第32話 継承

 ステージは椅子も譜面台も増やされ、演奏者がさらに追加された。全員が開いていた楽譜はシーゲート序曲だ。


 配られたのは学校祭ムード真っ只中のときだった。


「毎年恒例シーゲート序曲を配ります。これは毎年3年生が引退し、新チームになる頃にやっている曲です。シーゲートとはアメリカにあるオハイオ州トレドにちなんだタイトルです。トレドはみジは椅子も譜面台も増やされ、演奏者がさらに追加された。全員が開いていた楽譜はシーゲート序曲だ。


 配られたのは学校祭ムード真っ只中のときだった。


「毎年恒例シーゲート序曲を配ります。これは毎年3年生が引退し、新チームになる頃にやっている曲です。シーゲートとはアメリカにあるオハイオ州トレドにちなんだタイトルです。日本語で海の門。これだけ海が近くにある地域なので、親しいものを感じるでしょ?それにトレドは夏は湿気が高く、冬には雪が降るそうです。それに漁業も盛んだと言います。どこかと似てますね。」

 雨宮先生はそこまで話すとあとは考えろと言わんばかりに、それ以上の説明はしなかった。


 曲の難易度で言うとグレート6だった宇宙の音楽に対し、シーゲート序曲はグレート3。それでも変拍子、転調、ソロと宇宙の音楽にも含まれていた要素は多くある。この先1・2年生が演奏するであろう楽曲にも含まれる要素なので、特に1年生にとってはいい練習曲でもあったが、全学年で演奏する最後の曲にもなった。


 初めて踏むステージにドキドキする1年生に対して、その感触を味わうような3年生。2年生は覚悟を決めているような表情をしていた。雨宮先生はそんな部員達を見渡して指揮を振る。


 最初はフルートのソロ。任されたのはこれから副部長としてこの部活を支える東出先輩。そのあとに入ってくるクラリネットのソロ。それはパートリーダーになったあかね先輩が演奏した。今までだったら3年生が演奏していたであろうソロの数々は全てこれから最高学年として部活を支える2年生が担当した。


 完成された演奏とまだまだ未熟な演奏が合わさったその曲は、可能性に満ちあふれていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る