真相

部屋が静まり返る。橘の部屋には酷く動揺した様子の橘とこれまた動揺している僕がいた。

こいつは今何と言った。゙なんであんたがいるのよ゙だって?なぜ見えている。

僕が物体に触れる時間は見えるようになるのかと一瞬考えたが、それはない。だってその時

間橘の親とすれ違ったことがあるが僕の姿は見えていなかった。だったらなぜ今こいつは

僕の姿が見えているんだ。そう僕が考え込んでいると、

「答えなさいよ!なんで死んだはずのあんたがここにいるのよ!」

橘がそう叫んだ。

「ちょっと待ってくれ。逆になぜ僕が見えているんだ。」

そう僕が言うと、

「なんで見えてるってやっぱりあんたは死んでいるのよね?」

「そうだ。なぜか目が覚めるとお前の部屋にいたんだ。」

「え?どいういこと、、、」

「今すべてを説明する。」

僕は死んでからあったことをすべて橘に説明した。橘は黙って真剣に話を聞いてくれた。

そしてすべてを聞いた橘はしばらく考え込んで口を開いた。

「つまりあんたは死んだあと突然私の部屋で目覚めて、家から出れられない状況にあるの

 ね。そして成仏するにはおそらくなぜ刺されたのかをする必要がある。ということであってる?」

「そういうことだ。僕的には早く成仏してしまいたい。だから教えてくれないか。なぜ僕を殺したのか。」

「なんであんたはそんな冷静なのよ。仮にもあんたを殺した奴が目の前にいるのよ。憎いとか思わないの?」

憎いと思わなかったというと嘘になる。平凡な生活を送っていたといえど家族は大切だっ

たし、平凡な生活に僕は満足していた。将来は適当に公務員になって休日は小説を読んで過

ごすのだろうと思っていた。だが突然高2で死んだのだ。最初はなんで僕が死ななければ

いけないのかと憤っていた。だが、数日であるが橘の様子や家族との関係を見てこいつには

何か事情があるのではないかと思うようになったのだ。だからいつの間にか怒りや憎いと

いう感情は消え去っていた。どうせ死んだという事実は消えない。過去は変えられないのだ

からそのことにいつまでもこだわっていても時間の無駄だ。だから僕は早く成仏してしま

いたいのだ。

「憎いと思わなかったといえば噓にはなるが、橘にも事情があるんじゃないかと思ったんだよ。」

「なにそれ。あんたお人好しすぎるでしょ。」

「いいんだよ。どうせ死んだということに変わりはないんだから。」

そういうと、橘は少しびっくりした表情をした。

「分かったわ。なんであんたを殺したのか教えるわ。ただ少し話が長くなるけどいいかしら。」

「分かった。だったら先に部屋を少し片づけないか。座りたい。」

「あぁ、そうよね。じゃあ手伝ってくれる?」

「もちろんだ。何なら触っていいんだ?」

「じゃあ私は服とかメイク道具片づけるから、教科書とかノートとかまとめてくれる?」

「分かった。」

そう言って橘は服とかメイク道具をまとめはじめた。さて、僕もそこら中に散らばっている

教科書やノートを片付けるか。そう思って足元にあった教科書を手に取った。そして僕は息

をのむ。その教科書には落書きしてあった。そこにば死ね゙や゙学校くんな゙とかが書かれていた。それもご丁寧に外から見えないように中に書いてあった。

「お前これ、、、」

「あぁ、ごめん。胸糞悪いもの見せたわね。気になるのなら私が片付けるわ。」

「いや、大丈夫だ。」

いじめられていたのか。気づかなかった。いや、気づかれないようにいじめられていたのだろう。後の話でたぶん聞くだろう。そう思い、片付けをはじめた。

結局片付けには30分かかった。ちょうど3時をまわった頃だった。

「手伝ってくれてありがとう。」

「あぁ、どういたしまして。じゃあ話してくれるか。」

「えぇ、そうね。」

そう言って、橘は少し考えた後、話し始めた。

「始まりは高1の夏だった。同じクラスに沢田さんっていたでしょ。その人がいるグループからいじめを受けた。なんでも沢田さんの好きだった人が私のことを好きらしくて振られたんだって。それでいじめられたの。でも教師やほかの生徒にばれないようにしていたから誰も気づかなかった。それでも別に私はどうでもよかった。何も感じなかったの。でも、高1の冬に事件は起きた。私ね、高校によく来てた猫とよく遊んでたの。とても人懐っこくて可愛い猫だった。もうわかったと思うけど、沢田さんたちはその猫を殺したの。殺された猫を見た瞬間私は何かの糸が切れた。その日から学校に行かなくなった。でもそれを両親はよしとしてくれなかった。両親は二人とも教師でね、学歴がすべてで休むなんてありえないって感じの人たちなの。何があったかすべて話してもだめだった。精神病院に行って鬱病と診断された日には呆れられた。あぁこの人たちは優秀な娘しかいらないんだなと思った。呆れて相手にされないんだったらもう捨ててほしかった。そう思ったときに娘が犯罪者になったらこの人たちはどうするんだろうって思ったの。でも、万引きとか軽いのじゃだめだと思って、人を殺そうと思ったの。誰でもよかった。だからとりあえず人の多い通勤通学時間を狙った。その時に見つけたのがあんただった。あの時間のあの場所にいたうちの学校の生徒はあんただけだった。あの制服を見た瞬間に猫のことが横切ってかっとなってあんたを刺した。それが真相。でも、私は結局怖かったんだ。だから黒いフードを被って周りからは見えないようにしていたんだ。誤って許されることじゃないのは分かってる。でも本当にごめんなさい。」

そう言って橘は土下座をした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る