#22 最高のパートナー


 貰ったタグホイヤーを汚したりしないように、箱のまま大事にしまい、改めて食事を始めた。


 リカコさんはどの料理も「凄く美味しいわ」と褒めてくれたけど、食べる量はセーブしてて、代わりにシャンパンを何杯もお代わりして、俺が何か言う前に、「後で沢山エッチなことするんだもん。今食べ過ぎたら動けなくなるでしょ?お料理は明日ゆっくり頂くからね」と言い、俺にも「フータも食べ過ぎて、後で動けないとか言わないでよ?今夜は沢山頑張って貰うんだからね」と忠告してきた。


 結婚して以来、お互い性欲旺盛で新婚らしく夫婦生活もかなり多い方だとは思うけど、今までリカコさんからこんなこと(エッチする前は食べ過ぎないで)は言われたことが無く、それだけに、どれだけ今夜やる気満々で激しいセックスを楽しみにしてるかが伺えた。


 自分で作ったローストビーフにかぶり付いて堪能しながら、リカコさんが本気になった時の乱れた痴態を思い浮かべて股間が固くなるのを感じていると、ふと聞いてみたいことが頭に浮かんで来たので、聞いてみた。



「一昨日したばかりだし、最低でも週3で、多いときなんて週5はしてますけど、そんなに性欲旺盛なのに結婚するまではどうしてたんです?ここ数年カレシとか居なかったですよね? それに、結婚するまではリカコさんがエッチが好きなイメージは全然無かったんですよね。学生の頃なんて、シモネタとか絶対に言わないイメージだったし」


「うーん、そうね。 確かに学生時代は普通だったかしら。週に1回くらいのペースだったし、しなくても平気だったかな。それで4年の時にカレシと別れてからはしばらく作らなくて、2年位してから出来たカレシの時も同じ感じね。そのカレシとも別れて、それが切っ掛けで怒りのパワーがみなぎって会社辞めて起業して、忙しくてカレシ作らなかったから、フータと結婚するまでずっとセックスもしてなかったわね」


「でも、まだまだ若いし美人社長とか凄くモテそうだけど、今まで口説かれた回数とか凄いんじゃないです?口説かれて一晩だけっていうのも無いんですか?」


「ええ、無いわよ。簡単に誘いに乗る様な安い女に見られたくなかったからね」


「なるほど。 リカコさんってテクニック凄いし、男のツボとか熟知してるから、もっと経験豊富だと思ってたけど、意外とそうでも無いんですね」


「それは・・・勉強したからよ。フータのお料理と一緒ね。フータだってお料理上手になりたいって料理教室に通って更に上達してるでしょ?私だって、学生の頃に勉強して自分なりに研究したんだもん」


「学生の頃は、しなくても平気だって言ってたのに?」


「だからよ。さっさと終わらせるために男の弱点を色々研究したのよ。 でもあの頃、その研究せいで『お前といると疲れる』って浮気されちゃったけどね」


 おうふ。

 当時のカレシは俺とも仲が良かった先輩で、二股してリカコさんと別れたけど、そんな裏事情があったとは。どんな研究してたんだろ・・・。


「じゃあ、最近になって性欲旺盛になったんです?俺とするようになってからとか?」


「多分年齢的なものとか仕事のこととか色々重なったからじゃないかな」


「ほうほう」


「起業してからずっとそれどころじゃなかったけど、お得意様とかいくつか増えて事業が軌道に乗って社員も少しづつ増えて今の社屋に引っ越して、『ようやくココまで来れた』って思えたのが1年くらい前かしら」


「ええ、あの頃の苦労してた話はリアルタイムで俺も聞いてたんで、よく覚えてます。すげぇなぁ、リカコさん一人でよくそんなこと出来るよなぁって、ずっと感心してましたから」


「ふふふ、そうね、大変だったわね。 でもね、ようやくココまで来れたって思ったのと同時に気が抜けちゃったのかな。『このまま仕事だけなのは寂しいな』って思っちゃったのよね。そしたらね、しばらくして欲求不満になってきたの。30目前っていう年齢的な物もあるけど、『一人で寂しい』って気持ちとか、相手が居ないから発散できないっていう無い物ねだりな気持ちとか、そういうのがいくつも重なったんだろうね。男性なら風俗で発散できるでしょうけど、女性はそんなもの無いからね」


 つまり、それでディルド君たちに頼ったけど、それでも欲求不満が解消されることは無くて、30手前でセックスする為のカレシ作るよりも結婚相手を探すこととなり、俺に出番が回ってきたということか。


「それで俺が標的になったって訳ですね。だから結婚の話してた時も、セックスしたい欲求を前面に出してたんですか」


「そうよ。一番気心知れてるし男の子だったし、私のそういう欲求不満とか話してもちゃんと聞いてくれると思ったのよ」


 ドン引きはしてましたけどね。


「それに、それまで後輩っていうか弟とか兄弟みたいな感覚だったから全然意識してなかったけど、顔も頭も悪く無くて仕事出来て気が利くし『フータで良くない?』って気づいたら、フータ程の優良物件ってなかなか居ないよね?コレ逃したら絶対ダメだよね!って思い始めて、もうフータしか考えられなくなってたからね。もしフータに断られてたら、きっと30過ぎても独身のままね」


「なんというか、俺にしたら、嬉しい様な悲しい様な、素直に喜べない言葉ですね」


「うふふ。 でも、今こうして考えても、フータを選んだ私の目に狂いは無かったって自信を持って言えるわよ。

 今の私にとって、フータは最高のパートナーよ」


 リカコさんは膝にリリィを乗せたまま右手にシャンパングラスを持って、蝋燭の明かりの効果なのか、映画女優のような自信と余裕を含んだ表情を浮かべて話してくれた。



 相変わらず、そこに愛があるのか疑わしい言葉だけど、『最高のパートナー』と言って貰えたのは素直に嬉しい。


 俺が会社辞めてまで頑張って来た主夫の仕事を、一番認めて欲しかったリカコさんがこれ以上無いほど認めてくれてる訳だからね。

 なにせ会社勤め時代は、何か目立つ実績を作れば脚を引っ張ろうとする輩が沸いて来たり、上司だって、部下が結果だしてもそれが当たり前だとでも言いたげな顔してホメてなんてくれなかったからな。


 リカコさんの会社の藤田さんが、リカコさんのことを『人を乗せたり使うのが上手』と教えてくれたけど、俺に対してもそういうことかもしれない。でも会社勤め時代にそういう上司に恵まれなかった俺としては、俺にとってもリカコさんは『最高のパートナー』と言えるだろうな。




 普段よりも少しだけ突っ込んだ話題で語り合いつつ、ひと通り食事が終わるとリカコさんがソファーに移動したので、少しイチャイチャしたかった俺も隣に腰を降ろした。

 すると、リカコさんが早速「片付けは明日でも良いでしょ?」と言いながら俺に体を預ける様にしな垂れてきたので俺も抱き寄せるように腰に手を回すと、俺の首に両手を回してウルウルとさせた瞳で俺を見つめたまま1度キスして、「このままダッコして」と囁いたので、そのままお姫様ダッコで持ち上げ、寝室に移動した。



 リリィも俺達の周りをウロウロして遊んで欲しそうにしてたけど、心の中で『今夜ばかりはスマン』と謝り、リリィに構うことなく、ベッドに横たえたリカコさんのドレスをゆっくり脱がせ、寝てても形が崩れないほど張りのある美巨乳にムシャぶり付いた。







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