#9 伝説の武器、これって詐欺じゃないですよね?



 私パンダヒーローこと斎藤あやめは、思わぬバズりによりなんと企業案件が来てしまいました―。



「き、きききき緊張するう……」



 あやめは待ち合わせ場所でひとり震えていた。


 ま、まさかの企業案件とは……。


 人見知りの私にとって初対面の人と会うのは、歯医者に行くのと同じくらい緊張するものだった。


 緊張し過ぎて昨日の夜は全然眠れなかったし、今朝は家を出るまでに五回もトイレを往復してしまった……。



 エルフさんには「すみません、今日急に体調が悪くなったので企業案件はまた別の機会にお願いします……」



 ―っと、何度もメッセージ送ろうとしたけど結局送れなかった。


 緊張のあまりゲロってしまわないように、胃薬を飲んで来たけど……既に気持ち悪い。



 あやめは手のひらの『労宮ろうきゅう』のツボを何度も押していた。


 このツボは緊張に効くってネットに書いてあったから、家を出てからずっと押してるけど……何時になったら効いてくるんだろ?


 もっと強く押し続けないとダメなのかな―。



 グッグッグッグッグッ―。



 あやめはひたすら手のツボを押し続けた。



「あ、パンダちゃん! もう着いてたんだね!」



 振り返ると、稲妻エルフが手を振りながらこっちへ向かっていた。


 そしてその隣りは、おそらく企業の人であろう女性の姿があった。



「パンダちゃん、紹介するね! 私達に企業案件の連絡を下さった西田さんだよ!」


「どうもはじめまして! 私、西田と申します。どうぞお見知り置きを」



 西田さんは名刺をあやめに差し出した。



 ―こ、これが噂の……!?


 あ、しまった! 私名刺なんか作ってない─。



「あ、あの、すみません。わ、私名刺とかまだ持って無くて……」


「あーそんなの全然大丈夫よ! パンダヒーローさんはとても有名な探索者様ですもの」



 私が……有名探索者……。



 思わずひとりでデレデレするあやめ。



「とりあえず何処かでお茶でもしましょうか?」


「ムーンバックスとかどうですか?」



 エルフと西田さんは二人テキパキと進行していた―。




 ★☆★☆




「お待たせ致しました! 期間限定のパンプキンフラペチーノです!」


「こ、これが噂の……!」



 新作が出る度にネットでトレンド入りする、ムンバのフラペチーノ……そして、陰キャとは縁のない陽キャ達の飲み物!!!


 あやめは、はじめてのフラペチーノのに感動していた。



「んへぇ……甘くて美味しい……」


「フフフ、パンダちゃんってムンバはじめてなんですって!」


「まぁ! 若いのに珍しいわね。でも、嬉しそうで良かったわ」



 そう言えば、ダンジョンの外でエルフさんと会うのは初めてだなぁ。

 外だと耳は尖ってないし、ほんと、普通に可愛い女の子だなぁ……。



「あ、そう言えばパンダちゃんとはまだ素の状態で自己紹介してなかったね!」


「私、稲妻エルフことって言います! 改めてよろしくね!」


「あ、わ、私は斎藤あやめと言います……よ、よろしくお願いします」


「…あやめちゃんか! んーでもやっぱり、パンダちゃんの方がしっくり来るね!」


「そ、そうですかね……?」



 あやめは頬を赤くして嬉しそうに照れた。



「うんうん。二人共、本当に仲が良いのね! やっぱりあなた達に案件を依頼した私の目に狂いはなかった様だわ……」



 すると、西田さんはスマホを取り出し二人の前に画面を見せた。



「―これは?」



 そこには、白い剣と蒼い双剣の武器が並んだ写真だった。



「これは、から造られた武器なのよ?」


「え、あの伝説のモンスターのですか!?」



 思わず声を上げるエルフ。

 あやめも、スマホに映る武器をまじまじと見つめていた。



「単刀直入に言うわね。実はこの武器を……是非、あなた達に使ってもらいたいのよ!」


「え、私達がこの武器を!?」


「えぇそうよ。我が社の自信作のこの武器を、是非あなた達SSSランク探索者の相棒として使ってちょうだい!」



 まさかの案件内容が、武器のプレゼントだったとは……。


 ─はっ! 待てよ、もしかしてこれは……。



「え、エルフさん。こ、これって新手の詐欺とかじゃないですよね?」


「う、うん。大丈夫だと思う……多分?」


「正真正銘ちゃんとした企業案件ですからね!?」




 —————————

 あとがき。

 最後までご高覧頂きまして、ありがとうございます!


【次回】新武器でダンジョン配信再開!


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