〜ペラペラ兄妹〜
天天空空
第1話
〜ペラペラ兄妹〜
何十年も昔、とても仲の良い兄妹がいました。
兄はとても妹想いで、いつも妹の手を引いて学校に通っていました。
ある日いつも通り手を繋いで家に帰る途中、2人は車にはねられて死んでしまいました。
そこは横断歩道のない道路で何度も事故が起こる危ない場所でした。
兄妹が事故に遭ってから、その場所に横断歩道と標識が取り付けられました。
そのおかげで何年も事故は起きませんでした。
何十年か経ったある日、小学生の兄妹が標識を指さして言いました。
「ねぇお兄ちゃん、あの横断歩道の看板の子供、ペラペラしてるよ」
「あ、ホントだ。すごく古そうだからね。剥がれそうだ」
「ペラんって出てきそうだね笑」
「うん、出てきそうだね…でもあれって印刷じゃないのかな?書かれた物がペラペラしてるのって不思議だねぇ」
「なんだかちょっと怖いね、お兄ちゃん」
「怖くなんかないよ。あれはペラペラ兄妹だよ笑」
古い横断標識は、黒く描かれた子供の絵が、体半分程が剥がれて風で揺れていました。
……………………
(お兄さん、あの兄妹、私達に気付いたね)
(そうだな。あの子達にしようか)
(うん) ……………………
それから毎日、兄妹は通学路にあるあの横断標識が気になって仕方ありませんでした。
手を繋いだ真っ黒の兄妹は、日に日に剥がれ落ちそうになってきました。
「お兄ちゃん、あのペラペラ兄妹、風でペラペラいってるよ!」
「今にも剥がれて飛んでいきそうだ。もう交換しないとダメみたいだね。この台風で飛んでいくかもしれない」
台風の翌日、
「あ、ペラペラ兄妹がいなくなってる」
そこには、子供の絵の無いただの黄色い標識が立っていました。
「先生に言った方がいいね。きっとすぐ交換してくれるよ」
「お兄ちゃん、ペラペラ兄妹はどこに行っちゃったんだろう」
「飛ばされて遠くに飛んでいったのかなあ。
でも、あれは絵なんじゃないのかな?絵は消えるけど、飛んでなんかいかないよな…」
…その時…
(こんにちは)
後ろから声がしました。
振り返ると、真っ黒の人のようものが立っていました。
「うわーっ!」
「きゃあー!」
(こんにちは。僕達の事は知っているよね?)
(毎日私達の事見ててくれたもんね)
よく見ると、その黒いものは横断標識に描かれている子供のようでした。
「お兄ちゃん、怖い、怖い、怖い!」
「……誰⁈僕達になんか用なの⁈」
目も鼻も口も無い、その真っ黒な子供が言いました。
(そんなに怖がらなくて大丈夫だよ。
君達兄妹は、僕達に気付いてくれた。それに僕達兄妹とよく似てる。だから君達に決めたんだ)
「決めたってなんだよ!」
(僕達は何十年もこの場所で人々を守ってきた。長い間、妹と2人でずっとここにいたんだ。次は君達兄妹の番だよ。
妹さんの手を離しては駄目だよ。ずーっとずーっと離しては駄目だよ。じゃ)
(頑張ってね)
黄色い標識には、きれいな兄妹の絵が戻っていました。もうペラペラもしていません。
(お兄ちゃん、体が動かないよ…怖いよ)
(大丈夫、お兄ちゃんがいるから大丈夫。お兄ちゃんの手をしっかり握って離しちゃダメだよ。ずっと一緒にいるから大丈夫…)
「お兄さん、動けるって楽しいね」
「そうだな」
「いつかあの子達も誰かに気付いてもらえるといいね」
「そうだな」
おわり
〜ペラペラ兄妹〜 天天空空 @tentenkuutan
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます