#11 入籍と新婚初夜



 リカコさんの部屋の片付けを終えて数日後、兼ねてから言われていた通り、吉日を選んでリカコさんの仕事の合間に二人で役所へ行き、婚姻届を提出した。

 これで晴れてリカコさんの夫となり、名前も『町田フウタロウ』となった。


 役所で手続きを終えて帰宅する為にリカコさんの車に乗り込むと、運転席に座った俺がエンジンを掛ける前に、リカコさんから「私の方で用意しておいたから」と言って、有名ブランドの小さな紙袋を手渡された。


 中を見ると、コンパクトなサイズの箱が入ってて、箱の中にはアクセサリー用のケースがあって、更にそれを開けるとペアの結婚指輪が入っていた。


 役所の窓口で婚姻届を提出した時は入籍したという実感は薄かったが、流石にこの時はじんわりと感じる物があった。



「時間が無かったからデザインは私が決めさせて貰ったけど、どうかな?」


 2つある内の1つを摘まむ様に取って、掲げるようにして見てみた。


 光沢のあるプラチナで、装飾などは無くシンプルなデザインに内側には『Hutaro.M』と俺の新しい名前が彫られていた。


「デザインは、こういうシンプルなのは好きですよ。

 結婚指輪を手にすると、流石に結婚の実感が湧きますね。ありがとうございます」


「今、付けてくれる?」


「了解っす」


 リカコさんが左手を俺に差し出したので、左手で添える様にして右手で持っていた俺の名前入りのリングを薬指に通すと、今度はリカコさんがもう1つのリングをケースから取ったので、俺も同じように左手を差し出して、リカコさんの名前の入ったリングを薬指に通して貰った。


 リングを通した左手を掲げる様にして「おぉ」と感動の声を漏らしながら眺めていると、「フータ?」と名前を呼ばれ、助手席に座るリカコさんの方へ振り向いたと同時に抱き着かれ、「これからもよろしくね」と言って、キスされた。


 しばらく抱き合ったまま貪る様にキスを続けていると、リカコさんのスマホが鳴ったのでキスを止めて体を離すと、仕事の電話だったらしく通話を始めたので、車のエンジンを掛けて発車させた。



 リカコさんが仕事に戻るので、その後は俺の自宅で俺だけ降りて一旦別れて、実家や学生時代の友達に入籍したことを報告したりしながら夕食の準備をして、夜に再びリカコさんが仕事を終えて俺の自宅にやってきてから、リカコさんが買って来たシャンパンで祝杯を挙げた。


 俺の方でも入籍のお祝いにと、ささやかながらも手料理でお祝いしようと、ビーフシチューやシーフードサラダなどを用意していて、二人で食事をしながら今後のことを色々と話し合った。



 俺からは、しばらくは働きには出ずに新居への引っ越しや片付け、そして新生活に必要な家電や家具に調理器具などを揃える為に買い出しなどしておきたいことを話した。

 そして、家事を担う以上は、今よりももっと料理のスキルを上げて、リカコさんに毎日手料理を食べて貰いたいと話し、落ち着いたら料理教室にでも通ってみようかと考えていることも話した。


 俺の話を聞いたリカコさんからは、「家電も家具もフータに任せるわ。料理教室は、仕事を通じて知り合った方なんだけど、料理教室を経営してる人がいるから、聞いてみようか?」と言ってくれて、買い物に関しては「買い物や新生活の準備費用は、この中のお金を使って頂戴」と言って家計用の通帳とカードを渡された。



 そしてリカコさんからは、「おウチの事は全て任せるけど、あまり遊びまわったりしないでね?無職じゃなくて主夫なんだから、基本的にはおウチに居て欲しいし、仕事から帰ったら留守で誰も居ないとかだと、折角結婚したのに寂しいでしょ?」とお願いされた。


 しばらくゆっくりしたいとは言ったけど、遊びまわる気はサラサラ無いし、結婚を決めてから俺なりに色々考えてて、新居での結婚生活が始まれば、毎朝先に起きてリカコさんを仕事へ送り出し、夜は疲れたリカコさんを温かい食事で労いたいと考えていたので、「主夫になったからって遊びまわるつもりは無いですよ。キチンとリカコさんのサポートが出来る様に家の事は仕事だと思って頑張るつもりです」と意気込みを話すと、「期待してる。うふふ」とシャンパングラスを片手に、満足そうな笑みを浮かべていた。



 その他にも、しばらくは避妊して妊活はリカコさんが29を過ぎたら始めることや、今後は週末くらいはオフに出来る様に会社の業務を他のスタッフにも少しづつ任せる様に進めている事や、講師として現場に立つ仕事も減らすことで衣装などの購入費も抑えて、これからは贅沢せずに貯蓄に回すこと等も話し合い、二人で結婚後のビジョンを具体的な形で共有することが出来た。



 そして、この日は夫婦になって初めての夜。

 俺たちは結婚式はしないので、この日が初夜と言える。


 食事して少し酔いが回ってイチャイチャした後、お姫様ダッコでベッドまでリカコさんを運び、そこからは本能の赴くまま激しく貪り合い、リカコさんから「もう無理、ちょっと休ませて。こんなに激しいの初めて」と言わせることに成功した俺は、嬉しくて調子に乗って休ませること無く更に激しく貪り続けてしまい、激しく夜の運動をしたせいでベッドが壊れてしまうわ、リカコさんからは「激しくすれば良いってもんじゃないでしょ!」と怒られるわ、二人してヘトヘトでシャワーも浴びずに寝落ちして翌朝二人とも寝坊するわで、色々と思い出深い新婚初夜となった。










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る