#16 新しい家族
結婚お披露目パーティーも無事に終わり、そして新居での二人の生活も落ち着いてくると、またリカコさんが難題を突き付けて来た。
「そろそろワンちゃんを飼うわよ。ココで飼うから準備しておいて頂戴ね」
「犬飼うって、また急に・・・犬種は何です?」
「ヨークシャーテリアとかマルチーズを考えてるんだけど。 可愛い子がいいでしょ?」
リカコさんはそう言って、スマホで犬の画像を見せてきた。
またよりにもよって高そうな犬を欲しがって。
「犬となると毎日散歩が必要だし、室内にトイレだって必要だし、臭いの対策だって必要だし、コードとかコンセントとかの対策もしないとだし、そういうの分かってます?」
「分かってるわよ。だからフータにお願いしてるんじゃない」
「飼う前から丸投げする気満々かよ!?」
「ねぇいいでしょ?私もちゃんと面倒見るから、ね?」
子犬拾って来た小学生みたいなこと言い出したな。
こういうのって、面倒見るのは最初だけで、結局お母さんが毎日散歩に連れて行くハメになるんだよな。
勿論ウチの場合は、俺ってことになる。
「うーん・・・」
「私ね、子作りする前にワンちゃん飼って、ワンちゃんと一緒に子育てしたいの。子供とワンちゃんが兄弟みたいに仲良く育っていくのを見たいのよね」
「それって、犬の世話も子供の世話も同時に来るから、ただ俺の負担がダブルに増えるだけなんじゃ?」
「それでもフータなら大丈夫でしょ? ね!お願い!」
「うーん・・・」
「お願いお願い!いいでしょ、フ~タ~」
リカコさんは俺の腕を両手で掴むと、ブンブン振りながら子供の様に甘えてきた。
「直ぐには決められないので、しばらく考えさせて下さい」
「そう、しょうがないわね」
その日の夜、家事を終えて寝ようとすると、寝室ではリカコさんがワインレッドのブラとTバックにセパレートの網タイツとガーターベルトのセットと気合の入ったセクシーランジェリー姿に、これから寝るハズなのにバッチリメイクで待ち構えており、有無も言わせて貰えず事を始めると、焦らしに焦らされ「ワンちゃん飼ってもいいって言うまで、逝かせないわよ」と脅され、俺は涙目になりながら犬を飼うことを了承させられた。
事を終えて賢者タイムになってから「こういうやり方は反則じゃないですかね!」と訴えたけど、豊満な胸を俺に押し当て「だってぇ、本当にワンちゃん飼いたいんだもん」と甘えた声と蠱惑的な表情で見つめながらイチモツを握られ、俺は抵抗するのを諦めた。
黙って子犬連れて帰ってくるよりは、一応は俺の了解を得ようとしてるだけ、マシか。やり方が卑怯だけど。
結局、犬を飼うことを了承した俺は、イチモツを握られたままいくつかの条件を出した。
・最低でも週に1回はリカコさんも犬の散歩に行くこと。
サボったら罰ゲーム。
・犬種は可愛いだけで選ばない。
性格や環境的に飼いやすい犬種を選ぶ。
・今後は夫婦の間で色仕掛けや脅し紛いの交渉は禁止。
・たまには夫婦水入らず、エッチ以外にも夫婦らしい時間を作ること。
俺が出した条件全てをリカコさんは「オッケーよ!早速明日ペットショップ行くわよ!」と言ってご機嫌になって、本日の第二戦が始まったのだが、ご機嫌なリカコさんはサービス満点の奉仕をしてくれて、一戦目の様に焦らされることなく、いっぱい気持ち良くしれくれた。
◇
犬種はペットショップで店員さんに色々相談した結果、コーギーになった。 寒暖の変化に強くて、体格が余り大きくならず、メスなら比較的落ち着いててあまり吠えたりしないとのこと。
展示されてるコーギーの子犬を被り付く様に見つめながら説明を聞いていたリカコさんが「この子にするわ!」といつものように即決して、室内で飼うのに色々準備が必要なので、1週間後に引き取ることとなった。
室内で不都合無く暮らせる様にと、犬をお迎えする前に家事の傍ら部屋の模様替えや配線の整理をし直したり、ホームセンターなどで必要な物を買い揃えたりと準備を進めた。
特に大変だったのが買い出しで、首輪にリード、移動用のキャリーケース、クッションタイプのベッド、犬用トイレにトイレ用の消臭剤、犬用のタオルやシャンプー、好みが分からないからドッグフードは何種類も用意、他にも脱臭機をリビング用と寝室用に2台購入し、費用もそれなりに掛かっている。
それと、名前は『リリィ』に決まった。
勿論決めたのはリカコさん。
リリーでは無くてリリィで、小さい『ィ』に拘りがあるそうだ。
リカコさん曰く、「こっちの方が可愛いでしょ?」とのことだが、正直言って俺には違いが判らんかった。
そして、お迎えする当日。
リカコさんのアルファロメオでペットショップへ迎えに行き、無事にリリィは町田家の新しい家族となった。
ペットショップから自宅に帰る時、リカコさんが「自分でダッコして帰りたい」というので、帰りは俺が運転してリカコさんは後部座席でリリィをダッコしてたのだけど、走る車の中が慣れなくて怖かったのか、リリィがリカコさんの膝の上でお漏らした。
しかし、リリィをダッコしてて超ご機嫌なリカコさんは慌てながらも怒ることなく、服が汚れた事よりも「だいじょ~ぶですよぉ~怖くないでしゅからね~もうすぐお家につきますからね~」と安心させようと猫撫で声でリリィをあやしていた。
そんな姿を見て、『リカコさんにも母性本能はあるんだな。子供が生まれたらこんな感じなのかな』と俺も頬が緩んだ。
◇
リリィが家族になってから俺の仕事は増えたけど、一人で黙々と家事をこなしてた頃に比べて賑やかになったし、最初は反対してた俺もなんだかんだと楽しく過ごしている。
リリィは最初の1日目は怯えてたが、一晩一緒に過ごすと直ぐに慣れたようで、家では吠えることも無く大人しいし、子犬らしくつぶらな瞳が可愛くて、家で俺が掃除や洗濯物をしてるときは興味ありげにトテトテとあとを付いて周るし、料理してる時などは脚に纏わりついて来るし、昼寝する時は俺の懐に入ってくるし、散歩やご飯の時間になると「早く早く!」と言いたげに主張してくるし、気付くと俺も家事しながらリリィ相手に話しかけることも多くなってるしで、俺も直ぐに大事な家族の一員という認識になっていた。
因みに、リリィにとっては俺の方が一緒にいる時間が圧倒的に長いせいか、リカコさんが仕事から帰って来ると一応は興味を示して近寄るけど、頭を撫でられて満足すると、直ぐに俺の所に戻って来て俺に甘えるので、リリィに余り構って貰えないリカコさんは焼き餅でも焼いてるのか、ムキになって構って貰おうと「リリィちゃんおいで~パパよりもママのが楽しいでしゅよぉ~」としつこくリリィを追いかけまわしたりする。
夫である俺には普段はそんな態度を見せないので、軽く嫉妬心が湧くけど、このリリィを巡る三角関係ってリリィに慕われている時点で俺が完全優位の立ち位置なので、ぶっちゃけ優越感も感じてもいる。
子供が居る家庭のお父さんが、仕事から帰っても子供に相手にしてもらえずに寂しい気持ちになったりするのと今のリカコさんは、きっと同じなんだろうな。
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