第4話 従順なオンナ
その思いがあってからか、勝沢は、時々この女を、自分のオキニというよりも、
「絶えず、自分に従順なオンナ」
というイメージに変わってきた。
実際に、お金を払って気持ちよくしてもらうというのが、風俗遊びというもので、女の子は、自分を指名してきてくれた人に、必死になって尽くそうとする。それがプロ意識なのか、それとも、アイドルが自分のファンを大切にすることが、一つのプロ意識だと考えるのであれば、彼女たちには、プロという意識の裏に、
「自分が目立ちたい」
という気持ちだけではなく、
「プロ意識をファンの存在で再認識する」
という思いが潜んでいるのではないかと感じるのだった。
ソープでは、女の子を選ぶ時、指名する場合と、指名したい人がいない場合、フリーで入るという場合がある、
指名する場合は、基本的に指名料というものがいり、店にもよるが、平均して、1000円か、2000円というところであろうか。
一般的に指名する方法には3種類ある。
一つは、お店に電話を入れ、
「いついつ行くから、誰々でお願いします」
といって、電話予約するという方法だ。
その時に、割引を含めて、最終的にいくらになるかなどということを聞いておくことができるだろう。
あと、もう一つは、同じ事前予約でお、
「ネット予約」
というものがある。
直接電話を入れなくてもいいというのは有難いことなのかも知れないが、ネット予約を入れていたとしても、電話でスタッフと、結局何度か話さなければいけないのは、仕方のないことであり、たとえば、2日前に予約を入れたとすれば、その日か、あるいは、予約前日までに電話が店の方から掛かってくる。
というのは、
「ネット予約を入れた時点では、まだ仮予約でしかなく、予約確定というのは、店から連絡があり、そこで初めて店側が、ホームページ上で、その人が予約したことにするのだった。
客側からすると、
「世格確定してしまうと、もしドタキャンしてしまうそうな時、キャンセル料が発生するか、それがないとすれば、以降ネット予約はその人にはできないようにする措置をとるだろうから、それをギリギリmつまり前日まで猶予を持たせてくれているのだろう」
と、勝手に思い込んでいるかも知れないが、
店側からすれば、まったく違う理由で、
「確定をギリギリにしているのかも知れない」
というのは、
「人気嬢ともなると、予約合戦となり、その出勤予定が、上がったら瞬殺で、予約が埋まってしまう」
ということのよくあるだろう、
どうやっているのかは、正直分からないが、想像が許されるとして、女の子は、ツイッターなどの、DM(ダイレクトメッセージ)で、自分を贔屓にしてくれている客とそれ繋がっている。本来なら、一人一人を相手にすればいいのだろうが、女の子は一人に対して、ひいきにしている取り巻きといってもいい、ごひいき客全員を相手にすることは不可能だ。
ということになれば、考えられることとして、
「まず、彼らに、DMにて、いつ、自分が出勤予定を挙げるかということを、皆に告知しておいて、それで、彼らだけに、自分の予約を埋める争いを差せるというものである。一人一人来れる人時間があるのだから、それを聞いていては、ばってぃぐする人が絶対に出てくるし、調整など、時間を考えるとまず不可能なのだ。
だから、
「いっせいのおう」
で、男たちに選ぶ機会を与えておいて、女の子は、高みの見物といく、それが、いわゆる、
「姫予約」
というものではないのだろうか?
そんな姫予約をした連中は、そのほとんどは、当然、
「リピーター」
である。
いわゆる、
「リピする」
と言われる人たちで、彼らのことを、風俗の用語では、
「本指名」
と言われる。
普通と違って、これも店にもよるのだろうが、ほとんどの店で、割引が利かなかったりする。
本当であれば、
「逆なのではないか?」
と思うのだが、それは、他の会社の事業であれば、
「新規の客も大切だが、リピーターのような、固定客になってくれる人は、普通であれば、大切にしなければいけない」
と思われる。
しかし、風俗業界においては、リピーターがついたのは、
「女の子のおかげ」
ということなのだ。
つまり、女の子には、その分の、報酬を与えることになっていて、客に対して割引してしまうと、その分の女の子への報酬も与えなければいけない分、店は大損となってしまう。
「固定客がついてくれるのはありがたく、その分、女の子に還元しなければいけないので客にまで還元してしまうと、店からすれば、経営という意味で厳しくなる」
ということなのだろう。
なので、客からすれば、
「本指名には、塩対応」
という意見も結構ある。
しかし、経営者側からいけば、これもしょうがないことなのではないだろうか?
