#15 主役の新婦と脇役の新郎
結婚お披露目パーティーの当日。
日中にリカコさんは美容院へ行き、俺もついでに散髪して、夕方には自宅でメイクや着替えを終えてタクシーで会場であるカサレリアへ向かうことになっていた。
美容院から戻るとリカコさんは直ぐに寝室に篭ってメイクを始めたので、手すきの俺は洗濯物などしていると、リカコさんからお呼びが掛かった。
リカコさんは下着姿で鏡台に向かって座り、丁度メイクを終えて衣装を着ようとしているところだった。
リカコさんのパーティー用の衣装を選びに行った時、最初はドレスにしようかという話もあったが、仕事関係の人も多く呼んでいるので結局スーツを選び、せめて新婦らしくと白のタイトスーツを新調していた。
そして下も上下セットの白い下着で、本来なら清潔感と落ち着きのある新婦らしい装いになるはずなのだが、セパレートタイプの黒のストッキングとガーターベルトのセットと日本人離れしたスタイルがギャップになってて、下着姿も見ている俺としては、清潔感よりもエロくしか見えなかった。
因みに俺はグレーのスーツだが、俺のYシャツとリカコさんのブラウスを同じ薄い水色に統一してて、ちょっぴりペア感を演出している。
衣装を着るのを手伝いながら今日の事で話したのだが、リカコさんからは「交際期間ゼロで入籍だと色々邪推されそうだから3カ月くらいの交際期間にして頂戴。 あと人前では私のことは”さん付け”しないで『リカコ』って呼んでね」と言われた。
邪推されそうというのは俺も同意見だ。
呼び捨てにして欲しいのは、夫婦仲のアピールかな?
「リカコ、ですか? 学生の頃からずっと”さん付け”だったから、違和感ありますね」
「直ぐに慣れるわよ」
「まぁ了解っす、リカコ」
「あと、仕事関係の人たちにフータのこと紹介するから、フラフラどっかに行ったりしないでね」
「了解っす、リカコ」
「それと、あまりハメ外して騒いだりしないでね。半分は会社のパーティーみたいなものだから、お仕事モードでお願いね」
「了解っす、リカコ」
「なんだか、リカコリカコ言われると、イラっとするわね」
自分で直ぐに慣れるって言ってたのに。
「そうですか? ラブラブ夫婦に見えますよ、リカコ」
「むぅ、まぁいいわ。兎に角、今日はよろしくね」
「了解っす、リカコ」
「アナタ、わざとでしょ」
「そんなことないですよ、リカコ」
ブラウスを着てから立ち上がり、スカートを履き終えて俺の方へ向き直すと、いつもの様に両手を広げたのでハグで応じると、チュと音を立てる様に軽くキスをしてから体を離したのでスーツの上着を着せてあげて、ピンクのバラを模したコサージュを付けてから部屋を出た。
会場であるカサレリアに到着すると、今日の手伝いをしてくれる藤田さんや他のスタッフさんは既に来ており、受付担当の子も既にスタンバってくれていた。
スタッフさん達はみなさん紺のタイトスーツやパンツスタイルで、傍から見ると白いスーツ姿のリカコさんだけ際立ってて、ひと目で今日の主役だというのが分った。
開場まで30分程あるので、隅に並べたイスに座ってスタッフさんたちと最終確認をしていると、徐々にゲストが来場し始め、直ぐにリカコさんはその対応で忙しくなった。
俺の方もぼちぼち友人が来ていたので、「よぉ、久しぶり」と軽く挨拶交わしつつ、リカコさんとは離れたところで雑談しながら開始までの時間を過ごした。
開始時間になると招待した約50名の内30名程集まってて、遅れて来る予定の人も多く居たので開始することになり、藤田さんの進行でパーティーが始まった。
藤田さんの司会は見た目だけじゃなく喋りも女子アナみたいでプロっぽく、後で聞いたら以前結婚披露宴などの司会の仕事をしていたことがあるそうだ。
因みに、藤田さんは29歳で俺やリカコさんより歳上でバツイチらしい。
何となくこの人も、『家庭よりも仕事派の女性』なのか、と思った。
だから、リカコさんとは気が合うのかな。
パーティーが始まると、まず最初にリカコさんと俺の紹介があり、入籍したことを報告すると会場中から拍手やお祝いの歓声が上がり、一気に会場のテンションが上がった。
