第5話 2度目の野宿はもう慣れっこです

ミノルのおかげでまたもや無事に過ごせた二日目の山小屋野宿。どこかから柔らかく射し込む日射しに目を覚ましつつ、お決まりの欠伸をする。真夏に半日も遊んでいると疲れるものだ。昨夜は珍しく、ハルもここに来て一緒に夕飯を食べていったし。雷都は駅前で帰った。

隣の薄っぺらい布団でまだ寝ているミノルを起こさないように、俺は枕元のスマートフォン端末を操作する。すると、壁際の作業デスクに置いていたタイヨウが動き始めた。

「……よし」

実は昨夜、いよいよタイヨウとの接続を行ったのだ。このまま置物にしておくのも、まぁ、もったいないしな。使えば愛着も湧くってもんなんだろう。たぶんな。知らねぇけど。

今日は特に予定はない。雷都が帰ってきたとはいえ、あいつも積極的に絡むタイプじゃないからな……。近くにいるかいないかの違いで、昔に戻ったと考えるべきだろう。

「学校の一般開放ルームにでも行くか……?」

タイヨウを手元に誘導しながら、そう思いつく。

一般開放ルーム、つまりは図書室を兼ねた休憩スペースだ。

クーラーも効いているし、悪くはないんじゃないか?

「暇を潰すにも頭は使うぜ……」

ちょっとした子供の悩みだ。贅沢だなぁ。



「いやぁ、涼しいねぇ……。名案メテオだ」

「だろ? ショッピングモールよりも断然に近いしな」

手早く朝ごはんを済ませて、俺たちは癖のようにSBSを持ちながら、九時から開放されているそこに向かった。中は円形のホールみたいになっていて、中心の休憩スペースを囲むように本棚が並んでいる。だいたいは子供か老人がやってきて遊んでいるみたいだ。

一人がけのソファーに向かい合って座りながら、ひとまず息をつく。

……トートバッグを置くスペースが微妙にない。少し邪魔だな。ここにねじ込むか。

「とはいえ……することないね」

「ないな」

「メテオは本とか読まないもんね」

「まったく読まない」

「あっちにデスクトップとかなかった?」

ミノルがそう言って指をさす。

言われてみれば、作業用にPCも置いてあった気がするな。

「僕は適当に本とか読んでるから」

お互いに立ち上がって別々のほうへ向かう。プランターボックスなんかで仕切りがされている通路は、コワーキングスペースとかカフェみたいだ。リラックス効果ありそう。

「……あれ、メテオ」

「おっ、ハルじゃん。引きこもりのくせに珍しい」

「あたしだって用事があれば出るよ」

昨日とは色違いの同じ格好。何冊か雑誌を抱えていて──なるほど、借りに来たのか?

「なんの本だ、それ」

「SBSのカスタムパーツのカタログ本。研究ですよ、研究」

「まぁ、それくらいしか外に出る動機ってないもんな」

「ごもっとも。反論できないんで反論しませぇん」

ヘラヘラと笑いながら、そのカタログとやらのページをめくってみせる。……図書室にもそういう雑誌とか置いてあるんだな。そもそも図書室に行かないから知らなかった。

「メテオはなんでここに?」

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