そして、この本指名は、電話予約においても、ネット予約においても、同じことである。lだから、
「本指名」
は、前述の、
「指名方法の3つ」
の一つにはカウントしない。
もう一つというのは、実際に、店に行って、受付で見せてもらうパネルを見て決める指名である。
前もっての指名ではないので、フリーに近いと思われがちだが、指名料はしっかり取られる。
しかも、店に到着し、パネルを見る前に、
「今なら、二人の子が、即行けますよ」
と言われたとしよう。
そして、自分が気に入った女の子がその中に入っているとして、すぐ行けるということが分かったうえで、その子を指名すれば、それは、指名したということになり、指名料を取られるのだ。
もちろん、これも店のルールなので、取らないところもあるだろうが、基本的には取られると思っておいた方がいい。
つまり、二人すぐにいける女の子がいるとして、
「その二人のどちらになるかは分からないが、どちらかということであれば、女の子の最終決定は店が行ったことになるので、
「指名ではない」
ということで、指名料のかからない、
「フリー」
ということになるのだろう。
それが、いわゆる、
「風俗のルールの一つ」
ということになり、客としては、覚えていて、損はないものだと言えるだろう。
本指名であったりと、一見初めて聞いた場合に、
「どういう意味なのだろう?」
というもの結構あり、それを思うと、感慨深げなところも多かったりするに違いない。
ただ、
「店は客相手にサービスをしよう」
というよりも、
「女の子への報酬をいかにねん出しようか?」
という方に考えを強めているようだ。
何度もいうが、店によって、考え方が違い、それこそ、店の方針なのだろうが、見ていると、女の子への報酬の方が大切なようである。
だから、
「店は本指名には、厳しい」
とおもわれる。
確かに客からすれば、
「普通の会社だったら、リピーターが離れないように大切にしようとするのが大切なはずなのに」
と思うだろう。
むしろ、リピーターというのは、お得意様であり、お得意様が離れていくと、売り上げは確実に落ちるのだ。それを考えると、
「お得意様が離れていく店や企業に明日はない」
とまで言われているところから見れば、このリピーターに対しての仕打ちは、
「本当に商売の基本を知ってやっているのだろうか?」
と考えさせるものであり、それが、
「やはり、こういう業界って、自転車操業のようなものなんじゃないか?」
という疑念を抱かせるのではないか。
だが、それは客がいくら考えても、どうなるものでもない。
お客は、店がどうなろうとも、そこにいる女の子に遭いにいけて、いやしてもらえれば、それだいいからであり、ある意味、他人事だった。
それはたぶん、
「どうせ、割引なんだから」
という思いがあるからで、元々も料金設定が高いか安いか、つまりは、
「コスパがいいのか悪いのか?」
ということになるのだろう。
自分のオキニが、従順なオンナだと思うと、っついつい、自分が色恋に走ってしまいそうで怖かったりす-る。
色恋というと、風俗嬢の一種の戦法で、
「イチャイチャしたりしながら、まるで恋人同士のような感情を相手に与えて、相手を自分の常連客のようにしてしまう」
というやり方である。
特に、キャバクラやホストなどのように、馴染みの客に、店の酒をどんどん頼ませて、金を搾り取るというようなやり方であったり、もっと露骨になると、情事をちらつかせえるような、
「枕営業」
なども、その一つなのかも知れない。
オキニの態度に、あざとさが見れないことで、本当に自分に従順なのか、よほど、色恋がうまいのか、そのあたりを見破ることができない。
ソープのような、特殊風俗営業では、最初から個室で、他の人が介入してくることもない。
しかも、身体の関係においては最後まで行っているので、先の展開を期待させるということはない。それを思うと、
「恋人のようなことをして、何になるのだろうか?」
という考えもないわけではない。
ただ、男によっては、
「身体においては、繋がることができたことで至高の悦びを味わうことができたが、精神的に埋まっていない部分がある」
と感じているのかも知れない。
肉体が満たされない中途半端な状態では、精神が満たされていると思い、それが色恋によって、徐々に身体も満たされていくと思うのが、色恋というものであれば、逆に、
「肉体の満足感で満たされることなく、貪欲に、精神も満たされたい」
と思うのが、男の性というものではないだろうか。
これは男に限ったことではない。むじろ女性の方が、
「色恋に憧れている」
といってもいいかも知れない。
その証拠に、
「ホスト狂い」
という女性が多いのも事実で、あくまでもドラマやVシネマでしか見たことはないが、
「ホストに狂った普通のOLや主婦が、借金をしてでも、ホストの気持ちを買おうとして、金がなくなると、ホストに捨てられ、借金だけが残ってしまい、借金を返すために、風俗にいく」
