第19話 青の炎 VS 赤の炎
部活によっては大会も始まってきた頃、吹奏楽部は別の意味で戦いが起こっていた。
「もっと木管が合わせてよ。全然できてないじゃん。」
「金管音外さないでよ。いつもそこで外してるよね?」
「ホルンがもっと―――。」「トロンボーンが―――。」「クラリネットが―――!」
2年生から飛び交う話は本気だからこそ飛び交う対立ばかり。全員が全員を鼓舞して、競り合っているような言い合いが多いなか、
「木管前よりもよくなったじゃん!もうあと一息だね。」
「金管の音、もっと周りを聞けたらもっと良くなるんじゃないかな?」
3年生から飛び交うのは本気だからこその励まし合い。お互いを信頼しているからこそ良いところも悪いとことも認め合う。この全く色の違う2学年でも対立は絶えない。それでも部活全体として未だに平穏な空気を出せていたのは、比較的温厚な3年生の力が大きかった。
吹奏楽部が練習しているところからは3年生が中心となって練習している音が聞こえてくる。そのなかたまに聞こえてくる2年生同士のぶつかり合い。それを聞きながら、
「2年と3年ってだいぶ雰囲気違うよね。」とボソっと呟いた理子の一言に絵美は、
「わかる!3年生は穏やかな感じだけど、2年生はこう・・・熱いよね。情熱的って言うか。」
「だからこその対立は多いけどね。」と彩葉はメトロノームの音を止め、
「3年生は穏やかな人も多いし、怒りっぽい人もいない。厳しく言う人はいないけど、言うべきことはお互いにきちんと言い合ってみんなで頑張ろうって感じ。でも2年生はそれにちょっと不満って言うか、焦ってるって言うか。もっと厳しく言った方がいいって思ってる人は多いらしい。特に打楽器の東先輩とか、フルートの東出先輩とか。」
「やっぱその2人が2年生では中心って感じかぁ。確かに東先輩は学級委員もやってるし、東出先輩は1年から生徒会に入って学年でも中心的な人って感じ。やっぱ次の部長候補なのかな。来年はもっと厳しくなりそう。」
絵美はわかりやすくうなだれて、理子は、
「部長とか副部長ってその部の雰囲気に関わってくるからね。」
そう言って楽譜をめくった。そのとき絵美は体勢を戻して思い立ったかのように言った。
「でもさ、全体で言えば3年生の方が上手いよね。あんまり差がないって言うか。2年生の方ができる人とできない人の差がある気がする。できる人はどんどん先に行って、できない人はどんどん置いて行かれてるって言うか。」
「2年生は部活に熱心な人も多いし、本気なんだよね。別に3年生がそうじゃないってわけじゃないけど、2年生の方がわかりやすくそれが分かるって言うか。」
穏やかでありつつも内面では全国に向けて闘争心を燃やす3年生と、態度からもわかりやすく闘争心を燃やす2年生。理子はそれに対してまるで青の炎と赤の炎みたいだな、と内心思った。
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