遊園地①

今日は西宮と遊園地に行く。

西宮の家の前に着くとちょうど玄関のドアが空いて、彼女はこちらに駆け寄った。

助手席のドアを開けて、にっこりと笑う。


「おはよう!」

「おはようございます。」

早速遊園地に向かって車を走らせる。


西宮はふーっと深呼吸をする。

「大丈夫ですか?」

西宮は胸に手を当てる。

「・・・緊張しちゃって・・・ジェットコースター。」

「まだ遊園地にも着いてないですよ。」

俺がそう揶揄うと、西宮は俺をじっと見る。


「新太君、最近意地悪だね。」

だって可愛いからつい。

「お兄さんに言い付けますか?」

西宮はほんのり顔を赤く染める。

「揶揄わないでよぉ・・・!」

そう言って西宮は頬を両手で包んだ。


「もう、言い付けちゃうんだからね!」

やっぱり言い付けるのか。可愛い・・・。

まあ、キヨに言ってもニヤニヤするだけだと思うけど。


話をしているとあっという間に遊園地に到着した。

チケットを買って入場する。

平日なので比較的空いているようだ。


「うわー!!広いね!乗り物いっぱいだね!」

西宮はその場でくるっと一回転して辺りを見渡した。

「何から乗りますか?」

「コーヒーカップ乗りたい!」

「コーヒーカップはどこでしたっけ・・・?」

俺がマップを見て確認しようとすると、西宮は俺の腕を掴む。

「こっちだよ!行こ!」

俺は西宮に連れられるがままコーヒーカップに向かった。


西宮はニッコニコでハンドルを回す。

その後も西宮は俺の腕を掴んで、こっち!と遊園地内を移動した。

俺は腕を引かれるがままだ。西宮が楽しそうなのでこのままで良い。


いや、このままが良いのだ。


「そろそろ何か食べる?」

「そうですね。」

「何食べたい?確かピザとかポテトとかチュロスとかあるよ!レストランの方が良いかな?」

「西宮さん、すごく詳しいですね。」


「え?!いやいや、そんなことないよ?!たまたまそんな気がしたっていうか・・・。」

西宮は口籠る。


「たまたまですか・・・?」

遊園地は学生以来って言ってなかったっけ?


「そうだよ!」

西宮は顔を赤らめてなんだか焦っている様子だ。

「じゃあ、そういうことにしておきますね。」

俺がそう言うと西宮はうんうんと大きく頷いて見せた。


二人はレストランのテラス席で昼食を取る。

「美味しいー!」

西宮は美味しそうにカレーを頬張る。


カレーのCMの仕事が来てもおかしくない、というか企業は西宮を今すぐ起用すべきだ。

現に俺はカレーを注文しなかった事を後悔している。


昼食を終え、俺達はレストランを後にして歩き出した。

「新太君、次何乗る?」

「西宮さんは何が良いですか?」


「新太君、お化け平気?」

「え?」

「もしかして、お化け怖い?」

「こ、怖いわけないじゃないですか・・・!」


「じゃあ行こうよ。お化け屋敷。」

西宮はニヤッと笑う。



「中は暗くなっておりますので足元お気を付けください。

途中でリタイアは出来ませんので頑張ってください。」

係員はそう言って俺達を中に促した。

中は結構暗い。西宮の表情をはっきり捉えるのが難しいくらいだ。


「新太君前と後ろどっち歩く?」

「どっちでも・・・大丈夫です。」

「じゃあ私が前ね。」

西宮はそう言ってゆっくりと歩き始めた。


新太は少し身を小さくして後に続く。

「う〜ら〜め〜し〜や〜・・・」

「うわああ!!」

俺はつい声を上げて驚いてしまった。


「新太君、良いリアクションだね。」

西宮はそう言ってクスッと笑った。

全然余裕そうだ。こっちが恥ずかしくなる。


「別に怖かった訳じゃ無いですからね。ただちょっとびっくりしたっていうか・・・。」

「ふ〜ん。そうなんだ。じゃあ、新太君が前歩く?」

「・・・意地悪しないでください・・・。」

「いつものお返し!」

そう言って西宮はケラケラと笑う。


「おいで、新太君。」

西宮はそう言うと新太の手をそっと握った。

「え?ちょ!?」


「これで怖くないよ。」


西宮は俺の手をずっと引いていた。


お化け役の人たちには申し訳ないが、もうお化け屋敷どころではなかった。

西宮の体温が手から伝わってくる。

心臓の音がうるさくて仕方なかった。


「西宮さんは、怖く無いんですか?」

俺の問い掛けに西宮は少し間を置いてからこう答えた。


「人間が一番怖いよ。」


「え?」

「出口見えたよ!」

西宮はそう言って俺の手を引いた。


お化け屋敷を出ても俺達は手を繋いだままだ。

「西宮さん・・・その・・・」

「ん?」

「手を・・・。」


西宮は頬を赤く染めてさっと俺の手を離す。

「ごめんなさい!つい・・・!」

「いえ、その、僕がびびりなばっかりに・・・!申し訳ないと言いますか・・・。」


「いや、こちらこそお化け屋敷行こうなんて言っちゃってごめんね。怖かったよね。」

「ですから、僕は怖かったわけでは・・・!」


途中からはそれどころじゃなかったし。


「じゃあ、もう一回行く?」

「それは・・・遠慮しておきます。」

西宮はクスッと笑う。


「意地悪するとジェットコースター三回ですよ?」

「え?!なんでよお・・・!」

「だって今日はジェットコースターが主役じゃないですか。」

「嫌だ・・・。」


西宮はそう言って潤んだ目で俺を見る。

「意地悪しないから・・・。」

「じゃあ、一回にします。」


西宮はほっと胸を撫で下ろすが、あれ?と言う顔をする。


「でも先に意地悪したの新太君だよね?」

「バレちゃいましたか?」

「あ!やっぱり!」


俺達は笑い合った。

ああ、凄い楽しい。楽しくて仕方がない。


「ジェットコースター、行ってみますか?」

西宮は緊張した様子でこくんと頷いた。


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