#61 入籍と新企画への展開
年が明けて1月になると、兼ねてから約束していた入籍を済ませた。
ハルカさんは事業主で名前変わると色々面倒なので、今回も俺の方が入り婿になった。
でも、俺の名前が『東丸フウタロウ』から『乾フウタロウ』に変わっただけで、他には仕事や生活での変化は無い。ぶっちゃけ、2度目だとモロモロの手続きなんかも慣れた物だ。
但し、ちょっと不安になったのが、俺の経歴。特に銀行口座。
最初の結婚で1度苗字が変り、離婚して苗字が戻る同時期に大金を手に入れ、別の女性と結婚してまた苗字が変わっている。
女性なら普通に有り得る様な話だが、男性ではかなり特殊だと思う。
そして、これって資産目的の詐欺とかしてる様に見えなくもないよね?
実際は何も悪いことしてないし、財産分与だってもっと少なくても良かったくらいだし。
でも、例えば銀行とかが俺の口座の名義変更や入金状況を見た時に、普通に怪しむんじゃないのか?
昔、中年女性が年寄りと結婚しては生命保険に入らせて殺すというのを繰り返してた事件があったが、保険金や財産分与や慰謝料目当てで結婚繰り返してる様に見えるんじゃないかと。
と不安になったので、ハルカさんには何が何でも俺よりも長生きして貰わなくてはいけなくなった。
もしハルカさんに何かあって、ハルカさんの資産を俺が相続して再び大金を手にすることにでもなったら、他人からは怪しく見えるだろう。 悪いことしてないから捕まることは無いだろうけど、変な噂が立つことだってありうる。
ということで、入籍を済ませた後、自宅でお祝いの食事をしながらハルカさんに俺の銀行口座の話とか説明して「俺よりも先に死なないでね」とお願いすると、「私が死ぬのが後とか、もう一人になるのはイヤ!」と我儘言い出したので、「子供居れば一人じゃないよ」と言うと漸く納得して俺のお願いを聞き入れてくれて、その日はいつもよりも激しく、そして沢山子作りに励んだ。
◇
3月になり年度末が近づくと、ハルカさんが来期のことで相談したいと持ち掛けて来た。
勿論仕事の話なんだけど、WEB関係や出版物などにも手を広げたいらしく、その為の企画を外部コンサルタントに相談して委託したいと。
ぶっちゃけ、俺が正社員になって以降も会社の収入源は料理教室のみのままで、俺の給料はアルバイトの頃と大差無いままだった。
なので、収入源を増やすことには賛成だったが、出版物とか言っても料理本などの監修がハルカさんに務まるのか疑問を抱かざるを得ない。
不安は尽きないが兎に角一度コンサルタントと会って欲しいと言われ、挨拶を兼ねたWEBでの打合せをすることになった。
その日の通常業務を終えた夕方、事務所のデスクトップのPCにWEBカメラ繋げてビデオ会議を始めたのだが、モニターに相手が写ると、思わず2度見してから驚き過ぎて声を張り上げた。
「はぁ!?なんで!?」
『フータ、久しぶりね。あ、今は専務だったわね。乾専務って呼べばいいかしら? それとも、助手くん?』
隣に座るハルカさんにガバっと掴みかかる勢いで「どうゆうことです!?」と説明を求めると、「リカコちゃん、フリーランスでコンサルタント始めたのよ。お友達価格で請け負ってくれるって言うから」と当たり前の顔して説明してくれた。
二人の話から分かったのだが、今ではお互いを『リカコちゃん』『ハルさん』と呼び合うほどの仲良しで、リカコさんが沼津に移住してからも二人の交流はずっと続いてて、色々と愚痴りあったり相談したりとしてたらしい。
俺、全然気づいてなかった。
ハルカさんは以前から今の事業での収益に限界を感じてて、自分一人だけだったら問題無かったが、入籍を控えた年末頃に将来俺や子供を食べさせて行くのに不安を感じ始め、経営者の先輩としてリカコさんに相談したら、ネットや出版物などの展開をアドバイスしてくれて、リカコさん自身もそれに興味を持ち始めて、それが切っ掛けでフリーランスでのコンサルタント業を思いついたらしい。
それで、その考えを聞いたハルカさんは、外注じゃなくてウチの会社の顧問として誘ったらしいが、リカコさんが俺に遠慮したのと一人でやってみたいと言って誘いは断ったらしく、外注の扱いでウチの会社の新企画に携わることになったそうだ。
因みに、今回打ち合わせ前にハルカさんからは「個人でやってるコンサルタント」としか聞かされてなくて、名前や会社名なども教えて貰って無くて、それもリカコさんが「フータの驚く顔が見たいわ」と言って、二人して事前に俺には教えないようにしてたらしい。
ハルカさんが事業主として、収益を増やすことに積極的になってくれるのは良いよ?
リカコさんが新たな仕事と目標を見つけてくれて、またスタートしてたのも嬉しいよ?
でもさ、今妻と元妻と一緒に仕事って俺の立場はどうなるのよって話だ。
しかも、俺だけ蚊帳の外感ハンパないし。
という専務の嘆きは完全スルーされて、リカコさんによるネットや出版物へ展開する新企画が始動することになった。
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