#10 結婚を前にアピール




 新居への引っ越しを前に、リカコさんの部屋で衣装関係を中心に棚卸しを始めて三日目。

 昨日も一昨日も、泊まりだった。


 引っ越しまでまだ時間的には余裕があったけど、リカコさんから『なるべく早めにお願い』と言われていたので、泊まり込みで作業をしている。

 というのは建前で、『今夜も泊まって作業します』とリカコさんに伝えると仕事早めに切り上げて帰ってきて、一緒に食事してお酒飲んで、一緒のベッドで熱い夜を過ごせるので、それが目的で泊まり込みで作業をしている。


 なんだかんだ言っても付き合い始めたばかりだし、イチャイチャらぶらぶしたいじゃん?

 それに、リカコさんから『おウチに帰ったら「お帰りなさい」って言って貰える生活、思ってた以上に幸福感がハンパないわ』とか、セックスした後に『フータを選んだ私の目に狂いは無かったわ』とか『今夜もとってもよかった♡』とか言われると嬉しくて、『もっと喜んで欲しい』とか『もっとホメられたい』って思っちゃうんだよね。



 因みに、初日にラブグッズのリストをリカコさんに提出したら、「どこでコレを!?」と顔真っ赤にして怒ってるのか恥ずかしがってるのかよく分からない表情でアタフタしてたけど、俺が冷静に「その辺の袋に入れたまま放置されてましたよ。それでどうします?新居に持ってきます?処分しときます?」と選択を迫ると、真っ赤な顔のまま俯いて「処分して頂戴・・・」と答えてくれた。


 リカコさんのそんな表情や態度は非常に珍しく、凄く可愛かったので、「ディルド君とお別れするなら、最後に味見しとかなくて大丈夫です?」と揶揄うと、真っ赤な顔のまま「もう間に合ってます!フータが居るからもう必要ないの!」と怒って、半透明のディルド君でポカポカ叩かれたので、後でディルド君の代わりにベッドの上でお役目を果たして、翌日電マ以外は全部処分しといた。

 電マだけ残したのは、自分の肩こりのマッサージに使おうかと思って残した。棚卸しの作業が思ってた以上に大変で、結構肩こっちゃったんだよね。



 その他、下着類などが入った衣装ケースが3つ程あったが、「中身見ないでよ?」と念押しされた上で、ケースごとそのまま新居に持って行くと言うので、言われた通り触らない様にしておいた。

 俺の知る限り、リカコさんは下着にも拘りがある様で普段からセクシーで高そうな物ばかり身に着けていたので、正直興味をそそらるのだが、また変な物が出て来ても怖いしね。見るなと言われた物は見ない方が身のためだろう。


 そして、漸く寝室の衣装類のリスト作成が終わり、仕事中のリカコさんにメールでリストを送ると、30分もせずに回答が送られてきて、『処分する物は、買い取りに出して来て頂戴』と指示があったので、運び出すの面倒だから、買い取り屋さんに電話して出張買取の依頼して、その日の内に買い取って貰った。


 服はあまり高値にはならなかったけど、靴やバッグは結構いい値段で買い取って貰えて、リカコさんが帰宅してから全額渡すと、その中から5万を「ハイ、報酬ね。ホントに助かったわ」とポンと俺にくれた。



 衣装関係の片付けが終わった翌日、キッチンやトイレに洗面所にお風呂なども片付けてピカピカに掃除もして、リビングなどの窓ガラスやフローリングの床もピカピカに磨き上げ、廊下や玄関もピカピカに掃除して、あとは引っ越し業者に任せても大丈夫な状態にまでしたので、俺の任務は完了した。


 結果的には、5万円の報酬だけでなく、リスト作成による在庫管理能力と、お掃除などの家事スキルをリカコさんに認めて貰うことも出来、結婚生活を開始する前に、主夫としての能力をアピールすることが出来た。


 あと、セックスの回数を重ねたことでリカコさんのウィークポイントを把握しつつあり、その結果リカコさんの欲求不満を存分に解消させることも出来るようにもなって、セックスパートナーとしてアピール出来たことも大きかったと言える。


 やっぱり、結婚相手として選ばれたからには、失望させたり後悔させたりはしたくないからな。

 俺だって会社辞めてまで結婚するわけで、ディルド君に負けてなんていられない訳で。




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