#60 3つの交換条件
8月のお盆休みに両家の実家への挨拶と年明けに入籍する旨の説明を済ませてから、俺のアパートは引き払って、ハルカさんの自宅兼仕事場での同居生活を開始した。
そして同居生活がスタートすると同時に、料理教室の事業主であるハルカさんから運営に関して3つの重大発表があった。
1つ目は、俺を正社員採用。
2つ目が、俺の専務就任。
既に名刺まで用意されてて、肩書には専務の他に「助手」とも書かれていた。
3つ目が、社名の変更。
これまでの『H&Mクッキング』(ハルカ&マリン)という社名を、『HHMクッキング』に変更したと言う。
HHMの意味は、「ハルカ・フウタロウ・マリン」だそうだ。
言われてからもう一度名刺を確認したら、確かに名刺の社名も変更されていた。
この3つの発表内容に関して事前の相談は一切なく、ハルカさんの独断である。
勝手に正社員にしちゃうのも役員にしちゃうのも、今はまだ内縁とは言え夫婦で自営業であることを考えれば当然のことだろうし、どうせ俺も『今度こそこの仕事でずっとやっていくぞ』とスイッチが入ってたので、3つのことはその内容自体に反対するつもりは無い。
けど、パートナーである俺に相談無く決めて勝手に話を進めていることは看過できない。リカコさんの時に失敗したのには、そういう要因もあった訳だし。
なので、今後は俺はアルバイトでは無く専務で経営者の一人と言うことなので、早速専務としての権限を発動して、お説教と俺からも同等の要求をし、それを了承させた。
俺からの要求1つ目は、飲酒の制限。
ハルカさん、毎日晩酌してて飲みすぎ。
料理研究家のキッチンドランカーとかマジ笑えない。
なので、誕生日とか正月などの特別な日以外は1日缶ビール1本まで。
もし破ったら、1週間禁酒。
2つ目は、俺と一緒にダイエット。
俺がお姫様ダッコ出来ないほどの体重であることは既に把握していたが、最近お腹やお尻の
本人は「幸せ太りだよ」と何故か嬉しそうに言ってたが、せめて俺がダッコ出来るくらいまでは痩せて欲しい。その為に、俺も一緒に体を鍛え直すことにする。
3つ目は、俺の前でゲップやオナラするの禁止。
もしやったら、1週間禁欲。
普段はそんなことはしないのだが、酔っぱらうと俺の前でも平気でゲップやオナラをするのだ、このアラサーバツイチ女は。
ゲップやオナラの原因が常習的なアルコール摂取や偏った食生活にあると考えられるので、上の2つを守ってくれれば自然とゲップやオナラも改善されそうだが、そういう問題では無い。
色白で童顔の可愛らしい顔してるのに、胡坐でお酒飲んでて片尻浮かせてオナラする姿を見せられた時の俺の怒りと失望感が如何ほどの物だったか、筆舌に尽くしがたい。
その時は「恥じらいという物を知れ!リカコさんは俺の前では絶対にオナラもゲップもしなかったぞ!」と怒ると、挑発するように無言でまた片尻を浮かせてオナラで返事をしやがった。
リカコさんは、日本人離れした超絶セクシースタイルに身嗜みも礼儀作法もプロで完璧だったので、同じ女性だからとそれと比べるのは流石に
そういったこともあり、俺としてはハルカさんの健康の為の生活習慣改善と女性らしさの躾が最重要課題だと考えていたので、仕事のことでのモロモロを勝手に決めて始めちゃってたのをコレ幸いと、こちらからも交換条件として3つのルールを強く要求し、グチグチ文句を言ってたが全て飲ませた。
◇
11月になり、ハルカさんとの同居生活を始めて3カ月が経過した。
これまでの主夫の経験と身に着けた知識とスキルを活かして徹底的にハルカさんの食事を管理し、飲酒の制限も守らせている。
ダイエットに関しても、飲酒や食事の制限だけでなく、毎日ジョギングと筋トレを一緒に頑張ってて、たった3カ月でも既に効果は出始め、このまま頑張れば、近いうちにハルカさんは引き締まったボディになり、お姫様ダッコだって出来るだろう。
この生活を始めた頃は、俺がきつく言ってもダダこねて言うことを聞かないことも多かったが、俺はハルカさんの攻略法を見つけた。
そもそもハルカさんが俺を好きになった切っ掛けは、俺の容姿だった。
だから、それを最大限活かすように、優しく抱きしめ顔を寄せて甘く囁くと、すんなり言うこと聞くのを発見し、それ以降はダダをこねる度に、抱き寄せて甘く囁いて言いなりにさせている。
ぶっちゃけ、チョロ過ぎて心配になるくらいだが、今はそのチョロさを利用させて貰っている。
それに、前の結婚生活では志半ばで廃業した主夫の仕事をハルカさんとの生活で思う存分活かすことが出来て、その効果が目に見えて表われるのは嬉しかったし楽しかった。リカコさんとの結婚生活でもそうだったが、どうやら俺はパートナーの世話をするのが好きな性分の様だ。
だがしかし、3つ目のルールに関しては、この3カ月の間に1度俺の前でオナラをしたので、約束通り1週間の禁欲生活を強制執行した。
セックスは勿論、オナニーも禁止だ。
隠し持ってたラブグッズは問答無用で没収し、同居開始して以来いつも一緒に入っていたお風呂も禁欲期間中は別々に入るほど徹底して、それでも諦めずにセックスを誘ってくるのをキッパリ拒否すると、ようやく俺の本気度を理解した様で、それ以来俺の前でオナラもゲップもしなくなった。
ハルカさんは、前夫にセックス拒否されたことがトラウマになっている。
そんなハルカさんがスペランカーのBGMを陽気に口ずさんで誘って来た時に「1週間はエッチしませんからね」と拒否したのだが、拒否された途端下着姿のままスペランカーの死亡音を寂しそうに口ずさむ姿には、流石に俺も心が痛んだ。
しかし、これもハルカさんの為だと心を鬼にして徹底抗戦を続けたら、ハルカさんも流石に反省してくれたので、結果的には良い方向に向かって安心した。
夫婦って、本当はこうやって時には厳しくお互いを高め合って、成長していくものなんだよな。
因みに、1週間後の禁欲生活明けた時は、特別な記念日用に用意してたと言う逆バニーのコスチュームでマツケンサンバを歌いながらマリンちゃんと一緒にサンバ踊ってて、爆乳をこれでもか!と言うほどブルンブルンさせて全身で喜びを表現して、セックスする前から超楽しそうだった。
流石にこの時ばかりは、料理研究家よりも芸人のが向いてるんじゃないかと、弟子名乗るのを止めようか考えざるを得なかったが。
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参考資料
スペランカーのBGM
https://www.youtube.com/watch?v=I1Iw76eZcd4
スペランカーの死亡音
https://www.youtube.com/watch?v=PHD1_MlDLAs
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