#06 実家に婚約のご挨拶
翌日日曜日の昼過ぎ、約束通り、リカコさんは車で迎えに来た。真っ赤なアルファロメオで。
以前、車を買い替えたことは聞いてたけど、実際に見ると、なんと言うか、リカコさんらしいと言うか、リカコさんのイメージに合い過ぎる。
それで、いざ助手席に乗り込もうとすると、「まだ仕事の電話とかしたいから、フータ運転してよ」とキーを渡して来た。
「左ハンドル乗ったことないんで超怖いんすけど」
「ATだからダイジョーブダイジョーブ」
「いや、そういう問題じゃ」
「ホラ、早く乗って!タイムイズマネーよ!時間勿体ないから行くわよ」
リカコさんはそう言ってさっさと助手席側に乗ってしまったので、渋々運転席に乗り込んだ。
車内はリカコさんの甘い香りが充満してて、否が応でもリカコさんとのセックスを思い出してしまいつつ、初めての左ハンドルにマジでビビっていたので、「コンビニ寄ってコーヒー買ってきますね」と断ってからノロノロと走らせ、近所のコンビニで二人分のコーヒーを購入してから、改めて出発した。
で、結局、超安全運転でノロノロ走り、東名高速道路ではトラックとかにガンガン煽られながらもそれでも安全運転で走り、リカコさんの実家がある沼津には予定の時間を大幅にオーバーして到着。
因みに、リカコさんは最初は仕事モードで電話したりタブレットでメールチェックしたりと本当に仕事をしてたが、浜名湖を通過するころには爆睡してて、実家に着くまで起きることはなかった。まぁ、カーナビのお蔭で道に迷うことも無かったし、仕事が忙しそうで疲れてるのだろうから敢えて起こさなかったんだけどね。
到着してリカコさんを起こすと、寝起きでも直ぐにシャキっとして、長距離運転でヘトヘトの俺が車を降りると尻を叩く様に「ホラ!ネクタイ曲がってるわよ!ダラダラしないの!」と言って、俺のネクタイの位置を直してくれた。
久しぶりの帰省だと言ってけど、なんだかちょっぴりナーバス?
家族とあまり顔を会わせたくないのかな?
リカコさんの実家は普通のサラリーマンのお家だと聞いていたけど、大きな日本家屋で白塗りの塀に囲まれて立派な門があるお家だった。
若干ビビりながらもリカコさんに案内されながら玄関に入ると、お母さんが出迎えてくれて、手土産を渡しつつ挨拶すると、「遠いところ、よくいらっしゃいました」と笑顔で応えてくれた。
座敷に通されると直ぐにお父さんも来て、改めて俺が自己紹介と挨拶をすると、そこからはリカコさんが一方的に話し始めた。
来週俺の実家にも挨拶に行くことや、その後で早めに入籍を済ませること、リカコさんの性は町田のままで俺が婿養子に入ること、新居はこれから探すこと、式は挙げずに身内を集めてのお披露目パーティーをすること等を説明し、何故かドヤ顔を浮かべていた。
しかし、リカコさんの話を聞いてる間、お父さんは難しそうな表情を浮かべてて、これは結婚に反対されるのか?と心配していると、お父さんは結婚に反対してる訳では無くて、何故か俺の心配をしていた。
「フウタロウくんは本当にいいのか?この子、気が強いし我儘だから大変だろ?無理矢理脅されて結婚迫られたんじゃないのかい?婿養子になるとか無理してないかい?」
「そんなことないわよねぇ?リカコだって大人になって丸くなったわよねぇ?」
「パパもママも失礼ね!こう見えても私だって立派な経営者なのよ!我儘ばかり言ってたら会社経営なんて無理よ!ね!フータもそう思うわよね!」
子供時代に我儘放題でご両親の手を焼かせていたことが垣間見える親子の会話に、俺はどう反応するのが正解か・・・
「ええ、大丈夫です。学生時代からリカコさんにはとてもお世話になってまして、しっかりされてて面倒見も良くて凄く頼りになる先輩でした。そんなリカコさんと結婚出来ることに、この上ない喜びを感じずにはいられません。今の俺は、宝くじとロト6がいっぺんに大当たりしたくらいの幸せ者です。 ええ、多分・・・」
「ホラ!こんなに喜んでるじゃない!二人とも変な事言わないでよ、もう!」
「はぁ。 まぁ、何かあっても我慢せずに言ってやればいいからね?困ったことがあったら遠慮なくウチに相談してくれればいいからね?」
「大丈夫よねぇ?リカコだってもう大人なんだから、ねぇ?」
思ってたのと全然違うご両親との初対面だったが、結婚することは認めて貰えたようだ。
兎に角、ご両親は優しそうな人たちで、ほっとした。
その後は3つ歳下(俺からみて2つ歳下)の妹のハナコさんも紹介された。
ハナコさんもとても美人さんなんだけど、リカコさんとは違って物腰が柔らかくてお母さんに似てるのかニコニコと笑顔の似合う、とても優しそうな女性だった。
因みに、リカコさんはお父さん似だ。
ぶっちゃけ、お父さん含めて家族全員美形だった。
それで、今日中には戻らないといけないからと、雑談もそこそこに夕食を食べる為に沼津市内の魚料理のお店に移動した。
食事をしながら妹さんとも色々話してみたけど、妹さんからも「ホントに大丈夫です?我慢しないで言う時は言っちゃっていいですからね?」と心配されてしまった。
家族の信頼、全くないな。
どんだけなんだよ、リカコさん。
で、俺の仕事の話にもなって、退職すること伏せて今の会社のことを話そうとしたら、リカコさんが「フータには会社辞めて貰って、家のことしてもらうから」とあっさり暴露してしまった。
それを聞いたお父さんが、諦め顔で「はぁ~・・・」と深い溜息を吐いていたのが印象的だった。
あ、沼津の魚料理は最高に美味しかった。
俺にとってはそっちのが印象深いな。
美味しい魚料理食べれただけでも、ココまで来た甲斐があったね。
うん。
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