#57 結婚に挫折したらまた逆プロポーズされた
セクシーな下着姿のハルカさんに突然の逆プロポーズをされて、驚きで唖然としながらも視線を爆乳からハルカさんの表情へ移した。
何故かドヤ顔だ。
仁王立ちで胸張ってて床に座る俺を見下ろして、なんか偉そうだ。
「私、ずっと思ってたの。フータローくんみたいな旦那様が欲しいって。
フータローくんたちの結婚お披露目パーティーで初めて会った時は『滅茶苦茶どストライク!』って驚いたの。でも残念なことに、フータローくんは結婚したばかりの新郎で、『もう少し早ければ!』って悔しい思いをしたのも、今はもう懐かしい思い出」
なんか、語り出したぞ。
「ここに生徒として来てくれた時はついつい浮かれて、自分がまだまだ女だと言うことを思い出させてくれたの。
その後、アルバイトとして仕事を手伝ってくれるようになってからも、フータローくんと夫婦だったらどんなに良かっただろうって、ずっと思ってた。
一緒に仕事してても、お酒飲んでお喋りしてても、自分が自分で居られる人っていうのかな?取り繕うことなく、怒る時も笑う時も素のままの自分で居られる人。前の旦那とはそういうので凄く苦労したから、フータローくんって私にとっては外見だけじゃなく中身も本当に理想の男性だったの」
そう言いながらハルカさんはゆっくりと俺に近寄り、隣に腰を降ろして話を続けた。
「でも私は、どんなに好きでも不倫だけは絶対にしないって決めてた。フータローくんも知ってる通り、元夫の浮気が原因で辛い結婚生活を経験してるからね。
だから、大好きなフータローくんと毎日の様に沢山の時間を一緒に過ごすことが出来ても、ずっと自分の気持ちを押さえてた。自分で自分の気持ちを誤魔化して、フータローくんにもリカコさんにも自分の想いを悟られない様にしてたの。
二人はいつも仲良さそうにラブラブだったし、フータローくんのことは目の保養にして、私はこのまま独身でも良いかなって思う様にしてたんだよね」
距離感近くて暑苦しい人だと思ってたけど、そんな思いを秘めてたのかよ。
まぁ、俺も既婚者のくせに、ハルカさんのことは同じ様に初対面で容姿や雰囲気が理想の女性だと感じて印象に残ってたくらいだし、何よりも、この爆乳をずっと目の保養にしてたから、俺だって人の事は言えないか。
「けど、浮気されたフータローくんには悪いけど、私にもチャンスが回って来たの!
だから私は沢山頑張ったんだよ。勿論、リカコさんも大切な友達だから、フータローくんだけを贔屓にはしなかったけど、フータローくんが離婚した後のことを考えて、私の存在を意識して貰える様に沢山頑張ったんだよ?」
「え?親身になってくれてたのは、離婚した俺と結婚する為だったの?」
「端的に言うと、そういうことになっちゃうけど、でも、30過ぎのバツイチの女が好きな男を捕まえようと思ったら、必死になるのも仕方ないでしょ?
私だって女だからね、女はしたたかな生き物なんだよ。男の為なら平気で友達や家族を裏切る様な人なんてゴロゴロ居るんだから。私なんて筋通してる分、全然マシだよ?」
「筋、通してる?」
「うん。ちゃんと離婚するの待ってたし、リカコさんにだってこの事は話してあるの。むしろ背中押して貰ったくらいだし」
「はぁ?背中押してた?どうゆうことです?」
「リカコさんには私がフータローくんを好きな事、ずっと前からバレてたみたいでね、二人が離婚した後に『本当はフータのこと好きなんでしょ?』ってズバリ言われたの。 女同士だとどうしてもわかっちゃうんだろうね。それで誤魔化せないと思ったから正直に白状したの。初対面で会った時からどストライクで、ずっと好きだったって」
「マジかよ・・・」
「そしたらね、リカコさんが『流石フータね。結婚相手に選んだ私の目に狂いは無かったってことね』って、怒るどころか納得してた。
それで、リカコさんが引っ越しする前の最後に会った時にもね、『フータの事、宜しく頼みます』って頭下げられて『私じゃフータを幸せに出来なかったから、フータのことは任せます』って託されたの」
「リカコさんがそんなことを」
「フータローくん、君のことは私が幸せにしてあげる。 だから、私のことをフータローくんが幸せにして」
ハルカさんはそう言って、座ったまま両手を広げて、俺が懐に飛び込むのを待つウェルカムのポーズを取った。
今、ハルカさんから聞かされた話の全てが突然過ぎて、思考が追い付かない。
唯一判断つくのは、俺もハルカさんも独身で、仕事中とは言え、このままキスしようがセックスしようが、誰かに迷惑かけることも咎められることもない。
ふと、リカコさんとの別れの間際に言われた言葉を思い出した。
『これからは自分の心に従いなさい』
考えてばかり、我慢してばかりじゃなく、素直になれという意味だと解釈していた。
俺は3人兄弟の長男で、子供の頃から一歩引いて冷静に考えるクセが身に着いてたし、家族の中では常に我慢を強いられるポジションだった。
お兄ちゃんなんだからと二言目には言われ、弟たちの面倒だって俺が見ることが多かった。
俺の人格形成に大きく影響した子供時代の経験から、そういう習慣が今でも染み付いている自覚はある。
リカコさんはこのことを言っていたのだろう。
だから、『たまには我慢せずに自分のやりたいようにやりなさい』と言ってくれたんだ。
未だに両手を広げたまま、俺が抱き付くまで意地でも止めるつもりが無い意思表示を続けるハルカさんを、見つめ返した。
出会った時から多少は年を重ねたとは言え、今でも30代には見えないほど若く見えるし、目はパチクリとしてて色白で柔らかい笑顔が似合う俺好みのカワイイ顔だし、なんと言ってもこの爆乳は、出会った時から他を圧倒して寄せ付けない程のアピールを常に俺に対してし続けてきた。
それが今、目の前でプルンプルンさせながら「好きにしていいよ」と向こうからやってきた。
そして人間性についても、俺はこの人のことを人として信頼してるし、年上として頼りにもしてるし、沢山の恩があり、友達として今一番親近感を感じている人だ。
プロポーズを断る理由は、探せばきっといくらでも見つけられるだろう。
でも今は、俺の心がそれを拒否している。
リカコさん。
俺は、自分の心に従うことにします。
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