新たな事実

「さて、邪魔者はいなくなったことだし、出てみる?」

「いや、ちょっとお前と話がしたい。だから部屋に戻らないか。」

「あらそう?なら戻りますか。」

そうして僕らは橘の部屋に戻った。

「それで、話って?」

「橘、話したくないことかもしれないが、もう一度聞かせてくれ。この先橘はどうするつもりなんだ?」

「またそれ?言ったはずよ、それについて答える気はないわ。なんでそんなこと気になるの?もうあなたは成仏できるというのに。」

「そのことだが、俺はまだ成仏する気はない。」

「え、なんで?」

「お前を守ると決めたからだ。お前は救われるべきだ。お前は僕に謝った、つまり罪悪感があるということじゃないのか。人を殺したという罪悪感を持って人はまともに生きられるとは思えない。お前はこの先どうしたいんだ。」

「、、、あなた本当に度が付くほどお人好しね。自分を殺した相手を守るだなんて。そんな奴ふつういないわよ。そうね。そこまで言ってくれるならまだ話してなかったことを含めて話させてもらおうかしら。」

そう言って橘は積み重なった書類の中から一つの紙を取り出した。

「これ見て。」

橘から渡された紙を見てみる。そしてそこにば慢性骨髄性白血病゙と書かれていた。白血病

だって?

「お前、白血病ってどういうことだ。」

「最近、疲れやすかったりあざがいっぱいできてたりしてね。病院に行ったらそう診断された。しかも急性転化っていうのしてるらしくてね。余命が後三か月らしいわ。」

「余命後三か月って、、、。治らないのか?」

「治る見込みはほぼないらしいわ。だからもう治療を受けてない。」

「そんな、お前。お前はそれでいいのか?」

「えぇ、どうせ人様を殺してるんだもの。ばちが当たったのね。」

そんな。こいつはいままでいじめにも耐えて、あんな親にも耐えて生きてきたんだぞ。こん

なことがあっていいのかよ。この先どうするとかの問題じゃない。こいつは三か月後にはこ

の世を去るんだ。こんな絶望があっていいのか。そう僕が絶望をした顔をしていると、

「なんて顔してんのよ。いいのよ、もともとこの先のうのうと生きていくつもりはなかったんだもの。それにわかりやすい期限が付いただけだわ。」

「お前は本当にそれでいいのか。」

「えぇ。」

そう強く覚悟をした瞳で橘は答えた。そうか。橘がそう覚悟をしているんだ。まだ納得いか

ないことばかりだが、この世にはどうにもならないこともある。それなら橘の最後の日まで

見守ろう。そう決めた僕は口を開いた。

「分かった。ならその最後の日までお前のことを見守らせてくれ。」

「ふふ。あなたも物好きね。ならそうね。私のやりたいことに付き合ってもらおうかしら。」

「あぁ、なんでも付き合ってやる。」

「あら、もう四時ね。いったん眠いから寝てもいいかしら。また明日色々話させてもらうわ。」

「分かった。なら一度僕は出る。」

「え、いいわよ。このまま部屋にいて。起きたらすぐ話したいし。」

「いやさすがに女子の部屋にいるというのはまずいだろ。」

「あら、あなたはもう幽霊なんだから気にしなくていいのに。それにあなた私の日記気になってたでしょ。読んでていいわよ。寝てもいいけど。」

「んーーー。なら好意に甘えさせてもらう。」

「えぇ。じゃあおやすみ。」

そう言って橘はすぐに寝た。さて、どうしよう。寝てもいいが、一度寝ると十二時間は目覚

めないからな。それなら、橘の日記を見るか。もともとこれを見るつもりだったが、日記って結構プライベートなものじゃないのか。そう簡単に見せていいものなのかと思いながら、僕は日記を開いた。

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