第6話 創世神
「神が直接手を下すことは許されない」
彼女はカマを持って立っている。
生死の境目を漂っている俺に小さな手が触れる。小さくて、愛おしくて、暖かい。
「上位の神になるほど、責任というものは重くなる」
リリスは目を瞑り、力を込める。
ギュッと、幼い力で、できる限りの全力で。
「特に、最高神が直接接触するなんて」
そして、死体の胸を思いっきり押した。
「っは!」
目が覚めた俺に、リリスは手を差し伸べる。
「大丈夫?」
短く、心配を。
全身が痛む。
彼女の手を握り、立ち上がった。
吐き気がし、視野が不安定となる。
「ああ、なんとか」
何故、自分は生きているのか、理解できていなかった。
だが、一度死んだ身として、こういうこともあることを、身体が覚えている。
「記憶は?」
「正常だ」
「……私の名前は?」
「? リリス」
質問の意図を掴めず、そのまま正直に答えた。
それで良かったのだろう。
彼女はホッとしたような表情を浮かべ、地面に座り込んだ。
「……何をしたんだ?」
「蘇生した。別に、変な事はしてないよ」
蘇生した?
何平然と、物凄いことを言っているんだ。
これが、神様と言う者なのか。
よくわからないまま、身体に従い、地面に座り込んだ。
「そもそも、キミに破壌無月なんて異能与えてる時点で、察せるでしょ。蘇生ぐらい容易だって」
「……」
俺は、言葉を失った。
そういえば、昔読んだマンガがあった。
そのマンガは、神様から力を与えられたものだった。だから、それは百歩譲ってわかる。認められる。
でも、蘇生が容易なのはベクトルが違うだろう。
「……ともかく、ありがとうリリス」
「どういたしまして。それより、ごめんね」
「? 何がだ?」
「また、キミは死ぬ羽目になった。私の想定なら、生還できるはずだったんだけど……」
炎神の契約者、ラフム。
確か、能力の自爆に巻き込まれて……
アイツは、自分の能力で爆発をいなした。
相性が悪かったのもあるのだろう。
「あ、結局、どうなったんだ!?」
「死んだよ」
「は?」
俺は、あの後の事を知らない。
自爆の時点で、俺は意識を失った。
言ってしまえばあそこで俺は死んだのだ。
「死んだって……ラフムが?」
「いや、星が」
「!?」
星?
星って、ハルディルメアそのものが?
何で?
「何でも……あぁ、言ってなかったよね」
彼女は神妙そうな表情で、俺を見つめた。
彼女はそう言うと、水晶玉を俺に見せた。
「これは、もうすぐ寿命を迎える星だ」
「寿命って、あの?」
「そう。生命にとって死があるように、星にも死が存在する」
「……」
星の死。
あまり考えたことがなかった。
でも、義務教育を受けていた時に聴いた事はある。星が寿命を迎えると、爆発四散するって。
「私には呪いがある。その呪いは……」
そう言うと彼女はカマを持ち、虚空を裂いた。そこから現れるは、先ほどの星。
ビー玉越しに彼女の行動を見る。
その結末に、俺は唖然となった。
「私が星に触れた瞬間、発動する」
その刹那、星が死んだ。
みるみるうちに生気を失い、教科書で見たような爆発が起きた。
「私が星に触れた瞬間、その星は、死ぬ」
カルメリア 讃岐うどん @avocado77
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