#62 元妻と今妻の明け透けトーク
リカコさんから早速新企画の方針の説明が始まった。
モニターには画面共有で資料が映し出され、リカコさんの声だけが聞こえてくる。
その説明を聞きながら、先ほどまで映し出されていたリカコさんの姿を思い返していた。
1年前のお別れした当時まで伸びていた髪は今はばっさりカットされてて、俺と結婚した頃の髪型に戻っていた。
しかし、何よりも驚いたのは、肌の色だ。
いつもスキンケアに余念がなく日焼けを気にしていたあのリカコさんが、浅黒く日焼けしており、ノーメイクに見えたし服装もまだ3月だというのに白いTシャツで随分とラフな格好だった。
先ほど映っていた背景が自宅だった様なのでノーメイクでTシャツなのかもしれないが、俺の持つイメージでは、自宅だろうと仕事である以上は身嗜みをキッチリするのがリカコさんだ。
今説明している内容や声は理路整然としてて、以前のバリバリ働いてた頃と変わって無いのに、見た目だけで言えば、あの真っ赤なアルファロメオを乗り回してた女社長のイメージとはかけ離れ、リカコ感が全く無かった。
『フータ、聞いてる?ここまでで質問は無いのかしら?』
「え? ああ、えーっと、ネット展開中心に知名度上げるってことは、ハルカさんの顔出し前提なんです?」
『そこは慎重に検討して判断する必要があるわね。でも私としては、本人次第だと思ってるわ』
「私はあまり顔を出したくないかな。だって33のおばちゃんなんだよ?」
『料理研究家で30代なんてむしろ若手よ? まだまだ若くて可愛らしい童顔なんだし、逆にそのロリ顔に似合わない馬鹿みたいにデカイ胸で勝負するのもアリよ?『ロリ巨乳のお料理研究家』とか話題性あるんじゃないかしら』
ロリ巨乳って言っちゃうんだ。
「あー!リカコちゃんそれセクハラぁ~!助手くんからも何か言ってやってよ!」
「いや、ハルカさんだっていつも仕事中に超エロい下着姿になってそのオバケみたいなおっぱいで俺に迫って来るじゃん。あれこそセクハラですよ」
そう言いながらもコチラの姿が見えてないと思い、横に座るハルカさんの胸に手を伸ばし、服の上から慣れた手つきでタプタプと規格外の重みを確かめていると、画面から映し出されていた資料が消えて、再びリカコさんが映し出された。
『アナタたち・・・仕事中にいつもそんなことしてるの?やる気あるの?』
あ、おっぱいタプタプしてるの、見られた。
「もうフータローったら、あとでゆっくりね」うふふ
『まぁいいわ。兎に角、近いウチにそちらに一度お邪魔するわね。実際に顔合わせて打ち合わせしたいし、久しぶりに顔も見たいわ』
「あ、だったらリリィも」
『ええ、勿論連れて行くわよ』
「おお!リリィに会える!!!」
そこからはビジネス抜きの近況報告などの雑談を続けた。
まず俺から最初に聞いたのは、右膝の具合と日焼けのこと。
沼津に移り住んでからは毎日リリィの散歩も自分で連れて行くようにしてて、歩行にはもう不安は無いそうで、リハビリでやってたプールでの歩行練習の影響でスイミングに通い始めて水泳を始めたらしく、更にそこから何故かサーフィンも始めたらしい。
今では妹のハナコさんも巻き込んで、週末になると二人で夜明け前から伊豆や御前崎まで足を伸ばして波に乗っていると言う。
リカコさんがスポーツする姿も意外だが、日焼けするのを気にせずサーフィンをしてるというのも驚いた。
離婚と生活環境の変化がそれだけリカコさんの変化にも影響を及ぼしているのだろう。 何よりも、以前の様なプライドや自信だけでなく、時には声を出して笑うその表情からは女性らしい柔和さが感じられた。
リカコさんは機嫌が良さそうで俺の質問に何でも答えてくれてたので、もう1つずっと気になっていたことも聞いてみた。
ハルカさんが俺を以前から好きだったことを知って、俺と結婚することに背中を押してたと聞いて驚いたが、もう一人、藤田さんが俺を会社にスカウトすることにも賛同していたと聞いている。
俺がハルカさんと結婚すればココの経営に携わることは分かってただろうに、何故矛盾してると言える二人それぞれ同時にアドバイスや賛同をしてたのか、ずっと気になっていた。