というパターン。
または、
「借金するまでの勇気がなくて、ホストに使う金がないのに、通い続け、ツケが借金になってしまい、それまでちやほやしていたホストが豹変し、やくざを連れてきて、暴力で脅され、そのまま、風俗に売られるということになってしまう」
ということも多いという。
どちらにしても、行き着く先は風俗なのだろうが、結局は、
「お金の切れ目が、縁の切れ目」
というところであり、いや、そもそも、ホスト側に、これっぽちも女に対して感情が移入していたわけではない。ホストから見れば、オンナは、札束にしか見えないというだけのことなのだろう。
何度もいうが、あくまでも、Vシネマでのストーリーをそのまま信じた場合の解釈でしかないのだが、見ていて、恐怖のようなものは感じるが、違和感は感じない。
つまり、実話だと言われても、そこにリアリティがあることで、疑う余地など、どこにもないのだ。
そんな状態を見ていると、自分が通っているソープの女の子に、
「まさか、俺の顔も札束にしか見えていないのだろうか?」
と考えると、虚しくなってしまう。
だが、逆に色恋に嵌ってしまい、借金をしてまで、通い詰めるという状態にならないような、抑止になるのであれば、それも無理もないのではないかと感じるのだ。
だが、今まで何人かの風俗嬢を知っていて、それなりに通い詰めた相手もいたことで、自分としては、
「風俗嬢というものが分かってきている」
と感じるのは、少しおこがましいのだろうか?
そういう意味では、彼女が自分に従順なのは、まんざら嘘ではないようにも思えた。
むしろ、これが色恋であれば、結構なオンナだということになるだろう、誰か、バックにいると見てもいいかも知れない。
しかし、そんなことを思ってしまうと、そもそもの風俗で感じたいと思っている癒しや快感が、半減ところか、逆効果になってしまうと、まったくの無意味なことをしているとしか思えない。
そう考えると、
「まるで気持ちが堂々巡りを繰り返しているようにしか思えない」
といえるのではないだろうか?
つまり、三段論法が噛み合っているのだが、どこかに結界のようなものがあるということに気づいたような感覚ではないだろうか?
三段論法と言えばいいのか、それとも、三すくみの関係と言えばいいのか、自然界における生態系が、その代表例であり、揺るぐことのない事実なのであろうが、人間、特に、男女の関係というのは、弱肉強食のような、抗ううことのできない、
「自然界の生態系」
のようなものを持っているに違いない。
何しろ、男女というものは、人間だけではなく、他のほとんどの動物にあるもので、
「種の保存」
のために、行う行為は、形こそ違え、していることは同じことなのだ。
なぜ、それが人間界だけにおいて、
「タブー」
と言われることのようになるのかが、よく分からないが、少なくとも、犯罪や戦争などという人間同士の行為の元凶になっているのは、間違いのないことなのだろう。
そして、人間生活、それぞれが生きていくために先人たちが築き上げてきたものの中に、
「契約、売買関係」
というものがある。
この関係を保つためのものが、
「お金」
であり、
金銭関係のその先に見えるものが、
「見てはいけない」
あるいは、
「開けてはいけない」
と言われる、
「パンドラの匣」
だと言われるのではないだろうか。
ただ、いつまでも、怖がってばかりいては、風俗遊びなどできるわけもない。十分に危険性を感じた上で、遊ぶのであれば、それはっ問題ないと言えるのではないだろうか。
「この女が俺に従順だというのであれば、それでいいではないか。どこか、結界のようなものを感じれば、その時、引き際を考えればいいのだ」
と思った。
つまり、問題は、引き際だった。
そこを間違えて、抜けられない底なし沼に足を突っ込んでしまったことになり、後で後悔しても、どうなるものでもない。
沈みゆく沼に足を取られ、そこまでのことなのだ。つまり、底なし沼に入る前に、必ず何か警鐘のようなものがあり、そこには、結界を感じさせる、引っかかりのようなものがあるに違いない。
そのことを、どこまで分かっているのかということが重要であり、勝沢は、
「俺にそこまで備わっているかどうか」
というのが、一抹の不安であった。
だから、目の前の女性の従順さを、そのまま受け入れていいものなのかどうか、それが気になっていた。
「パンドラの匣」
それは、元々ギリシャ神話において、万能の神といわれる、
「ゼウスが、人間界に仕わせた、初めての女性」
なのだった。
これは、ギリシャ神話独特のもので、
「元々人間界には、男しかいなかった」
というものだった。
人間界には、火というものがなく、冷たさと暗黒しかないことで、人間世界は、苦しい世界だったのだ。
神は、最初から人間界に火を与えるつもりはなかったようだ。
