第2話

神山アキナは僕の母に会ったことがない。


僕はもう4年前の10月はじめから、「お母さんのつくるカレーは美味しいんだから!食べに来て!」と5回は言った。


ただし、5回目には、神山は「しつこいな! そんなに親しくもないのに!」と返ってきた。


腑に落ちない僕は、神山に「カレーの味に不満があるのか」、とおまじないをかけた。


それは、もし神山が照れているのだったとしたら神山がほんの少し浮かぶ、というものだった。


「さあ、どうなるか。」僕は、念じた。


すると、ちょっぴり隣を歩いている神山の背が高くなった。


背伸びをしたのか。ただ歩きながらは、流石に無理か。


「カレーが嫌いなのではなくてよかった。でも何で断るのか」


それは、どこにでもある浮き世ばなし。


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