『フータと結婚した時、会社を辞めさせちゃったでしょ?もし続けてたら離婚した時に再就職先探す苦労をかけさせることも無かったから、せめて少しでもフータの今後の可能性の幅を広げるお手伝いがしたかったのよ。 どちらを選ぶかはフータが決めればいい事だから、私は1つでも多く選択肢を用意したかったの。もし二つともダメだったら、ウチのパパにも相談しようと思ってたんだけどね』
「なるほど・・・そういう事だったんですか」
『まぁ、フータならハルさんを選ぶとは思ってたし、私も内心ではそうして欲しいとも思ってたけど、藤田社長にも色々迷惑かけてしまったから
「そこまで考えてたんですか・・・因みに、藤田さんにお断りの連絡入れたら、『プライベートでもパートナーになって欲しかったんです!』って怒られました」
『やっぱり、そうだったのね。そんなことだろうと思ったわ』
「はぁ!?ナニそれ!初めて聞いたよ!ナニその女!」
「無職のプータローなのにね、俺自身、なんでモテてるのか謎なんですよね」
『あら、そんなの決まってるじゃない。フータって私たちみたいな働いてる女性で、特に会社経営者や事業主からしてみたら、これ以上ない程の好条件の好物件だもの。
顔も頭も良くて可愛がりたくなる様な年下なのに、落ち着いててしっかりしてて男としても頼れるし、家事でも身の回りの世話でも何でも文句言わずにしてくれるし、何よりも性生活でも満足させてくれるんだもの。こんな男性ほかには居ないわ』
「そう!そうなの!私も最近しみじみ思うけど、フータローって30代の働く女性の願望とか理想をそのまま具現化させたみたいな存在なの!こんなのドラマとか漫画の中だけの話かと思ってたもん」
「え?つまりそれだけ都合がいい男ってこと? 褒めてくれてるんでしょうけど、あんまり嬉しくないのはなんでだろう・・・」
『最初からそうだったわけじゃないのよ? 私との結婚生活で開花して磨きがかかって、そんなレベルアップしたフータをハルさんが上手く捕まえたってことね』
「リカコちゃん、逃がした魚が大きかったって今更後悔しても遅いわよぉ~?もうフータローは私にメロメロなんだから!」
「俺ってメロメロなのかな・・・」
『うふふ。大丈夫ですよ。私はこうして仕事通してでも交友が持てるだけでも有難いと思ってるし、それに二人の幸せそうな顔見てると、私も凄く嬉しいわ』
あのリカコさんがこんなこと言うなんて、凄く驚きだ。
二人がこれだけ何でも話せるほど、心を許し合ってるということだろうけど、何よりも驚きなのがリカコさんが無条件に優しい。
あのプライドの塊だったリカコさんが、他人の幸せな姿に目を細めて嬉しそうに笑ってるなんて、以前なら有り得なかった。
『それにしてもハルさん、本当に綺麗になったわね。フータのお蔭かしら?』
「そうなの!フータローって私にはめっちゃ厳しくて容赦ないんだよ!お酒も間食もうるさくて、何かあると直ぐに「禁欲生活!」って怒るんだもん!
でも、フータローが厳しくお世話してくれてるお蔭で、ずっとお通じも良くてお肌もモチモチで綺麗になったのよねぇ」
『うふふ、本当に幸せそうね』
久しぶりに3人でお喋りしてると話題は尽きなくて、そのウチお酒も飲み始めて、この日ばかりは飲酒制限のルールも特別に免除して、3人で遅くまでお酒を飲みながらお喋りを続けた。
酔っぱらって超ご機嫌のハルカさんは俺との性生活を面白可笑しく語り、『俺も居るのにリカコさんにソレ話しちゃうのかよ!?』と赤面している俺を見てリカコさんは目頭を押さえて泣く程笑い、俺も反撃しようとハルカさんが俺の前でオナラして「リカコさんなら俺の前でオナラなんて絶対しなかった!」って怒った話を暴露してリカコさんにも怒って貰おうとしたら、『そこで前妻を比較に出すなんてデリカシーないわね』と何故か俺が悪者になって、「いや、夫の前でオナラするほうがデリカシー無いでしょ!」とムキになって怒ると、二人して手を叩いてゲラゲラ笑い、『やっぱりフータってカワイイわね』「うん!ちょーカワイイの!ウチの旦那様!」と何故か二人して今度は俺をカワイイカワイイと揶揄い始めると言うカオスな飲み会となっていた。
離婚する時、リカコさんとは結婚前の先輩後輩としての友達に戻れたらと考え、何とか円満離婚に持って行ったが、あの時の俺の選択は間違い無かった。
リカコさんの笑顔を今こうして見れたのだから、本当に良かった。
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