俺は元営業職なのでコミュ力は有る方だと自負しているが、大勢の人前に出るのは全く慣れて無いので、会場中の人から注目が集まるとドキドキが凄くて緊張MAXになった。
しかし隣に立つリカコさんを横目で見ると、堂々として全く緊張しておらず、微笑みを浮かべながら軽く手を振っていた。
やっぱり普段から人前に立つ仕事してるから、全然平気なんだろうな。
その後、リカコさんからの挨拶が始まると、会場内では乾杯用のシャンパンが配られ、ゲストの方(リカコさんの会社とお付き合いのある銀行関係者)の音頭で乾杯して、あとはフリーの歓談タイムとなった。
リカコさんに連れられてあっちこっちと挨拶回りをしていると、どの人も挨拶後は俺には興味無さげでリカコさんとばかり会話してて、特に男性客はそれが顕著で、内心面白く無かったけど俺は会話の邪魔をしないように営業スマイルを貼り付けたまま横で突っ立っているだけに終始した。
まぁ、リカコさんの仕事上のお付き合いで呼んでる方々だし、俺は会社辞めてるので仕事の事とか興味持たれて聞かれても困るので、返って良かったんだけどね。
それに、結構な数の人を紹介されて名前を聞いたけど、次から次へとという状況でぶっちゃけほとんど覚えていない。
多分、後日どこかで顔を会わせても、名前は思い出せないだろうな。
唯一、以前リカコさんが紹介してくれると言ってた料理教室経営してる乾さんって方だけは印象に残ってた。
料理教室に通うことになれば、今後お世話になる方というのがあったし、ぶっしゃけ容姿が俺の好みのタイプの女性だったから。
それにしても、仕事モードで対応しているリカコさんの会話を横で聞いていると、リカコさんの顔(この場合は容姿では無くて、コネクション等)の影響力の大きさが見て取れた。小さいとは言え会社の創業者で現役社長だから、会社辞めて主夫してる俺と違うのは当たり前で、ゲストの方々も俺が主夫だとは知らなくても、その違いを何となく感じ取ってるから興味持たれないんだろうな。
一通りリカコさんの仕事の関係者への挨拶回りが終わり解放されると、休憩したくて隅のイスに座って一人でビールを飲み始めた。
すると、直ぐに元同僚の朝倉や他の同期の連中が集まって来て、挨拶もそこそこに「お前の嫁さんすげぇ美人じゃん!」とか「美人で社長で逆玉とかどんな裏技使ったんだよ!」と一斉に騒ぎ出した。
あーだこーだと久しぶりに同期の連中と話していると、俺が辞めたあとの会社の話を聞かせてくれた。
俺が携わっていた新規プロジェクトは、結局ダメだったらしい。
複数メーカーが競合してたのだが結局他社に取られ、そこが中小のメーカーだったらしくて『なにやってんだ!』と役員クラスからのお叱りがあったらしい。
因みに、営業一課の通常業務は俺の退職直後は少し大変だったらしいが、直ぐに立て直したとのことだった。
腐っても大手企業だからな。優秀な人材はいくらでもいるし、若手一人抜けたくらいどうってこと無いのは当たり前だ。
それと、朝倉が元カノの最新情報を聞かせてくれようとしたけど、断った。
流石に自分の結婚お披露目パーティーの場で、元カノのことを興味あるような態度は見せたくなかったし、実際に興味も無かった。
その後は学生時代の友達や元同期の連中にもリカコさんを紹介して、夫婦仲が良好なことをアピールしつつパーティーは滞りなく終わり、手伝ってくれたスタッフさんやカサレリアのマスターたちにお礼を言って、少し早めに帰宅した。
俺はそれほど疲れていなかったけど、結構飲んでて酔いが回っていた。
帰宅して直ぐに冷たいお茶を二人分用意していると、リカコさんは流石に疲れた様子でリビングのソファーにスーツ姿のままぐでぇ~と脱力してしまったので、「シワになりますよ」と言いながらスーツとブラウスを脱がせて下着姿にさせて「シャワーだけでも浴びたら」と声を掛けると、「今日はシャワーいらない。ダッコして」と珍しく甘えてきた。
酔いも回ってたしセクシーな下着姿にムラムラしてたので、お望み通りお姫様ダッコで持ち上げると速攻で寝室のベッドに運び、俺も服を脱ぎ捨て、下着姿のままのリカコさんを激しく貪り尽くし、1戦終えると二人ともそのまま寝落ちした。
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