#8 配信辞めたい……



 私パンダヒーローこと斎藤あやめは、ようやくダンジョンから帰宅しました―。



「…もう疲れた……配信辞めたい……」



 まるで干からびたカエルの様に、ベッドへ倒れ込むあやめ。




 ―少し前のダンジョン深層。




 深層のボスであるドラゴンを、あっという間に消滅させたパンダヒーロー。


 その姿に、ライブ視聴者のコメントも視聴者数も爆上がりしていた。



「す、すごいよパンダちゃん! ドラゴンをあんなにも簡単に倒しちゃうなんて!」


「…陰キャ・ビー・アンビシャス……陰キャ・ビー・アンビシャス……」


「ん? パンダちゃん? もしもーし! パンダちゃーん!!!」


「―ハッ!? ちょ、調子に乗ってす、すみませんでした!!!」


「…ど、どうしたの? 大丈夫?」


「あ、わ、私……」



 ひぇーん!!!



「ちょ、パンダちゃんー!!!」




 ―と、全速力でその場から逃げ出し帰ってしまったのだ。



 カメラも途中で切れちゃて、ダンジョン配信も中断しちゃったし……。

 エルフさん置いて、そのまま逃げちゃったし……。


 もう、お終いだ……。


 きっと、私の行動にが増殖して今頃ネットや掲示板でボロクソに叩いてるんだ。


 エルフさんも私の態度に幻滅してるに違いない。


 はぁ……短いダンジョン配信だったなぁ……。


 明日からはイモムシの様に、また誰にも気づかれない様にぼっちでダンジョン活動をしよう―。



 ブーブー



 スマホが鳴った。


 死んだ魚の目でスマホの画面を眺めたあやめだったが、なんと通知は稲妻エルフからのダイレクトメールだった。



「い、いなななな妻エルフさんからのメッセージだー!?」



 思わず手が震えまくる。


 ど、どどど、どうしよう!?

 一体、な、なんのメッセージだろ……ハッ! も、もしかすると……。



『おい、パンダ。よくも人気探索者のこの私を置き去りにしてくれたな? ちょっとツラ貸せや』



 ―ズドンッ!



 パンダヒーローは稲妻エルフの落雷に撃たれ、その生涯を閉じたのであった……。



 ―と、とかなったらど、どうしよう!?


 あぁー! ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい!!!

 私みたいな陰キャパンダが、調子に乗っててす、すみませんでした!!!



 ……ゴクリ。


 あやめは恐る恐る通知を開いた。



 稲妻エルフ「あ! パンダちゃん? 急に帰っちゃったからびっくりしちゃったよ〜でも、ダンジョン配信最高に楽しかったね! 私の配信でも、パンダちゃんの事でめちゃくちゃ盛り上がってたよ! また、一緒にパーティー組んでくれると嬉しいな!」



 ―え?


 私が、思ってたのと全然違う……。



 また、一緒にパーティー組んでくれると嬉しいな


 その文字に、何故かあやめの目は暗く曇った。


 で、でも、もう私はダンジョン配信を辞めるつもりだから……。


 そう返事を打とうとした時、また稲妻エルフからDMが届いた。



 稲妻エルフ「そうそう! 私がパンダちゃんの事ツイートしたらんだよ! 多分、パンダちゃんのフォロワーや動画も伸びてるんじゃない!?」



 な、なんだってーーーーー!?


 あやめは急いで、稲妻エルフのツイートを確認した。



 稲妻エルフ@lightning_elf


 今日ダンジョンの深層で、パンダヒーロー@panda_heroことパンダちゃんとパーティー組んでみました!

 なんと、パンダちゃんドラゴンの首を一瞬で切断!


 本人「また、つまらぬ物を斬ってしまった……」


 2.7万件のリツイート 14.7万のいいね



 そこには、パンダヒーローがドラゴンを消滅させた直後の映像も添付されていた。



 め、めちゃくちゃば、バズってる……!?



 ―ハッ、そうだ! 私のアカウントと動画は!?


 パンダヒーローのフォロワーは何と倍の8万人に増え、チャンネル登録者数も5万人。

 更に、ダンジョン配信の動画は50まで伸びていた。



 ハーレルヤ ハーレルヤ ハレルヤ ハレルヤ ハレールヤ


 ハーレルヤ ハーレルヤ ハレルヤ ハレルヤ ハレーールヤ



 脳内で曲が流れる。


 あやめの周りには、天からラッパを奏でる天使達の姿が見えていた。



 陰キャな私がバズってる……も、もしかして、今の私めちゃくちゃ輝いてる……?



 あやめは、まるで天にも昇ったかの様な表情で、無意識のまま稲妻エルフに返信した。



 パンダヒーロー「お疲れ様です。私もまたエルフちゃんとパーティー組みたいです! ぐへへ」


 稲妻エルフ「本当に!? じゃあ、明後日早速ダンジョン配信しようよ!」


「あ、後この前の配信で企業さんから案件が来てるんだけど、明日私とパンダちゃんに是非企業の人が会いたいんだって! OKしても大丈夫だよね?」




 ─ん? 企業から案件って……何ソレ?



 —————————

 あとがき。

 最後までご高覧頂きまして、ありがとうございます!


【次回】驚くべき案件内容が!?


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