかタピオカデートとか童貞の妄想かよ。この子のデートイメージの貧困さから考えても、間違いなく交際経験とかない。
「悪いけど高円寺行くから。今日は帰りに服屋に買い物行く予定だったからちょうどいいから付き合ってよ」
「え?高円寺?でもタピオカ…」
「タピオカならどこにでもあるよ。高円寺行くから。決定ね」
僕はそれで話を打ち切る。あからさまにオロオロとする宇佐美だったが、特に逆らったりはしなかった。そのまま俺たちは高円寺に向かったのである。
高円寺は落ち着いた雰囲気がありつつも活気があるから好きな街だ。僕と宇佐美は服屋のある通りをぶらぶら歩いていた。
「わぁ。服屋さんいっぱいあるんだぁ。知らなかった!」
けっこう楽し気な様子を僕に見せてくれる。ギャルギャルしているくせに初心な感じはけっこう可愛らしく思える。
「今日の店ここ」
僕は目的の店に入る。そこはビンテージ系の古着屋さんだ。
「え?なんかすごそうなお店だね…大丈夫かな…?」
「何を心配してるのか知らんけど、君が買い物するわけじゃないからね」
僕はとりあえずチャックだらけのパーカーに、スキニーのダメージジーンズを選び、試着した。
「わぁ!なんかあれ!ゴシックなバンドマンみたい!」
「おう。そうか。ならかっこいいと言え」
「え?うーん…こ、個性的だとは思うよ」
どうやら反応的にはナシ寄りのアリらしい。とりまこのセットを買う。そして店でそのまま着替えて僕たちは外に出た。
「近くにネイルサロンあるんよ。リーズナブルなのにセンスいいんだ」
「え?男の子なのにネイルサロン知ってるの?!」
僕たちは次にネイルサロンに入った。僕はその店でスカルプの黒くて長い爪をつけてもらった。黒は黒でも色々と研究に研究を重ねた深みのある黒である。実に渋い。
「こ、個性的過ぎる?!てか女の子のあたしを放っておいて、ネイル楽しむってどういうこと?!」
「はぁ?君が告白してきたんでしょ?だったらこれくらい許せよ」
「え、ええ…あれぇ…なんか思ってたのと違う…?」
気がついたら僕のファッションは実にヤバい葉っぱとか決めてそうな地雷系男子っぽさを醸していた。ファッションはいい。気持ちが切り替わるから。
「いいラーメン屋知ってるか夕飯にするか」
「え?お夕飯?」
「カレカノなんだから一緒に食べるでしょ?」
「でもあたし、お母さんが作ってるから」
「へぇ。俺は君と食いたいのに帰っちゃうの?彼女なのに?」
僕がそう言うと宇佐美は後ろめたそうにしてもじもじして。
「あんまりいっぱいじゃなきゃいいよ」
そして僕たちは一緒にラーメン屋に行った。宇佐美はどこかおどおどと店内を見回していたが、俺が腕を取ると一瞬だけビックとしたが、安心そうな顔になってくれた。
「なにこれすごくおいしぃー!」
宇佐美はラーメンを本当においしそうに食べている。ラーメン食べなれてないあたり、やっぱりビッチの噂は真実じゃないとますます確信した。食べ終わった後の宇佐美はご機嫌だった。そのあと、僕のお勧めのアイス屋さんでアイスを楽しんで気がついたら日は沈んで真っ暗になっていた。だからだろう。宇佐美は油断した。
「次はどこに行く!?」
すっかりとカノジョはこのデートを楽しんでいた。
「行きたいところある?」
「なんでもいいよ!」
どこでもいい。なんでもいい。そんな言葉を男相手に吐いちゃいけない。陰キャ相手なら無事で済む。でもだめ。僕みたいなやつにそんなフリーハンドをあげちゃいけない。僕は女の子のそういうあいまいな態度が大嫌いなんだから。
「じゃあいいところに連れてってあげる」
宇佐美は僕の腕に絡んでいる。彼女は取りとめもない日常の話を楽しげに話した。学校で同じグループの男子がバカやったお話。他の女子の失敗談。どうでもいいはなしばかり。でも俺はそれを楽しそうなフリをして聞く。そしてそのまま俺たちはとある施設に入った。
「え?ここってなに?」
「楽しいところ」
僕はモニターを操作する。そして宇佐美を連れてエレベーターに乗って、目的の部屋に入る。
「え?うそ!?ここって!?」
間抜けな女の子だ。なんでもいいなんて言わなきゃよかったのに。僕は後ろから彼女に優しく抱き着き、彼女の顎に手を添えて唇を奪った。
「んっ!?んっちゅ。っ…ちゅ…ねぇ今のって…」
「カノジョでしょ。普通だよ。普通。みんなやってるよ」
そして俺は彼女のバックを奪って、シャワールームに放り込む。
「え?あの、あたし…!」
「ゆっくり浴びなよ。待ってるから」
逃がす気なんてない。そんなつもりさらさらない。しばらくは無音が部屋を支配した。だけどすぐにシャワーの音が聞こえてきた。そして宇佐美はシャツだけを着て外に出てきた。入れ違いで僕もシャワー室に入って、体を綺麗にする。タオルだけを巻いて、ベットに女の子座りしている宇佐美の傍に座る。
「あのね。ほんとうはあたし…あっ…」
僕は唇を奪いながらそのままベットに押し倒す。
「ちがうの。あたしは…そんなつもりじゃ…あっ…んっ…」
そんなつもりじゃないのに、なんで宇佐美は僕を押しのけようともしないのだろう?シャツのボタンが一つづつ外されていくのを止めないんだろう。
「だめ…あたしね…うそなの…」
僕たちの間には嘘じゃないことなんてなかった。でもお互いの指は絡み合っていく。
「うそでいいよ。うそのままがいいんだ。ぜんぶ嘘ならそれでもいいんだよ」
だってうそだったらいいことがこの世界にはたくさんある。揚羽が僕を殴るのも嘘でした。久遠さんが結婚してるのも嘘でした。栗花落がいまでも僕じゃなくて揚羽を気にしていることも嘘でした。全部全部嘘ならいいのに。
「でもぉ…。うそのまま…なのに…あ…」
嘘のまま俺たちの体は交わった。お互いに見つめ合いながら、でも気持ちは重ならないまま。嘘を積み上げていく。でも嘘は気持ちいいから僕はまだやめられそうにないんだ。
****作者のひとり言****
NTRDVBSS!
NTRDVBSS!
そしてそこに嘘告白をブレンド!
なんて味わい深い香ばしい薫りなんだろう(゚Д゚)吐き気がするぜ!
嘘告女子をお持ち帰りしてんの草。
主人公のクズっぷりが草。
これは主人公がクズなりにラブを探すコメディです。
主人公君をみんなで嘲笑ってあげてください!
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