未知
第28話 夏の終わり、新たな始まり
あれだけ暑かった夏は一瞬にして過ぎ去った。
夕星中学校吹奏楽部は北陸大会のあと1週間の夏休みが与えられた。あれだけ部活三昧だった日々にいた中学生に与えられた長い休暇で、それぞれが夏を楽しんだ。
1週間後。集まった吹奏楽部はいつにもなく賑やかで、和やかだった。あれだけコンクール前に張り詰めていたのが嘘のようにほぐれていた。
「ひとまず一段落しました、と言いたいところですが、これから学校行事が立て続きます。特に3年生は体育祭の準備などもあって集まることが多い。皆さんがこうやって活動できているのは学校の先生や生徒に応援されているからこそです。学校行事にしっかり貢献するのも大切なことです。」
練習開けの初日、雨宮先生は文化祭でやると言う曲を大量に配った。どれも中学生がタイトルやアーティスト名を見てピンと来るような曲はなく、雨宮先生の趣味で選ばれた洋楽ばかりだった。なんだかんだ、1番文化祭を楽しみにしていたのは生徒より先生の方だった。
そこからの日々は目まぐるしく過ぎていった。そして大きく変わった。
コンクールメンバーとサポートメンバーでわかれていた練習はなくなり、全員が同じ練習メニューをこなすようになった。合奏もパート練習も同じ。もちろん練習時間も同じで、サポートメンバーは昼食を持ち寄って朝から夕方まで練習する日々となった。
クラリネットの部室にあったスケールのチェック表はあっという間に陶子、瑠菜、理子の3人が最初に埋まった。その次に蘭々、その次が絵美。そして夏休みももう終わるという頃に彩葉がそのチェック表を全て終えた。その瞬間に全員で祝福をした。と思いきや別れはやって来る。
「サックスでも頑張ってね。」
と詩織先輩は言い、次の日から瑠菜はクラリネットからサックスへと変わった。
「もともとはサックス希望だったらしいよ。でも、上手かったのに残念。」
絵美は1人分空いてしまったスペースを見て言い、理子もどこか寂しさを感じていると、
「理子ちゃん、ちょっとお願いがあるんだけど・・・。」
クラリネットでいろいろ変わっていく中、吹奏楽部は新しい幹部が誕生した。
「それでは部長は東さん。副部長は東出さんにお願いします。」
出て来た名前は誰もが予想していた名前で、驚く人はいなかった。それ以外にも各楽器のパートリーダーが決まり、クラリネットはあかね先輩がパートリーダーとなり、琴音先輩はコンサートマスターと呼ばれるこの部活の音楽的リーダーに決まった。
そうやって吹奏楽部の日常は少しずつ変化をしていき、完全に移り変わったのは10月のことだった。
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