第9話 「こらーっ、なにしてるー!!」

「はっ……!?」

空中じゃ、ましてやあの重さじゃ身動きがとれない。それを逆手に俺はギリギリまで粘った。最後のフルパワーでテルスの束縛から抜け出すと、バフの切れかかった安定と信頼の機動力でその背を踏み台に大きく跳ねる。眼下に見えたデカブツを捉えるや否や、照準を合わせる必要もなくタイヨウの刻印が淡く発光した──直後、火薬のような爆音が爆ぜる。

「……まー、ギリギリの勝ちだろ」

レイナの端末からアラームが鳴るのを確認して、俺はひとまず溜息を吐いた。地面に立った煙幕がやがて晴れると、そこには起動不能になったテルスがうつ伏せで倒れている。

「なんっ……えー!? ギリ勝ったと思ったんだけど……!」

「お前、焦ってんのがバレバレなんだよ。最後の方とか動きもワンパターンでさ」

「あたしが読まれてたから負けたってこと?いちばんダサいじゃん……」

「べつにそういうわけでもないだろ。実際、強かったし」

悔しそうにテルスを拾うレイナを横目に、俺もタイヨウを手元に引き寄せる。実戦運用はこれが初めてだが、その割にはよくやってくれたんじゃないか。後ろでずっと黙って見ていたミノルとハルに視線をやると、満足そうな顔で笑っている。俺も楽しかったわ、これ。

「でもまぁ、テルスがスペースシリーズ相手にどこまで通用するのか分かった」

「こっちこそ。実戦運用すんの初めてだったんだよ、こいつ」

「たぶん、どっかから噂を聞きつけてアンタのところに来るだろうから、気をつけたら」

「お前みたいに意欲のあるやつならいいんだけどな」

嫌だよ、また裏ルールで賭け合いとかやるの。遊びまでにしてくれ、頼むから。

そう安堵しつつ、疲れたから一緒に校内にでも戻るかと言おうとしたところで──

「おぉい、誰かいるのか!? 爆発音が聞こえたって生徒から通報あったぞ!」

「やっべ、やりすぎた……! 逃げんぞレイナっ! あとは優等生でやり過ごせ!」

「ちょっ、委員長特権でなんでもごまかせると思わないでよ……!?」

「いいよハルちゃん、僕がちゃんと説明しとくから」

「あー、それなら自業自得ってことでいっかぁ」

……不穏なはしごの外し方を聞いた気がするけど、とにかく今は逃げとくか。











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ロボットS〜夕暮れの太陽〜 如月つきこ @tukiusaginogigi

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