#7 また、つまらぬ物を斬ってしまった
私パンダヒーローこと斎藤あやめと、人気探索者の稲妻エルフは深層へと入ったのだが、なんといきなり深層のボスであるドラゴンと出会ってしまいました―。
「―あっ」
「―あっ」
「ギャオオオオオンッ!!!」
ドラゴンの凄まじい咆哮がダンジョンに響き渡る。
あまりの声のデカさに、二人は思わず耳を塞いだ。
『うっさ』
『うっさ』
『うっさ』
『うっさ』
『うっさ』
『耳いてぇ!!!』
『鼓膜破けたわ!』
『音量下げろや!』
『うるさ過ぎだろこの声』
『いきなりドラゴンとかマジか!』
「ひぇー、いきなりドラゴンは聞いてないよ〜!」
するとドラゴンは、鋭い爪で二人目掛けて腕を振り下ろした。
「―!? パンダちゃん危ないっ!!!」
エルフは間一髪の所で、あやめと共にドラゴンの反対方向へと飛び退いた。
「…このぉ……大人しくしなさい!」
エルフが片手を上げると、ドラゴンの頭上から雷が落ちた。
しかし、落雷に直撃したドラゴンだったが、首を振ると再び咆哮を上げ平気な様子を見せた。
「むむ。やっぱり
すると今度は、ドラゴンの尾が勢いよくエルフへと振られた。
「わ、危なっ!!!」
紙一重で避けたエルフだったが、ドラゴンの尾はダンジョンの壁をいとも簡単に吹き飛ばし破壊した。
あんなのまともに受けたらさすがにヤバいよね……そういえば、パンダちゃんは!?
エルフは視線をあやめの方へ向けると、なんとあやめはドラゴンのすぐ真下で呆然と直立していた。
…え、まさか
「ちょ、ぱ、パンダちゃん!!!」
この時あやめは、ひとり脳内の宇宙をさ迷っていた―。
…私、何やってるんだろう。
ふとしたコメントから、ダンジョン配信をする事になって。
もし動画がバズったら陰キャな私でも輝けるかな? とか思っちゃったりして。
それで、いざ配信したら思った以上に反応良くて。
それで、つい調子に乗って。
そんな時、人気探索者の稲妻エルフちゃんと出会って。
本当の人気探索者との実力を思い知らされて。
急にパーティー組む事になって。
しかも、深層に入った瞬間にドラゴンに襲われて……。
―あぁ、なんだかフワフワして来たなぁ。
あ、お月様のウサギさん達が手を振ってる。
火星人のタコさん達もだ。
あぁ……早くお家に帰りたいなぁ―。
『本当にそれでいいのかい?』
「―あ、あなたは!?」
全身光り輝くその人影は、昔テレビで見た憧れの探索者だった。
『君はSSSランク探索者のパンダヒーローだろ? もうこんな所で諦めていいのかい?』
「で、でも私みたいな陰キャが調子に乗って配信したところで……」
『なら、何故君は探索者になったんだい?』
「そ、それは私みたいな陰キャでも……輝けるかなって……」
『そうだ! そして君は探索者
「パンダヒーローの名前……」
うへへ、私もいつか世界中のダンジョンを駆け抜けるロマン溢れる
―パンダ……ダンジョン……ヒーローに……なる……。
『陰キャ・ビー・アンビシャス! 君はまだまだこれから輝くんだ! さぁ、皆が待ってるぞパンダヒーロー!!!』
─あやめの目の前には、ドラゴンが今まさに襲わんとする瞬間だった。
「に、逃げて! パンダちゃん!!!」
ドラゴンの咆哮と共に、鋭い爪があやめへと襲いかかった……。
―ズバッ
次の瞬間、ドラゴンの
「……え?」
『キター!!!』
『きちゃー!!!』
『うおおおおぉ!!!』
『出た! パンダマジモード!!!』
『いっけーーーーーっ!』
『やったれパンダヒーロー!』
『おらおらおらおらおらおらおら』
『グロ注意! グロ注意!』
『パンダヒーローのお通りじゃあ!!!』
『パンダヒーロー最強!!! パンダヒーロー最強!!!』
腕を斬り飛ばされたドラゴンは悲鳴を上げた。
「…陰キャ・ビー・アンビシャス……」
―ズバッ!
剣を一振したあやめは、ドラゴンの首を一撃で斬り落とした。
ドラゴンの首は、ぼとりと地面に落下した瞬間、その体と共に消滅し消えてしまった―。
「また、つまらぬ物を斬ってしまった……」
─シャキン
え、ちょ、ちょっとパンダちゃん……強過ぎない!?
—————————
あとがき。
最後までご高覧頂きまして、ありがとうございます!
【次回】あやめ早くもダンジョン配信引退か!?
少しでも「主人公が可愛い!」「応援したい!」「面白い!」と思った方は、フォロー、★評価、レビューをして頂けますと作者の励みになりますので何卒。
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