人間界に火を与えるということは、自由な行動をさせるということになり、そうなると、人間は欲望から、いわゆる今の、
「犯罪「
というものが横行することになり、今のような抑止がないことで、無法地帯になることが分かっていたからだろう。
しかし、人間というものが好きで、人間を憐れんでいるプロメテウスが、人間界に火を与えたことで、彼自身も罰をうけ、
「人間界も罰を受けるべきだ」
ということで、オンナというものを創造し、人間界に送るこむことで、それが人間に対しての災いとなることになる。
その時に創造された女というのが、
「パンドラ」
という女性だった。
彼女は、神々からいろいろなものを与えられた。
そこには、人間を欺く、あさとさであったり、女の魅力を引き出すことの方法であったり、男を手玉に取る方法などである。
パンドラの魅力に人間は、さぞや心を奪われたことだろう。
パンドラの持っていた、
「匣」
というのは、神話や寓話などで、
「お約束」
といってもいい、
「見るなのタブー」
だったのだ。
つまりは、
「開けてはいけない」
と言われていたものを、好奇心から開けてしまったことで、人間界に、ありとあらゆる災いが降り注ぐことになる。
戦争や疫病などと言った、まさに、
「この世の地獄」
というものを、そのまま表したものだったのだ。
そんなパンドラも、神から教えられた、
「男をたぶらかす」
ということで、従順な女性を演出することに長けていたことだろう。
従順なオンナというのは、どういうものかというのを、勝沢は考えていた。
「自分に決して逆らうことをしない女ということなのか?」
ということを考えた。
確かに、自分の中にあるS性から、従順な女を見ると、自分が相手を、
「束縛したい」
という気持ちを高めるのに、実に分かりやすい女であるということが分かってくる。
しかし、どこか物足りなさを感じるというもの、人間の性の一つではないだろうか?
確かに、言いなりになる女を束縛するというのは、
「これに勝るものはない」
と思われるほどの快感ではあるが、どこか、ウソっぽいと考えるところもあるだろう。
それは、人間というものに、猜疑心なるものがあるからではないだろうか?
そのまま信じればいいものを、どうしても信じられない何かがあるというもので、嫉妬という感情とは少し違っているが、似たところがあることから、
「猜疑心というのも、相手を思うがゆえに出てくる感情であり、これは、まわりに直接影響するわけではない、自分だけが苦しむものではないか?」
と思えるのだ。
そのわりに、猜疑心ということはを聞いて、
「いい意味」
として捉える人はいない。
それこそ、嫉妬と同じように、まわりに対して不快感しか与えないし、猜疑心が強ければ、
「何をするか分からない」
という感情に至るものではないだろうか?
それを思うと、
「猜疑心など、ない方がいいに決まっている」
といっていいのではないだろか?
「彼女が従順なのであれば、こちらも、その気持ちに従えばいいのだ」
ソープなどの風俗は、キャバクラやホストクラブのようなあざといところはない。
なぜなら、最初から値段は決まっていて、勝負は、すでに、
「女の子と対面する前に終わっている」
といってもいいだろう。
ただ、プレイの中で、
「もう一度私に遭いたいと思わせなければ」
という気持ちは強いだろう。
リピーターになってもらって、再度指名してもらい、徐々に常連になってもらえば、指名料のバックが入ることで、
「割引はないが、それ以上の女の子のサービスが受けられる」
ということになるだろう。
だから、客にとって、金銭的な得はないが、女の子からの、あざといのかも知れないが、もっと深いサービスが得られるというのも事実である。
割り切っている人は、
「そもそも、彼女にする気もない相手なのだから、後腐れのないところでのサービスがうけられれば、それで御の字ではないか?」
と考えることだろう。
逆に、フリーを楽しみに行く人は、
「誰が出てくるか分からない」
ということで、博打の愉しみを感じている人なのだろう。
もちろん、指名料がかからないと思っている人もいるのだろうが、
「たかが、2000円ほど」
と考えるか、
「2000円も掛けてしまいする意味があるのだろうか?」
という考えが頭に渦巻いている。
「風俗にくる時点で、2000円くらい」
と考えるのは、どうなのだろう?
ただ、実際にはそうなのである。
一時期、その子がずっと気になっていたが、ある日、彼女が友達の話をしたのだが、その友達というのが、どこか自分が知っている子のことのようで、思わず、話を深堀して聞いてみた。途中まで聞いてしまうと、そこでやめることができなくなったのは、自分がその子のことを意識していたからではないかと思うと、自分でも不思議な気持ちになっていくのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます